おうちデートと待ち合わせ
弟ミカエルがまさかのティアシーアとの婚約を行なった。
つまりはスフォリア家は安泰と言うことだ。
王族との繋がりも密になり、尚且つ次期公爵となるミカエルに配偶者が出来たのだ。
それが自分の大好きな婚約者の妹だから尚更安心する。
一つの懸念が消え、ホッとしたのでもう一つの懸念を解消したい。
レナードは考えていた。
この前のデートの穴埋めをしたいと。
途中で暴漢に襲われ、一悶着があったし、こんどは穏やかなデートにしたいと思っていたのだ。
次は自分がエレオノーラの為に用意しデートに誘おうと、意気込んでいる。
「どこに誘えばエレオノーラ様は喜ぶだろうか」
レナードは色々考えて見た。
この前の観劇は少々刺激が強かったので、もっと穏やかにお話出来たらいいな。
「エレオノーラ様の好きそうなところでゆっくり話せるようなところって……」
「レナード様のお部屋でよろしいんじゃないですか?」
キュリアンの言葉にレナードはキョトンとする。
「僕の部屋? それのどこが好きそうなところなんだ?」
キュリアンはニヤニヤと笑っている。
「好きな人の部屋ならば見てみたいと思うものでしょう。それにエレオノーラ様は一度もスフォリア邸を訪れてませんよね」
そういえば、王城でしか話をしたことがない。
「一度くらいお呼びしてもいいんじゃないでしょうか」
キュリアンの話を聞いて成る程と思う。
ゆっくり話も出来るし、スフォリア邸の庭の散策をしてもいい。
ただ護衛についての問題も考えなくてはいけない。
「そうだね。婚姻前にお呼びしてみようかな。何もない部屋だけど」
掃除と、そしてエレオノーラの好きなお菓子を準備しよう。
(何もない部屋だって構わないんですよ、レナード様さえいれば)
キュリアンは内心ほくそ笑んだ。
エレオノーラが今一番行きたい所だろう。
レナードの生まれ育った場所を見られること、そして普段レナードが過ごしているところが見られることは、エレオノーラにとってはとても嬉しい事だ。
キュリアンは自信を持ってそう言える。
「レナードのお部屋でデート?」
それを聞いてエレオノーラは眉を寄せた。
「いえ、嫌ならば別な場所で! すみません!」
エレオノーラの不機嫌そうな顔を見て、反射的にレナードは謝る。
「いえ、その場所が良いです」
エレオノーラはきりっとした表情でそう言った。
心中は穏やかではなく言われた事を頭の中で反芻している。
(これはおうちデートという事よね。彼の部屋でまったり過ごし、レナードの両親もいるかもしれない)
スフォリア公爵夫妻やミカエルへの手土産も手配して、護衛も準備して……諸々の計算をしていく。
「よろしかったら僕が迎えに行きます」
レナードの提案に喜ぶ。
少しでも側に居られるのは嬉しい。
「それなら待ち合わせはどうでしょう?」
ニコルがそう提案した。
「市井の者は会う時は待ち合わせをするそうですね。そうような方法はどうですか?」
なるべく二人っきりの空間を作らせたくないが為に、ニコルは進言した。
「いいですね。街には恋人が待ち合わせによく使う場所があるのですが、そこはどうでしょうか。でもエレオノーラ様ってバレると大変ですよね」
「変装するからそこにしましょう」
是非ともレナードと恋人らしい事をしてみたい。
「ちなみにそのような場所で女性と待ち合わせをしたことはありますの?」
嫉妬心剥き出しでそう聞かれ、レナードは必死で首を横に振った。
「それは良かったわ」
にっこりと優雅に微笑み、エレオノーラは当日の予定を速攻で決めていった。
待ち合わせ先にて、エレオノーラは静かに佇む。
目立たないようにと静かにし、髪を染めて変装しているのだが、上品な立ち居振る舞いは隠せない。
レナードは本当に来てくれるのかと心配そうにしている姿は、思わず声をかけたくなるものだ。
「エリー」
事前の取り決めで、今日は愛称で呼ぶ。
「会えて良かったわ、レイ」
無事に会えてホッとした
「場所を間違えてないか、とても心配だったの。それにわたくしって事がわかるのか心配だったわ」
いつもと違う服装と髪色だが、気品が溢れ出ていた。
「どんなに姿が変わってもわかりますよ」
ニコリとレナードは微笑むが、実はニコルのおかげだ。
余計な者が寄り付かないように周囲を睨みつけている。
美女二人が立っているのに、声がかからないのは何らかの事をニコルがしてるようだ、急に人が倒れるなど普通あり得ない。
無事に待ち合わせというプロセスをこなせて、二人はホッとし、そして会えたことに喜んでいた。
そんな中でレナードの幼馴染に会ったのは本当に偶然だ。
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