スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜

陰陽

第一章

生命の海

第1話  キャベンディッシュ侯爵家

 僕はこの間15歳の誕生日をむかえた。

「今日は鑑定に行く日なんだよね?兄さま。

 どんなスキルを貰えるんだろう?」


 楽しく会話をしながら朝食をとっている席で、弟のリアムが僕に話しかける。

「アレックスは、我がキャベンディッシュ家の跡取りだ。火魔法の力を授かるだろう。」


 僕の代わりにキャベンディッシュ侯爵家の当主である父さまが答える。我が家は代々優秀な魔法使いを排出している名家で、父さまが火魔法使い、母さまが水魔法使いだ。


 キャベンディッシュ家の子どもたちは代々火魔法使いであることが多く、僕も当然そうであることを期待されているんだ。


 貴族は貴族同士の結婚が当たり前だけど、優秀な魔法使いなら平民と結婚することもある。それくらい魔法の力を大切にしている。


 特に、スキルは遺伝しないけど、ステータスは遺伝すると言われてるから、知力やMPが高い相手を我が家では求めてるんだ。


 魔法のスキルを与えられた人じゃないと、基本、知力やMPのステータスは高くないから、結果的に魔法スキル持ちを求めることになるんだよね。


 ちなみに祖父の母親は、当時国一番とうたわれた火魔法使いだったそうだ。なんでも国が戦争していた当時、大活躍したのだとか。


「でも父さま。この前読んだ本では、貴族の子ども全員が魔法を使えるわけじゃないって書いてありましたよ? 僕や兄さまには魔法の才能がないかもしれないでしょう?」

 弟の言葉に父さまは一瞬眉をひそめた。


「確かにそうだな……だが心配はいらない。

 お前たちには我がキャベンディッシュ家の血が流れている。きっと素晴らしい魔法使いになれるさ。」

 と父さま。


「そうでなくては困りますわ。優秀なリアムを平民にするのですもの。納得出来るだけの結果を残していただかないと。」


 リアムの母親である、父さまの後妻のエロイーズさんが言う。ちなみに僕の母さまは、僕が3歳の時に亡くなっている。


 だから弟のリアムは腹違いで、僕とは5つ離れている。年齢が離れていることもあるけど、とっても可愛い弟だ。


 僕は家族の中で唯一リアムのことだけは好きだった。後妻であるエロイーズさんは貴族の娘らしく高慢なところがあり、あまり好きになれなかったし、父さまもそんなエロイーズさんの味方ばかりしていたから。


 でもリアムだけは違った。いつも僕に優しくしてくれたんだ。だから僕はリアムのことが大好きになった。


 あ、もちろん亡くなった母さまと、滅多に会えない、父さまの弟である叔父さんがいるんだけど、その叔父さんのことも好きだよ。


 小さい頃に会ったきりだけど、叔父さんも僕にとても優しくしてくれたんだ。またいつか会えたらいいなって思ってる。


 リアムは昔からとても賢い子だった。

 6歳くらいになると大人にも負けない知識を身に付けたんだ。そしてそれを自慢したりせず、ただ黙々と勉強に打ち込んでいた。


 だからか分からないけど、みんなからは天才だと騒がれるようになった。そしてそれが面白くないのか、一部の貴族の子供たちからはいじめられていたみたい。


 僕はそれを知った時、すぐに助けてあげたかった。けど5つも年齢差のある子どもの喧嘩に僕が口を出すのははばかられた。それに僕が何かすれば、余計に事態が悪化するかもしれない。そう思うと何も出来なかった。


 ただ見ていることしか出来ない自分が情けなく感じられた。だからせめてもの償いで、僕はずっとリアムを支えようと思ったんだ。


 貴族の子どもは跡取り以外は、他の貴族と結婚しない限りは平民になる決まりだ。リアムに貴族との結婚話が来ない限り、リアムは成人後に平民になることになる。


 そしてその時が来たら、真っ先に僕がリアムを支えるつもりだ。だから今回の鑑定で、少しでも良いスキルを貰いたいんだ。


「まだ決まったことでもないだろう。

 リアムにも結婚相手を探しているんだ。我が家の跡取りになれずとも、平民になると限った話ではない。リアムは優秀だからな。きっといい縁談が舞い込むことだろう。」


 父さまがナプキンで口元を拭いながらそう言った。そうだね、リアムは賢いもの。

 領地の多い貴族なら、管理する能力のある婿養子を欲しがることだろう。


 この国、リシャーラ王国では、15歳で成人になった子どもは、孤児院の子どもをのぞいて、全員各地の教会で鑑定を受けることになっている。僕の鑑定ももうすぐた。


 リシャーラ王国は周囲を別の国の領土に囲まれて、海こそないけれど、豊かな山の幸や鉱山資源に恵まれた土地だ。


 その恩恵にあずかろうと、周辺諸国から多くの商人が出入りし、王都もとても賑わっている、かなりの商業大国なのだ。


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ご質問がありましたので補足。

この世界にはステータスが存在しますが、専用のスクロールがないと見られません。


その為スキルは鑑定でわかっても、自分のステータスを知らない人も多いです。


ステータスを自分で見られるのは、転生勇者と聖女のみという世界線になります。


冒険者や、王宮や貴族の騎士団につかえる剣士や魔法使いなど、自分のステータスに合わせて武器を選んだりする必要のある人たちだけが、スクロールを使って時々ステータスを確認しています。


登場人物一覧がありますが、常に最新話近くに、更新のたびに移動させています。

(最新話における人物背景を記載している為に、ネタバレを含む為)

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