商人としての第一歩

第44話 税金の納め方

「ねえ、叔父さん、商人の人たちって、売り上げをどう管理してるの?」

「売り上げの管理?」


「うん、税金納める時とか、どうしてるのかなって。あと、在庫管理だとか?

 なにかにまとめておかないと、わかんなくなっちゃうなって。」


「税金は、冒険者は素材を売る時や、クエスト完了報酬を受け取る時に、冒険者ギルドが代行して集めておさめてくれるんだ。」


「他の人たちはどうしてるの?」

「農民は農作物の収穫時期が決まっているから、現物で納めているな。」

「叔父さんも納めてるの?」


「俺は自分の食べる分しか作ってないから、農作物は納めていない。仕事が何かと聞かれたら今は狩人だな。狩ったものを売らなきゃ別に固定の金額だけ納めたら終わりだ。」


「ふうん……。商人は?」

「それは俺はわからない。

 商人ギルドに聞いてみちゃどうだ。」


「そっか、そうだね、わかった。」

 売り上げの管理方法や、税金を納める方法を教えて貰おう。その時に、在庫を管理する方法も、わかるかも知れないよね。


 それから薪割りを手伝ったあとで、叔父さんに町まで送って貰った。薪割りは大変だから、今日は草むしりはないらしい。


 実際だいぶ手と腰と背中が痛いよ。

 叔父さんは慣れたらそうでもないって言うけど、慣れる気がしないや……。


 早く稼いで、お風呂の魔道具を買ったほうがいいね。

 僕は商人ギルドに立ち寄ることにした。


 まだこの間登録したばかりだから、受付嬢のお姉さんも、僕のことを覚えていてくれたみたいで、ニッコリしてくれた。


 初めて登録に来た時は、ツンとすました感じだったから、だいぶ印象が違うよね。

 僕は受付嬢のお姉さんに、税金の納め方と在庫管理の方法について聞いてみた。


「露天商の皆さんって、どうやって税金をおさめてるんですか?」

 僕がそう聞くと、受付嬢のお姉さんはニッコリと微笑んだ。


「露天商は基本、高いものを扱わない店ばかりで、生活に根付いた物を売っていますから、そこに税金はかからないんですよ。」

 なんと。


「生活に必要のない高いものを売り買いする時にだけ、売るほうにも買ったほうにも、税金をおさめて貰うんです。」


 奢侈税が高いってことか。

 エロイーズさんに宝石を買う時に、8割が税金だって、父さまが言ってたっけなあ。


「ただし地方税として、領主ごとに国税とは別に税金がかかります。

 その金額は領主ごとに異なります。なのでこの地域では取らないというだけですが。」


 なるほどね。僕らの住む場所だと、あまりお金のない人たちからは、たくさん税金を取らない仕組みってことだね。


 ちなみに、基本自分たちが育てたり狩ったものを、露天で売るぶんには税金がかからないけど、冒険者ギルドや商人ギルドで売るには、金額に応じて税金がかかるんだって。


 冒険者ギルドと商人ギルドが代わりに税金を徴収しているらしい。だからこの間売った一角ウサギの角なんかは、国税として税金が引かれた金額を手渡されたってことだね。


 ちなみに細工職人なんかの、鉱物を仕入れるのにお金を使った場合は、やっぱりそこに税金を取られているけど、売る場合は小金貨1枚までなら地方税はかからないのだそう。


 材料を仕入れる時は税金のかかる店舗から買って、売る時は安いものしか取り扱わない露天商で売るから、という違いだね。


 細工品なんかは生活必需品じゃないから、少額販売品でも国税だけはかかるってことみたい。高いものは仕入れ先と販売先双方に、必ず国税と地方税がかかるそうだ。


「店舗を借りる場合にお知らせしようと思ったのですが、店舗を借りる場合は別です。

 店舗とは、基本高い物を売り買いする場合に、借りる前提の場所ですので。」


 僕が昔行ってた店は確かに全部そうだな。

「売り上げと在庫の管理をしていただき、その金額に応じて一定額の税金をおさめていただきます。提出先は商人ギルドです。」


 商品を店舗の依頼で作る場合は、依頼されておさめたものの代金を支払われた場合に、依頼主の品物につけた売価によっては、売った人にだけ地方税がかかるそう。


 仮に細工品を売る場合のパターンとして、

 Aの商人(自主制作・自主仕入れ・露天)

 Bの商人(自主制作・他者仕入れ・露天)

 Cの商人(他者制作・店舗)

 Dの職人(制作納品のみ)

 がいるとした場合に、


 Aの商人(自主制作・自主仕入れ・露天)

 ・仕入れ……自分で取りに行く→非課税

 ・売る……露天で売る→国税


 Bの商人(自主制作・他者仕入れ・露天)

 ・仕入れ……買付→購入時に国税と地方税

 ・売る……露天で売る→国税


 Cの商人(他者制作・店舗)

 ・仕入れ……買付→購入時に国税と地方税

 ・売る……店舗で売る→国税と地方税


 Dの職人(制作納品のみ)

 ・仕入れ……買付→購入時に国税と地方税

 ・納品(少額販売品)……国税

 ・納品(高額販売品)……国税と地方税


 こんな感じかな。加工品の素材となる鉱物は、まとめ売りが基本でお高くなるから、どうしても地方税がかかってしまうみたいだ。


 僕は自分で魚を取りに行っているのと同じだし、値段も安いから、今の時点では地方税も国税も納めなくっていいってことだね。

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