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「もう、逝くのか」俺が言った。涙がぽろぽろと零れた。「もっと、俺と生きて欲しかった」心からの本音だった。リバティに戻って延命治療を受ければあいつはもしかしたらもう少し生きれたかもしれない。結局あいつが"車掌"に頼ったのは一回きりだった。今ではその理由も分かる気がするけれど。

「愛は素晴らしいな。お父さんとお母さんは私を愛してくれていたのか、世界を愛していたのかわからないけれど、君からの愛は、きっと本物なのかな?」あいつはそう言った。あいつの世界じゃそうだったんだろう、愛が向けられているのが自分なのか、世界に対してなのか、分からなくなってしまうような、管理された世界。

「ああ、間違いなく俺は、お前を愛しているよ」「ありがとう、私もだ。そして、私は私たちの子も、愛している。この感情は、素晴らしいな、なんだか、ぽかぽかするんだ。とてもいい気持ちだ……」「俺もそう思う」あいつはそう言って、俺を抱き寄せて、耳元に口を近づけ、少し話をした後、死んだ。

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