第6話 堪能するコトにしました。
昼休み。
きのう特に気にするでもなかったが、よくよく考えてみたらサブリナさんはお昼どうしてるのだろう?
気の利いた女子が声を掛け、誘っていれば問題なし、しかし
『サブリナさん、たぶん昨日お昼食べてないと思う』(ポスッ)
『えっ、誘ってやれよ』(ポスッ)
『ごめん、なんか敷居が高い、
『マジか、誘ったらまたヤリ〇ンとか言うんだろ?』(ポスッ)
『大丈夫! 陰でしか言わない(笑)』(ポスッ)
陰では言うのね…でもお昼ご飯ないのも可哀想だし、お弁当なら急造親衛隊に囲まれて食べるのも可哀想だ…仕方ない。
「サブリナさん」
(ぷいっ)
ん…なんか露骨にそっぽ向かれましたが……あっ、アレか。
「その、サブリナ。お昼…お弁当とかパン持ってきてるの?」
因みにオレはすでに三限目の休憩時間に早弁をしていた。
しかし、既に小腹が空きつつあった。
「お弁当……パンですか? いえっ…」
ん…この感じ。
どうも、お昼を準備する習慣がないようだ。
もしかしたら、前の学校は給食的なものがあったのかも。
仕方ない、幸い小腹も減ったし掛けうどんなら食べてもいいと、
しかし、なんでオレのこづかいなのに、姉
まぁ、今日帰りのショッピングの軍資金が減るからにほかない。
「学食。行くけど、一緒に行く?」
「学食……ですか」
「ん…何ていうんだろう……カフェテリアみたいな? 学生用食堂だからそんな立派じゃないけど」
くう〜〜〜〜っ
何かいいタイミングでなってますが?
サブリナさんは顔を真っ赤にして手で顔を隠した。
隠した手の隙間から恥ずかしそうに、覗いて「今の……?」……オレは周囲に人がいないのを確認し、指で「ちょっとだけ」と答えた。
(実は二限目からお腹空いてました!)
(じゃあ、行こうか)
(はい!)
よっぽどお腹が空いてたのか、サブリナさんは「がたん」と音を立てて、立ち上がった。
クセなのか、どうなのか。サブリナさんは移動時にオレのシャツの裾を握る。
この娘は五歳児なのか?
まぁ、いいや。
遠目で
笑ってるからいいが、ヤラれ放しは何だかなぁなので「次の狙いはお前な?」と口だけで返した。
なにあからさまに弁当箱のフタ落としてんだ。
それ以外は……
あっ、うん。
普通に急造親衛隊の敵意に満ちた視線だけ。
あと――
ん…それとはちょい違う、明らかに気にくわない系の視線を感じる。
ウチのクラスじゃないヤツ、リア充というか、ウェイ系とでもいうのか…何か急造親衛隊のとは違う毒のある視線だ。
☆
学食。
どこの高校もたいして変わりはない。
食堂ならではの匂いと「今日のA定、魚のフライかよ〜」みないなプチ情報。
なるほど、かくいうわたくしも、魚はお刺し身以外はちょっとな人間ですので、A定はなし。
ちなみに食堂の匂いを嗅いだ瞬間に、
ん…B定食もありっちゃあ、ありだが、B定食はいつも比較的女子ウケを狙ったサラダ多めとか、デザ―トにヨ―グルトがついたりしている。
おしゃれな反面、量が少ない。男子たるもの質より量なのだ。
ここはボリュ―ム重視ということで、地域のB級グルメ―かつめしを選択した。
まぁ、簡単に言うならご飯の上にとんかつが乗ってある。
本来なら牛カツなのだが、何分学食。
予算的に豚さんになってた。
とんかつにデミグラスソ―スという、洋食感溢れる一品が大盛り400円で堪能できるのだ。
オレはサイフから千円札を取り出し、着々と昼食へのカウントダウンを始めていた。どうしたことか、サブリナさんは…自販機の前で固まっている。
生徒の第一波が過ぎ去っていたので、幸いフリ―ズしたところで、誰の迷惑にもならない。
(ん…食券の買い方がわかんないのか? それとも万札?)
自販機では万札は使えない。
そういうときは購買のおばちゃんに両替してもらうのだ。
「サブリナ、どうした? 食べたいの決まった?」
「ハイ。B定食を大盛りで頂こうかと」
B定食の大盛り…先程言ったがB定食は女子ウケを狙ったメニュ―。
そんなこともあり、中々B定食の大盛りを注文してるのを見たことがない。
よっぽど腹ペコだったんだ。
しかし、サブリナさんは困り顔。
「どうしたの?」
「それが、先程からお金入れても戻ってきます…故障でしょうか」
ふと、オレはサブリナさんのサイフに目をやる。
あと、手元。すると……
「USドル⁉ しかも100ドル札……サブリナ。他のないの?」
「他ですか……あっ、これなんかどうでしょう?」
クレカ。
しかもプラチナカ―ド。
残念、学食でクレカ使ってるの見たことない。
オレは一か八か購買のおばちゃんに声をかけた。
「おばちゃん、USドル両替出来る?」
「ノーノー! ジャパニ―ズ エン オンリ―! あのね、ここ学生食堂なの。国際空港のタ―ミナルビルじゃないのよ、いくら私がCAさんに見えたとしても!」
ん…おばちゃんにバシばし肩が脱臼しそうなほど叩かれても、流石に苦笑いしか出ん。
オレの認識も、学食ではUSドルもプラチナカ―ドも使えん。
仕方ない……オレはサイフから千円札を取り出し、B定食大盛りのボタンを押した。
「よろしいんですか? お借りしても?」
「うん、また日本円が手に入ったら返してくれたらいいから」
その時オレは特に考えなく、サブリナさんのB定食大盛りの食券に続き、自分の分の地元B級グルメ「かつめし」大盛りを自販機で購入。
そして一枚をサブリナさんに渡した。
手渡してから気付いた。
これって一連の会話を聞いてない男子諸君からすると、サブリナさんに奢っているように見えるだろう。
更に付け加えると、物でサブリナさんを釣っているようにも見える。
どうしたことでしょう!
たった一日でアンチが増えて増えて。
穴があったら埋められそうだ。
しかも、残念なことは続く。
食堂の利用が落ち着いた時間とはいえ、なかには居座る生徒もいる。
そして空いてる席はいわく付きの物件……
そう、その角のテ―ブル席に座ったカップルは結ばれるという、伝説のテ―ブル席。
座るところがなく、まぁいいやで野郎ふたりで座って「そっち系」認定される生徒もちらほらいるという、魔の空間。
野郎ふたりでも、そんなこと言われる席なのだ。
オレがサブリナさんと座ったらどうなるかなんて、火を見るよりも明らかだ。
しかし!
「
サブリナさんは料理の載ったトレ―を伝説のテ―ブル席に置き、飛び跳ねてオレを呼ぶ。
あと、その飛び跳ねで豊かな胸元がタプンとした。
男子からのアンチ認定視線。
恋バナ好きの女子から好奇な視線……一瞬にして食堂の話題をかっ
わかってる、サブリナさんが悪いんじゃない。
悪気なんて、これっぽちもない。
しかし、それはオレも同じだからね!
男子からは無言の圧。女子のコソコソ話は「やっぱ、外国の女子って積極的〜〜」みたいな下世話な会話が漏れ聞こえた。
あっ、これか。針のむしろって。
はじめて知った。
うん、出来れば知らずに生きて行きたかった。
そんなオレの胸の内を知らずに、サブリナさんは甲斐甲斐しく、お水やお箸、スプ―ンなんかを手際よく伝説のテ―ブル席に準備してくれた。
しかも、四人掛けのテ―ブル席なのだが、明らかに配置が変。
向かい合って座るのではなく、横並び。残念ながらふたりの距離は馬鹿みたいに近い。
しかし水やらナプキンやスプ―ンやらを並べて準備してくれてる以上、そこに座らないほうが不自然。
付け加えるなら、横並びの奥に座ったオレは、ある意味コ―ナ―に追い込まれたボクサ―と変わらない。
そんなつもりはないのだろうが、サブリナさんはめちゃくちゃ近いところに座り「いただきます!」をした。
諦めたオレの鼻にサブリナさんの髪のいい匂いがした。
あと、言うべきが少し悩むがサブリナさんの横乳がオレの腕に少し当たってる……そらアンチも増えるわ~~
オレは諦めて横乳を堪能……じゃなく、かつめしを堪能することにした。
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