第50話 お手伝いさんゲット
海のあるところまで、子どもたちだけで行っていたとは考えにくいし、漁師さんが寄付してくれたとか?ううん……、でも隣の国からわざわざこんなところまで?
それもちょっと考えにくいなあ。あっ!!そうか!たまに海の魚が間違えて川を遡ってきちゃうことがあると聞いたことがあるよ。
この子たちはそれを捕まえてたのかな?
迷子になって戻れなくて、そのまま川にいたんだろうけど、本来海の魚だから、上流に行く頃にはグッタリしちゃってて、子どもたちでも捕れたってことなのかもね。
だから新鮮ではあるけど、どうりであんなにグッタリした魚だったんだな。でも、だとしたらそんなには数が捕れないよね?
「あのさ……、君たちって、普段どんな魚をいくらで、何匹くらい売ってるの?」
僕は2人にたずねる。
「ロアーズ魚を1匹で銀貨2枚、アローア魚を1匹銀貨1枚と銅貨2枚です。
それを週1回くらい売りに来ています。
たくさん捕れた時は2回です。」
「いつも、どっちも、たくさん取れても10匹ずつくらいしか捕れないんだけど、それでも僕らには大切な収入源なんだ!」
女の子とルークくんが、それぞれ普段の稼ぎを教えてくれる。
ふむ、なるほどね。
「それなら、全部で銀貨32枚だよね?
じゃあさ、僕がそのぶんのお金を君たちに払うから、僕の店を手伝ってくれない?」
「「えっ?」」
ルークくんと女の子が、僕の顔を驚いたように見上げている。
「うちのお店、見ての通り流行っててさ。
おまけにこれだけの数の魚を売っているから、僕もちょうど、魚屋をお手伝いしてくれる人が欲しかったんだ。」
「え、えと……。」
予想外だったのか、ルークくんは困ったように少し年上の女の子を見つめている。
「君たちの稼ぎは変わらない。だけど取ったお魚は、売らなくなったぶん、君たちの食卓に並ぶことになるよね?僕のお店を手伝ったほうが、オトクだと思わない?どうかな?」
僕は人差し指を立ててニッコリと笑った。
「出来れば毎日来て欲しいから、よければお金の他にうちのお魚もあげるよ。」
「ほ、ほんとか!?
ミア!ご飯が豪華になるぞ!」
「え、ででも、お魚高いんじゃ……。」
ミアと呼ばれた女の子は遠慮がちだ。
「僕はたくさん仕入れているからだいじょうぶだよ。君たちよりも安く売ってるくらいだしね。ぜんぜん大したことじゃないよ。」
なにせ、元手タダだしね。
毎日のお手伝いの代金を、もっとお金で渡してもいいかどうかは、シスターの考えもあるだろうから、聞いてみてからじゃないとちょっとね。近々会いに行ってみようっと。
なにせ1日の売上が、普段のラナおばさんの店の1週間ぶんと同じなんだもん。子どもがそんな大金持っててよく無事だったよね。
後でどうやって帰ってるのか、聞いたほうがいいよね、これ。僕の魚まで追加になったことで、狙われちゃったら大変だもの。
「ちなみに子どもたちは何人いるの?」
「子どもはぜんぶで23人です。
あと、シスターが2人います。」
「じゃあ、25人分だね、それをお手伝いに来た日は毎日あげるよ。それとは別に、週に1回、小金貨3枚と銀貨2枚。それでよければ、今日からでも手伝って貰えないかな?」
「子どもが稼ぐお金としては、高すぎるくらいじゃない?あんたたち、ここで引き受けなかったら損するわよ?」
ヒルデが、掴んだままだった、ルークくんの手首を掴む手を緩めて、ルークくんを開放してそう言う。
「ミア……。」
ルークくんがミアちゃんを見つめている。
ルークくんに決定権はないのかな?
ミアちゃんのほうがお姉さんだしな。
「はい、せひ、お願いします。」
ミアちゃんがそう言って頭を下げた。
それを見たルークくんも、慌てて真似するように、ピョコッと頭を下げた。
僕はお金を数える道具の使い方を2人に教えて、さっそく2人にも手伝って貰うことにした。うまいことおさまったことに安心したのか、パチパチと拍手をしながら、お客さまが2人に、頑張れよーと声をかけてくれた。
ルークくんとミアちゃんは、それにちょっと照れていた。ルークくんが、僕の服の裾を引っ張って、ちょっとソッポを向いている。
「どうしたの?」
「あの……、その、ごめんなさい……。」
恥ずかしいけど、頑張って謝ってくれたルークくん。僕は思わずルークくんの頭を撫でた。え?なに!?とルーク君が慌てている。
泥団子を投げつけられたにも関わらず、ニコニコしている僕のことが、ルークくんは不思議でたまらないらしく、撫でられた頭をおさえて、ハテナを顔に浮かべてる。
ルークくん、かわいいなあ。弟のリアムより小さいから余計にだよね。リアムは今頃何してるだろうか。会いたいなあ……。
ちょっぴり感傷的になりつつも、ミアちゃんとルークくんに、お店を手伝って貰う。
今日からお手伝いさんが2人もいるから、少しは楽になるね。
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ついにこの作品のブックマークが3000、評価も1000を超えました。
今までの作品で最大の数字です。
名実ともにこちらが代表作となりました。
今後ともよろしくお願いいたします。
商人をするだけでなく、段々とこのスキルの特殊な力により、勇者や聖女が誰なのかについても明らかになっていきます。
楽しみにしていただければ幸いです。
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