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 愛を確かめ合って、俺たちは何度も交わった。いろいろな表現で愛を伝えたあとで、横になったあいつは話を始めた。「なんて言えばいいかな」いきなり話すことでもないんだけどね、と言って、あいつはどこか遠くを見つめるように、俺が知らなかった、あいつが知っていた世界を語り始めた。

「君が思っているのと、ずっと違う話になるかもしれない。けれど、伝えておこうと思う。私はこれから死ぬだろうけど、この話は、もし生まれるのだとしたら、私たちの子供にも知ってほしいから。まあ、この言葉が適切かな。セントラルとリバティは、外で言う、おままごとの世界なんだよ。外ではセントラル、リバティ、外みたいな序列があると思っている人間が大多数いて驚いたけれど、セントラルもリバティも基本外の世界は意識しないんだ、完全に内部で完結して、内部に序列がある。リバティの人間なんかセントラルが人類を存続する為の建物だと思っている人が多かったな、私が出て行ったときは技術者が出てきて大丈夫なんですか?何か異常があったんですか?とか言ってたっけ、そんなわけでセントラルとリバティはそもそもお互いを行き来する空間なんて思ってなくて、別世界なんだ。まあ実際はリバティからセントラルは通信可能で、セントラルの真ん中にある中央塔からはリバティの様子がわかったりするんだけれどな。そうしてあれだな、これはセントラルの話でリバティもそうかはわからない、リバティにいた時に得た知識だと大体同じで少し笑ってしまったけど、先ず私たちはデザインされて生まれる。外で言う妊娠って奴は存在しないんだ。母体に負担をかけるし、遺伝子の操作をしてわざわざ身体に戻すなんて手間でしかないし、培養液の中で育てた方が異常にすぐに対処できるからな。そうして生まれた私たちは、過去の統計から最も幸福度が高いとされる、いくつかの人生設計を歩むんだ。私たちはデザイナーベイビーだ、そもそも生まれた時点から一般の人類に比べて能力が高いんだろう。私が世界の全てを知っていると言ったときに怪訝そうな顔をしただろ?あれはセントラルの中では誰もが言うような言葉だ、世界の全てとは学術的な物を指すんだ、まあ外に出てきて歴史の一部がどこかの世代で隠蔽されて情報が遮断されていることが分かったけれど。そんな感じで、セントラルは遺伝子を組み替えながら世代を重ねて、至高の人類を作ることを実現する場所だったんだよ。そしてその過程にはおままごとがある。途中の代の人間が役割を投げ出さないように蜜を与えられているわけだ。このシステムを最初に考えたやつはよっぽどの狂人だよ。実際の人類は千人に一人ってところか、後は高度に調整されたAIが庶民の役をやりきってくれる。私たちは統計通り、その才を活かせる学者や社長とかになるんだ、もちろん遮断された歴史以外の過去の全てを知っているから学者になった人間は人類の存続、更なる発展のためにどうすればいいかを研究するんだよな、そして社長とか偉い職に就いた人間はそのまま気分よく『上手く』成功を重ねていく。まあ親の会社を継ぐって例が多いな、AIにも無理な負担がかからないし。そして基本はAIの存在を知らないまま死んでいくんだ。学者になるやつは学生時代、4歳から12歳が学生なんだけれど、でトップクラスの成績を出した数人だけだ。そして学者組には莫大な給与、社会的地位が与えられると同時に、上記の世界の真実が開示される。これは絶対に喋ってはいけないことになっていて、これを喋ってしまった場合のみAIに上手く殺される算段になっているんだ、私も学者になって驚いた、人間はいかに少ないんだって。ただ基本学者になった人間はそれを受け入れて、研究に没頭していくようになっている筈なんだ。ああ、AIに研究をさせないのにも理由がある、AIが賢すぎる世界になったら大変だろう?このシステムを作ったやつは未来のことを考えていて、私たち学者になる人間に課題を丸投げすることにしたんだ。まあ、私は他の学者たちと違ったんだけどな。出たら死ぬ、と言われている外への興味が尽きなかった。知恵の実をまた食ったのかもな。私は世界に洗脳されることなく、興味は外に向いていた。そして、外に出ることが許可されているのは学者だけだった。外の世界を研究することは許可されていたんだ、基本誰もやりたがらないように脳は進化するんだけれど、私が調べた限りたまに現れるみたいだな、医者も言っていたしな、前に来た奴らが二年、と。あれは私の八期前の学者カップルだな。私も外に出る前に同じようなやつらがいないか調べたんだ。いるとは思っていなかったんだが、その存在に後押しされた。通信が途切れていたからリバティから"外"へ向かったことはある程度自明だと思っていたんだ。リバティまでいったなら私でもそうする。そうして私は外へ向かうことにした。セントラルからリバティまで行くのはある程度簡単だった、セントラルは広いけれど、交通が発達しているから端までは一時間もかからない。大変なのはリバティから外に行くまでだ。手段を何個も探したが、最終的には廃棄物処理列車にしのびこんで壁際まで行くしかないことが分かった。壁の境から数十キロは何にもない地が広がっていて、少し不気味ささえ感じたな、そんなに外を怖がっているのか、っていう。まあそんなわけで列車にしのびこんで、結局は車掌に見つかってしまうんだけれどね。『セントラルから来て外を見たいんだ』っていったら『望み通りにすればいい、私は毎週ここに来るから、帰りたくなったら此処まで来るといいよ』、って言って壁のパスを教えてくれたよ。もっとも、私はもう帰るつもりはないのだけれど」


「世界なんてどうでもよくて、私はやっぱり、私を愛してくれる人を探していたんだ、そうして、私が愛せる人を」

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