第16話 ふたりは特別な関係ですが?
翌朝。
昨日とは打って変わって、慌ただしい朝を迎えた。
昨日はノー部活デイだった。
今日は普通に朝練がある。
学校に間に合うだけなら、もっとゆっくりしてても大丈夫だ。
実際、
この変化はオレが入学してからだ。
『もっとゆっくり出れば?』そう言えばいいのだけど、オレはこの血縁関係がない姉と、一緒に登校したいから言ったことなかった。
最寄り駅まで今日は自転車。
自転車なら十分掛からない、駅で待つ方が早い。
いつもオレたちは南口。
同じ電車でも別の車両に乗っていた。
でも、今朝は――
「おはよ。その……
北口に現れた
「ん? ムツ。なに? 呼び方戻したの?」
中学までこの呼び方だった。
だけど高校入学と同時に「
戻すだけの心境の変化があった。
「あ……はい。戻そうかな、になりまして……
「ダメとかじゃない。別にいいんじゃない、幼馴染なんだし(私の事も戻すのかぁ…いや、私の意見聞くとか…何があったんだか)」
ははっ、さすが姉。
なんかバレてる。
昨晩、ショコラの「なかよしグル―プ作らない?」との呼びかけのお誘いをふたりにした。
ふたりとも即答で「OK」を貰ったものの、その後『幼馴染』のグル―プラインに
『幼馴染』のグル―プラインはオレたち三人だけ。
長い間放置されていたLINEグル―プだ。
オレも
「1―A」のオレ称「アバ
「この娘、男子サッカ―部の下半身の処理係」
「アバ
実のところ「なかよしグル―プ」のお誘いの前に何度も
オレだって
最近の
だけど、それとは別に
ヘタレなオレたちを救ったのは、
ようやく近所の公園に集合した。
照れ隠しから、めんどくさそうに現れた
その直後「オレたちが守ればいいだろ?」的なオレのLINEも報復として公開された。
それを見た
「信じてくれるの?」
「ありがと…」
「そんなことしたことない」
「信じてくれてるって、わかるけど……」
「ふたりには顔見て言いたくて」
「でも私、感じ悪いでしょ、最近。自分でも、うんわかってる」
「それなのに……」
「本当にごめん」
「また仲よくしたい」
「仲よくしてほしい」
などなど……オレたちは
どうしたことか、きのう辺りからやたらと青臭い青春臭がプンプンする。
このまま、甘酸っぱい青春にアクセル全開と思いきや、一晩寝るとお互いやらかした感がある。
顔から火が出るほど恥ずかしい、なんて聞くがそれを身をもって経験した。
ホント、すみません。
穴があったらオレのこと顔だけ出して埋めてください――な気分だ。
それは相棒
空気を読んだように下り線に電車が入って来た。
オレは相変わらず
これがオレたちの通常のかたちになるのだろうか?
しかし、そうはならないのがオレたちなのかも知れない。
でも、県立
☆
朝練は一時間少々。
本格的な練習より基礎トレがメインだ。
全体で柔軟やアップをしてから、持久力を付けたいものは外周に出るし、20メ―トルダッシュをする者やコ―ンを立てドリブルの練習をする者と様々だ。
オレは基本コ―ンを使い素早い動きの確認をすることが多いが、今朝は嫌いな20メ―トルダッシュの組に加わった。
20メ―トルダッシュはとにかくしんどいのだ。しかし今朝はそのしんどくて嫌いな20メ―トルダッシュ組に加わった。
日頃から
うるさいから加わらない、加わらないから口うるさいのデス・コミュニケ―ションだ。
でも、昨夜の
良かれと思って言ってくれているのは頭ではわかる。
でも、言い方が気に入らないとか、態度がどうとか、そういうどうでもいい事を並べて、結局はしんどいのが嫌なだけだった。
20メ―トルダッシュの笛は
気のせいか、笛を吹く口元が笑って見えた。
不思議な事に、何をしてもうまく行かなくなっていた
オレはそこそこの回数をこなし、さすがに息が上がったので
昨日までとは別人だ。
それはオレもか……
ところで、
サブリナと
部活では一対一は非推奨だ、試合で持ち過ぎるクセが付く。
中学では女子サッカ―をしていた
ふたりに体育館に行くと声を掛け、グランドを後にした。
オレたちが暮らす瀬戸内の県の公立高校には特色選抜なる入試方式がある。
ざっくり言うと、スポ―ツや芸術に一芸がある生徒を一定数推薦入学させる仕組みで、オレはその推薦を得て県立
つまり県立
オレはその代表格とも言える部を訪問することにした。
『
オレは昨日仲良くなったばかりの少しクセっ毛なポニ―のバスケ女子がシュ―トを決めたのを確認して声を掛けた。
「なぁは⁉ ちょ、タ、タイム‼ タイムです‼ お、おトイレです‼」
声を掛けられた本人はあり得ないほど情けない声を上げた。
ショコラこと本名
きのうあれからクラス名簿で調べた。
それでも実のところ、ショコラが
ただおぼろげながら誰かに「
ショコラは慌ててオレの腕を引っ張り、体育館の外にある手洗い場近くまで連れ出す。
すれ違うバレ―女子やバトミントン女子に「あっ、
オレは自分の知名度が少し意外だった。
そして、自信があまりなかった「ショコラ、イコ―ル
大げさか?
「もう!」
あれ?
いきなりそっぽ向いて、すねられた。なんだ?
あっ、やっぱ常にインタ―ハイを目指す県立
朝練中はマズかったか……そんな事をセルフ反省してると違った。
「
「えっ?」
「だから名前バラしたの! あいつホ―ムル―ム前にギタンギタンにしてやる……」
ショコラは二の腕に力こぶを作ってみせた。
ん?
いや、
「ちげぇよ、名簿見たんだ」
「えぇ~~なんでそんなことするかなぁ〜〜伊吹クンの前では『永遠のショコラ』でいたかったのに…くすんっ、みたいな?」
オレの「全然『くすんっ』じゃねえじゃねえか、オレのときめき返せ」に鼻の頭を掻いて「へぇ~ときめくんだ」と照れた。
うん、やっぱ部活女子は教室よか体育館が
どうでもいいが昨日は「
「ジャマしたよな? さっき」
「あっ……ヤバ…絶対イジられる‼『どうしよ、
「関係…? 特別な関係とか言っとけば?『あとはひ・み・つ♡』とか? ちょっとおもしろそう(笑)」
ショコラはポカンとした顔した。
あっ、朝からなんかフリ―ズさせたか……
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