第20話 初の搬送

ヤフーニュースですごくタイムリーな事が書いてありました。救急隊員からの切実なお願いに驚きの声 「脱いだ靴、並べ直さないで」という記事です。どういう事かといいますと、救急隊が家の中に入りますよね?そのときあえて靴の向きをそのままにして家の中に入るのです。ご家族や親切な方が靴の向きが逆だから揃えてしまう・・・。

ええ、親切な方は普通ですよね、むしろありがたいです。

でもなんです。そのままで良いのです。記事にもありましたが担架を搬出するとき二人だとすると一人は後ろ向きのまま出ようとします→靴履くとき揃えてあると足が逆向きになるので担架をもったまま逆向きになった靴を履かなくてはいけません。担架には人が乗っています→重たい→靴の向きを無理に変えようとするとひねったり、最悪担架を落とすことになります。

わたくしも、こんな事 この仕事するまで知りませんでした。


っで、逸れましたが 初の搬送。

さすがに一人では不可能なので師匠に同行。


普通に霊柩車を止めて、中に入れば?っと思ってました。

霊柩車を止める場所は基本は亡くなった方の家の前ですが、様々な住宅事情があります。隣の家の様子を確認、なるべく隣の家の迷惑にならないように止める、左右を通行できるようにする【これは状況によりますね】出発する向きを考えてとめる・・・

などなど・・。


「表札みて」

「名前あってる?」

「止める場所みてる?」

「亡くなった方をどこから出すかわかる?」

「通路の幅みて」

「担架どうやって入れてどうやって出す?」

「出るときクラクション鳴らす?」

・・・・・・。

「こういうことを確認したり聞かないといけないんだよ」


「とりあえず見て」

「乗せるときだけ手伝って」

「ここでは俺らが仕切るんだよ」


もう固まってしまいました。

何していいのかわからない。動きたいけど動けない。

何言っていいかわからない。どうにかこうにか乗せるのだけ手伝いました。

頭が追いつきません。場所が場所だけにメモなんて無理です。

これ以外にもやること満載でした。


「これから何回も連れていくから」

ごもっともです。

「お願いします」

自動的に言いました。


【これも試練だな】

そう思いました。搬送のほうが難易度が高いなとも思いました。

「大丈夫。場数を踏んでみるしかない。そのうち体が動く」


師匠はそう言うけど・・・・。


これからは何回も何回も一緒に行って、見てを繰り返しました。

少しずつやることを増やして。

今ではどーなんでしょね?この頃よりかはマシかとは思いますが。

未だに引き出しが足りてないと思ってます。

靴も言い忘れてしまう時もあります。靴履けないから靴下で外に出たりします。

亡くなった方を落とすわけにはいきません。

落としたら首と言われています。


本当に難しいですよね。今では搬送は好きになっています。

ご家族と一番距離が近い、お話もできますしね。

まれに搬送したかたを、出棺する時も担当になったりします。

そうすると思いが強くなりますね。

家から搬送→葬儀をみる→火葬場へ一緒にお連れする→見届ける【運ぶ時までですよ】

この世で最後のお手伝いできたなと。痛感します。


長くなりました、次も内緒です。

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