警部・黒井川の事件ファイル

羽弦トリス

第1話殺しのダイヤル①犯行

推理作家の堀健一朗は妻の美代子が眠っている最中、サバイバルナイフを振り下ろした。

刺しどころがたまたま、心臓で美代子は声も上げず絶命した。

伊勢の別荘地で夫婦は暮らし、夫は締め切りが近くなると、名古屋のビルトンホテルで缶詰め状態になる。

堀は現場をきれいに掃除して、余りにも出血量が少なくて、安堵した。

冷たくなった美代子をビニールで巻きサバイバルナイフ、シーツも山奥にスコップで穴を掘り、全て埋めた。

カモフラージュに落ち葉を埋めた穴あとにまいた。

堀はシャワーを浴びると、BMWで名古屋のビルトンホテルに向かった。


堀はホテルの部屋の鍵を開けて部屋に入ると、部屋にはスーツを着た男らが5、6人いた。

「先生のお戻りです」

「皆さんお疲れ様です。どうですか?何か進展は?」

「誘拐専門で警部の宮下と申します。今日から指揮を受け持つことになりました。昨日、ここのFAXに送られてきた指紋は、奥さまの指紋に間違いありません。ここは勝負どころです。先生もそのつもりで」

「はい。妻を助け出してやって下さい」

宮下はチラリと秘書の小林を見た。

「君はもう、帰りなさい」

「はい、では今夜はこの辺で帰ります」

「宮下警部、一階のラウンジにいます」

「了解しました」


プルルルルプルルルル


この部屋専用の電話が鳴る。一同は緊張した。

表示には『公衆電話』と、あった。

宮下が堀に出る様に言った。スピーカーにしてあるタメ、犯人の声は聞こえる。

「も、もしもし」

「金を準備しろ。1万円札で1000万円ずつ2つの紙袋に入れて、次の指示を待て!」

「も、もしもし。妻の声を聞かせてくれないか?」

「後、警察に連絡は取るな。約束を反故にすると、お前のかみさんの命はない」

「もしもし」

「ツーツーツー」

「小林さん。例のものを」

刑事に言われた小林は紙袋数枚に1億円準備していた。

その中から、紙袋に1000万円ずつ2000万円準備した。

「ありがとう」

「いいえ、奥さまの命のためです」

「じゃ、一緒に下へ」

2人は部屋を出た。


「おいっ、柴垣、逆探できたか?」

「はい、名古屋市名東区の公衆電話です」

「すぐに、パトカーを向かわせろ。ここは中区だぞ、名東区なんて……」

「20時きっかりに電話を掛けてきています。かなり、時間にうるさい犯人かも知れません」


エレベーター内。

「千紗ありがとう」

「奥さんが誘拐されて喜んでるでしょ?」

「ま、売れる前からの付き合いだが、今は千紗の事しか考えていないよ」

「先生、奥さんがもどってきて、落ち着いたら別れて下さいね」

2人は熱いキスをした。


宮下警部は、部屋の隅っこで小説を読んでる男に声を掛けた。

「今回は君の出番はなさそうだよ!日本の身代金誘拐事件で成功した犯人なんか、近代ではいないんだ。殺人課の出番はないな、黒井川君」

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