第87話 入り口での揉め事

「入場許可証をお願いします。」

「2人だ。」

 叔父さんが入場許可証を提示する。

「はい、問題ありません。どうぞ。」


 そう思ったけど、あくまでも見張りで、何かあったら信号弾で知らせる為に立ってるらしい。槍はあくまでも自衛の為なんだって。


 まあ、素手で武器を持っている冒険者に対峙するのは、僕も怖くて嫌だな。立ってるだけの仕事だって言われたとしてもさ。


 入り口で入場許可証を見せて、どうぞ、と言われて、叔父さんとニナナイダンジョンの中へと入ろうとした時だった。


 ニナナイダンジョンの中は、ジメッとしていて少しカビ臭くて、入り口が狭くてカビ臭いね、なんて言いながら、少し奥へ進んだ僕らの後ろが何やら急に騒がしくなってきた。


「許可証!?だからほら、見せてんだろう、冒険者許可証だ!」

「間違いなくDランクだろうが!」


「……もめてるみたいだね?」

「そうだな。」

 叔父さんはそう言って、争いを放置してそのまま奥へと進もうとする。


 こういうのは慣れっこなんだろうなあ。

 前に僕から売り上げを盗もうとした3人組みたいに、他人から奪おうとか、無理を言う人たちが多いってことなんだろうね。


 入場料以上にお金を稼げるのに、それをケチる為に、こうしてゴネているんだろうな。

 こんな人たちがたくさんいるってことだ。


「ほら、突っ立ってないで、そこどけよ!」

「アルムナイのギルドに応援要請だ!」

「救援信号を!」

 入口の男の人たちがにわかに慌てだす。


「お前もどけっての!」

「わっ、ちょっ!」

 狭いダンジョンの入り口を、無理やりに僕を押しのけて奥へと入ろうとする2人組み。


「いった〜、あたた……。」

 少しすべりやすい足元なのに、肩を掴まれて無理やりに後ろに引っ張られた僕は、バランスを崩して、岩の地面にお尻をうった。


 中が薄暗くて足元が見えづらいんだよね。

「だいじょうぶか、アレックス。」

「う、うん、ありがとう。」

 叔父さんが引っ張り上げてくれる。


「ぼーっとしてるからだよ。」

「ハハ、違いねえ。」

 明らかに新人な僕を見下して、謝りもせずにニヤニヤと笑いながら行ってしまった。


 乱暴な奴らだなあ!

 僕は腹をたてたのだけど、叔父さんは、気にするな、行こう、と言って進んで行く。


「う、うん……。」

 Sランクともなると、こんなことくらいで目くじらを立てないのかもね。きっとよくあることなんだろうな、こういうの。


「……アレックス、覚えておくんだ。冒険者をやる限り、いや、冒険者じゃなくとも、生きていく限りこうしたやからには必ず遭遇することになる。その時の行動いかんで、お前の生死を分けることになるってことをな。」


 叔父さんは前を向いたまま、真面目な顔付きで僕にそう言った。

 僕は黙って叔父さんの言葉を聞いていた。


「無用な争いはさけたほうがいい。他人の争いにも首を突っ込むべきじゃない。だが必要だと思った時には、逃げずに戦え。

 だが今はその時じゃない。わかるな?」


「うん。乱暴な人たちだけど、この程度で誰かと争ったりなんてしないよ。」

「そっちはあまり心配していない。」

 と叔父さんは笑った。


「お前は優しいし、貴族として長年生きてきているからこそ、そこに言葉で対抗するすべを知っている。だがそれは自分から積極的に戦おうとしないということでもある。」


「そう……だね、喧嘩は嫌だもの。」

「今まではキャベンディッシュ侯爵家という後ろ盾があったからな。滅多なことじゃあお前に喧嘩を売るやつも少なかっただろう。」


「そうだね、嫌味を言われることはあったけど、せいぜいそのくらいかな。」

「だがこの先平民として生きるからには、奪われる立場になるということを理解しろ。」


「──奪われる立場?」

「平民は力がない。誰も守ってくれない。自分自身に力がなければ、一方的に搾取されることになる。それが平民だ。」


 叔父さんの言っている意味がイマイチ僕には分からなかった。

 僕が見てきた平民は、みんな普通に暮らしているし、税金だって安いのに。


 そのまま奥へと進むと、少し開けたところに出て、ゴブリンやスライムたちを、他の人たちが既に狩り始めているところだった。


 僕と同い年くらいの人たちが殆どで、入り口付近でレベルあげをしているんだろうな。

 そこに2人組みが割って入りだしたんだ。

 1人は火魔法使いで、1人は長剣使いだ。


「ギギィッ!」

「ちょっと!それは私たちの獲物よ!?」

「うるせー!遅いのが悪いんだよ!」

「嫌ならよそでやんな!」


 男たちは次々とゴブリンを倒して行く。

「乱暴だなあ……。

 いいの?ああいうのって。」

 僕は眉を下げて叔父さんに尋ねた。


────────────────────


ここからしばらくスキルのレベル上げ&バトルです。


大きな展開がその後待っていますが、皆さまは今後の展開にどちらを期待されますか?


1.商人展開が多め

2.商人とバトル半々

3.バトル展開が多め


番号で教えていただければ幸いです。

基本的には2のつもりでいる作品ですが、アンケートの結果次第で割合を変更するかも知れません。

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