第18話 神の塩の値段
なので、安心して黙って待つことにする。
ラカーン商人ギルド長は塩の査定をしているのか、少しの間沈黙が続いたけど、やがて静かにポツリと言った。
「──こ、これは……、まさか……、あの伝説の……、神の塩なのですか……?」
ラカーン商人ギルド長が驚いて目を見開いている。──神の塩?なにそれ。
「混じり物のない、純粋な塩だ。
その美しさからもわかるだろう。
紛れもなく、神の塩さ。」
「かねてより噂には聞いておりましたが、目にするのは今回がはじめてです。
……ですが間違いなく、純度と栄養価の高い塩であることが判明しました。」
塩って本来そういうものじゃないの?
キャベンディッシュ家で使われてる塩は、いつもこれなんだけど……。
まあ、それよりもより白いかな?僕がキャベンディッシュ家で厨房に忍び込んだ時に見た塩は、もう少しくすんでた気がするかも。
「──このレベルまで塩を精製出来る工房はそうはない。それをこの地区で取り扱えるというのは、商人ギルドの財産にもなる筈だ。
ぜひともこれを取り扱えるアレックスの商人ランクを引き上げて欲しい。」
「今回持ち込まれた塩の状態を確認致しました。──今後、同じレベルの塩を、取り引き可能ということで、よろしいでしょうか?」
「ああ。もちろんだ。」
「こんな最上級品を仕入れられるとは、やはりキャベンディッシュ家の……?」
「仕入れ先のルートは、商人の財産だ。
おいそれと口に出来るものではないのは、あんたもわかっている筈だ。」
叔父さんにそう言われて、ラカーン商人ギルド長は恐縮しながら、
「そうでございますね。わたくしどもが商人の心構えを問われるようではいけません。」
と、苦笑した。
扉がノックされ、先程商人ギルドの奥に塩を持って行った従業員さんが、トレイを持って入って来て、全員にお茶を配ってくれる。
──あ、美味しいや。
「……それに、Sランク冒険者である、セオドア・ラウマンさまのご紹介です。
それだけでも信用に値するでしょう。」
──叔父さんって、Sランクだったの!?
我が家では、父さまがエロイーズさんの前で叔父さんの話をあんまりしないから、叔父さんが元冒険者ってことしか知らなかった。
……そうか。今考えると納得がいくよ。
母さまが遠くまで外出する時は、日頃は甲冑を身にまとった、馬に乗った護衛の兵士が4人はついてくるのに、レグリオ王国への避暑旅行の時には、叔父さんひとりだった。
叔父さんがSランク冒険者だったからだ。
その時はまだ違ったかも知れないけど、叔父さんが強いから、ひとりで良かったんだ!
「では、アレックス・キャベンディッシュさまの取り引きは、小白金貨5枚までを可能とすることに致します。
こちらでよろしいでしょうか?」
「ああ。問題ない。」
叔父さんはそう言ってお茶を飲んだ。
僕は目を白黒させた。
小白金貨5枚って、さっき店舗の購入金額だって聞いたよ!?
そんな高い商品扱わないよ!
……でも、ランド魚一匹で、大金貨1枚と中金2枚だったし、それ以上の取り引きが可能だったほうがいいのかな?
叔父さんのすすめだし、きっとそのほうがいいよね!早くたくさん稼ぎたいしな。
その分ミーニャとの結婚も早くなるよね!
「では、こちらが塩の代金になります。
お確かめ下さい。」
ラカーン商人ギルド長は、そう言って、机の上に大金貨2枚を並べた。
あんな小さな革の布袋ひとつ分の塩が、デッカイランド魚よりも高いの!?
叔父さんはこれをわかっていたから、塩を売ろうと思ってたのか……。
「今後同じものをお願いしたい場合、どの程度の日数が必要でしょうか。」
「7日だな。急ぎの場合は追加料金込みで、3日……。最低でも2日欲しい。」
別にスキルですぐにでも出せるんだけど、そう言っておいたほうがいいってことなのかな?叔父さんには何か考えがあるんだろう。
「分かりました。良い取り引きでした。
今後のご活躍をお祈り致します。」
そう言って、ラカーン商人ギルド長は、笑顔で僕たちを、入って来たドアの入口まで見送ってくれた。
いきなり大金を手に入れちゃったよ……。
でも、家を買うにはまだまだだよね。
頑張って稼がなきゃ!!
「もしも明日からでも、すぐに商売を始めるのなら、店を借りておくか?それならこのまま窓口で手続きが可能たが。」
叔父さんが窓口をちらりと流し見て、腰に手を当てて、握った拳に立てた親指で指し示しながらそう言ってくれる。
「うん、そうだね、魚屋さんを始めようと思ってるんだ。僕のスキルで出せるのは、魚や塩くらいだし。」
「なら、あとで市場調査に行くといいぞ。
このあたりで魚はめったに手に入らないから、露天商がたまにくるくらいだ。
いたら他の店がいくらにしているのか、確認しておいたほうがいいな。」
そっか……。値段……。
確かに分からないや。
調べておいたほうがいいかも。
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