第80話 叔父さんと最適な武器選び
スキルのない人間と違って、覚えるのも慣れるのも、やっぱり早いみたい。試し撃ちが出来たんだけど、ミーニャは別に店員さんに使い方を教わらなくとも、的に当ててたよ。
真剣な表情をしているミーニャは、とってもカッコよくて可愛らしかった。
「セオドアさん、よろしければ、お2人に弓を選んでいただけませんか?」
「俺がか?」
店員さんの言葉に叔父さんが驚いている。
もともと僕の弓は見てくれる予定だったけど、ミーニャの弓は予定外だからね。
「Sランク冒険者のセオドアさまなら、よい弓を選んでくださるでしょう。」
悩んでいる風だったミーニャは、叔父さんがSランクと聞いて目を丸くしている。
叔父さんは、弓は専門外だがな、と言いながらも、僕とミーニャに、それぞれ弓を選んでくれた。ミーニャは、ありがとうございます!と嬉しそうにお礼を言った。
自分の弓を手に入れて、ニコニコしているミーニャ……、かあいい……。
「これは俺からプレゼントさせてくれ。」
そう言って、叔父さんが、僕とミーニャにそれぞれ革で出来た弓と矢のホルダーをくれた。弓は肩からかけて、背中に弓を背負えるようになっているやつだ。
腰のあたりの留め具を外すと、サッと背中から取り出すことが可能で、持ち運ぶにも、とっさに戦いたい時にも便利だね。
弓は結構重たいから、背中にかつげるのはありがたいな。矢のホルダーは、腰に巻いた革ベルトからぶら下げて使うものらしい。
「そんな!わたくしどもが、セオドアさまに何かをいただくわけには……。」
「なに、大したものじゃない。」
恐縮するノイジーさんに、叔父さんは気さくにそう言った。ノイジーさんからすると、僕がそうなように、叔父さんはずっとキャベンディッシュ侯爵令息なんだろうなあ。
「貰ってあげてよ。その……。僕もミーニャとお揃いの物を持てるのは、嬉しいしさ。」
そう言って、照れて頬をかくと、ノイジーさんは、ああ!という顔をした。
マーサから何かを聞いてるのかな?
ちょっと恥ずかしいけど。
ミーニャはノイジーさんが遠慮を引っ込めたので、ありがとうございますと微笑んだ。
2人はそのまま帰ると言うので、僕はそこで2人と別れて──いや、別れる直前に、ミーニャが僕の袖をツン、と引っ張ってきた。
「なに?」
僕が振り返ると、
「アレックス……、ちょっぴりたくましくなったね。カッコいいよ。」
と、ミーニャが恥ずかしそうに微笑んだ!
僕は思わず真っ赤になってしまって、何も返事を返せないでいた。
ほら、何してるんだ、行くぞ、と叔父さんに急かされて、あ、う、うん、待って!──ミーニャ、またね!と手を振って別れた。
ミーニャもニッコリと笑顔で小さく手を振り返してくれて、ノイジーさんが隣でペコリとお辞儀をして、2人は帰って行った。
「さあ、この町の冒険者ギルドへ行くぞ。
この間見せて貰ったものを買い取って貰うんだ。ちゃんと持って来たか?」
「う、うん、だいじょうぶだよ。叔父さんに言われたやつだけ持ってきた。」
僕は肩から斜めがけしているマジックバッグの紐を握りしめながら言った。
「お前の冒険者ランクを引き上げて、ニナナイのダンジョンに潜り、お前のスキルと弓の訓練をする。気を引き締めていけよ。」
叔父さんはそう言って、冒険者の顔付きになった。僕は思わず紐を握りしめたまま、ゴクリとつばを飲み込んだのだった。
アルムナイの町の近くの森には、常設のダンジョンがあるんだ。そこはレベル制限があって、入れるのはFランクから。
僕のスキルを練習するのに、うってつけの場所だと叔父さんが教えてくれた。僕のスキルは出すのに時間がかかるから、同時に弓で攻撃するやり方を覚えた方がよいんだって。
さっそくアルムナイの町の冒険者ギルドに立ち寄って、クエスト受注と同時に完了して貰う。受けるクエストと買い取りする品は、叔父さんがリストを見て決めてくれた。
一角ウサギの角42。これは納品クエストが5つあった。角の買い取りが、ひとつにつき、小金貨1枚、それに加えて納品クエストの報奨金が10体につき銀貨5枚。全部で中金貨4枚と小金貨4枚を受け取った。
ゴブリンの耳93。これは討伐証明部位になるもので、討伐クエストが1体につき銀貨1枚。ただし素材買い取りはないから、合計で小金貨9枚と銀貨3枚だ。
スライムの核6。これは討伐証明部位になるもの。だけど10体からだから、今回はクエストは受けなかった。スライムのしずく121。これは買い取り。
スライムのしずくの買い取りが、ひとつにつきたったの銅貨1枚。これはあるだけましって感じみたい。ギルドの場所によっては、買い取りすらないんだって。
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