パーティ
「お初にお目にかかります」
そう言ってレナードの元へ挨拶に来たのは長身の美女だ。
(エレオノーラ様ではなく、僕に?)
普通ならばエレオノーラに先に挨拶をするものだろう。
主賓国の王女だ。
なのにこの美女は真っすぐにレナードのもとにとやってきた。
長い琥珀色の髪に褐色の肌、タレ目と赤い唇がとても色っぽい。
スタイルも良く、特に大きな胸は強調されるように谷間を見せている。
このような自己主張の激し目なドレスは見た事がないと赤くなるよりもレナードは青くなる。
このような強調はレナードの尤も苦手としているものだ。
「私はエレオノーラの親友です。ですからぜひ私とも仲良くなって欲しいわ」
「えっとそうなのですか?」
エレオノーラに目線を向けると不機嫌オーラが出ていた。
親友と言う割には隣のエレオノーラが凄く怒っている、冷気というか寧ろ殺気? が出ていた。
周囲に物理的に寒々しい空気が流れる。
「露出は控えなさいと何度も手紙を出しましたよね? それなのにこうも胸を強調するような服を着てくるとは。わたくしからの手紙をきちんと読みましたか?」
怒りの口調で言うエレオノーラに怯みもせず、寧ろ話しかけられて笑顔になっていた。
「もちろん! 親友であるあなたの手紙はきちんと目を通して今も持ってきてるわ。ね、セフィ」
後ろにいた侍女がしずしずと現れる。
「あたしは止めたのです。なのにグロリア様はこのドレスがいいと聞かなくて」
「だって、私の美貌に合うのがこのドレスだったのよ。選んであげないと可哀想じゃない」
確かに似合ってはいた。
似合ってはいるが目のやり場に困ってしまう。
「その姿でこれ以上レナードに近づかないでね」
牽制するようにレナードの手を引く。
「あら、酷い。レナード様は嫌じゃないでしょ?」
そう言って反対の手を取られ、レナードはがちがちに固まってしまった。
「あの、僕は、その」
「嫌ですわよね、レナード。グロリア、さっさと離しなさい」
「あら、せっかくあなたの婚約者を皆の前で褒めてあげようとしたのに」
「何の話でしょうか?」
レナードは褒められるような覚えはないのだが。
とにかくどちらも離して欲しい。
「今日は国内外の人に、レナード様の魅力を伝えるためお手伝いに来たのよ。大大大親友のエレオノーラの頼みだから張り切ってきたんだから」
グロリアはそう言うとレナードを見つめる。
「可愛い顔をしているし、そういう所もエレオノーラに気に入られたのでしょうね。食べちゃいたいわ」
そんな風に言われ、レナードはもう参ってしまう。
初対面のグロリアの言葉を直球で受けると危険だ。
「いい加減になさい」
エレオノーラが強くレナードを引き寄せる。
「レナードごめんなさい、あなたが許せば氷漬けにしてもいいとわたくしはグロリアを氷漬けにしてもいいと思うのだけど、許可を下さらない?」
「駄目です」
約束をきっちりと守ろうとこうして許可を求めてくれるエレオノーラが愛おしいが、駄目だ。
さすがに駄目だ。
「グロリア王女はシェスタ国の第一王女でしょ? 立場的にはエレオノーラ様と同じくらいではないですか」
名前と容姿で聞かずともわかった。
褐色の肌は暑いシェスタ国を示しており、そして名前はレナードも聞いたことがあった。
男好きとしても有名だ。
数多の男性に声を掛けているそうだが、その後どうなったのかは誰も知らないし、怖いもの見たさでついていったものは皆その時の記憶を失っている。
実態が何もわからないので、良い噂はきかない。
そんな人物が何故エレオノーラと親しいのか分からなかった。
「わたくしとこいつを一緒にしないで頂戴」
ぷいっと拗ねてしまうエレオノーラを見てレナードよりも早く、グロリアが反応する。
「やだ、エレオノーラ可愛い。いいじゃないの、私と一緒だって。私は嬉しいわよ」
グロリアが今度はエレオノーラに抱き着こうとしたが、さすがにそこはニコルに止められる。
「これ以上は駄目ですよ」
首元に隠しナイフを突きつけるという乱暴な止め方でようやくグロリアは止まった。
「あら、いたの。静かだから今日はお休みかと思ったわ」
「そんなわけないでしょう。所用で席を外していただけです」
ニコルは誰かに見られるより早くナイフをしまう。
「エレオノーラ様、ルピシア様をお連れしましたよ」
紫混じりの黒髪をした、優しそうな美人がそこにはいた。
「久しぶりね、エレオノーラ」
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