第6話 珍客万来

 舌なめずりをするドラゴン。


「今は、これが全てです。」

 頭を下げる園田さん。


「…分かった。

 では、約束を果たすとしよう。」

 そういうとドラゴンが一吠えする。

 すると、リサを始め、自分と眠っていた娘たちを緑色の霧が包む。


「温かい…。」

 程なくして霧がきえると、娘たちも意識が戻ってきた。

 勿論、目覚める気配はまだ無い。


 恐縮しているリサ。

「…」


 何故か動かないドラゴン。


「…あ、あのぅ、…まだ、何か?」

「他に、美味しいものは…無いの…か?」

 少し赤い顔のドラゴン。


「すいません、貴方の巨体に見合うものは…。」

「きょ、巨体っ!!」

 ドラゴンが驚くが、自分の体を眺め直す仕草をしたかと思うと、光り輝き、みるみる縮み始める。


「この身体であれば、見合うものは…有るか?」

 ミドリの髪に黒い角、赤い瞳に四肢の所々はミドリの鱗が見える全裸の少女。


「り、リサっ!制服を持ってきてくれっ!!」

「は、はいぃっ!」

 呆気にとられていたリサも我に返り車に走っていく、園田は目を覆い、少女の着替えを待つ。


 ◇ ◇ ◇


「どうしたのじゃ?妾はなにかおかしい事をしたか?」

「そ、空の王よ、これを羽織って下さい。」

 リサが少女に服を着せている音が聞こえる。


「これで…よしっ!…と。

 ソノダさん、大丈夫ですよ。」


 目を開けると、同じ制服を着たリサとドラゴン娘が並んで立っている。

 一息つき、先程まで汲み上げていた水をヤカンに入れ、カセットコンロの上に置き、火を付ける。


「お茶を準備します。今しばらくお待ち下さい。」

 お湯が沸き、カフェオレを入れた紙コップにお湯を注ぐ。

 その匂いにつられ、しっぽを振るリサとドラゴン娘。

 出来上がったものをそれぞれに手渡す。


「カフェオレです。お飲み下さい。」

「カフェオレ?」

「甘くて美味しい飲み物です。」

「ほうほう。」

 リサが飲み方などを説明し、指示に従いカフェオレを飲むドラゴン娘。


「いかがですか、空の王。」

「その仰々しい呼び名は辞めよ。

 そちたちには、妾の事をレミと呼ぶことを許そう。」


「分かりました、空の…いえ、レミ様。」

「レミで良い。敬称もいらぬ。」

 リサが答えると語気強く返し、一口でカップを平らげるレミ。


「おかわりは有るのか?」

「はい、ここに。」

 そういって、新しくカフェオレを準備し、お湯を注ぐと、嬉しそうに飲み始めるレミ。


 お茶も終わり、リサに頼んで、ネコ娘たちに服を着せてもらった。

 レミも応援に入っていた。


 後部座席の上に積んであった荷物を天井のキャリアに移動させ、縄で縛っていく。

 まぁ、カップ麺と衣類のダンボールが大半なので、縛るのに苦労はしないのだが、いっぱいに膨れ上がる。


 後部座席を起こし、ネコ娘たちを座らせ、後部ドアを閉める。


 スースーと寝ている娘たち。

 リサは助手席に乗りドアを締める。


「レミさん、お世話になりました。」

 そう言って園田が車に戻ろうとすると、服の裾を引っ張られる。


「わ、妾も旅に同行させよ。」

「は、はぁ…。しかし…。」

「同行させよっ!」

 ドスの利いた声にびっくりした園田

 あわてて運転席から離れると、レミを前席の真ん中に座らせる。


 レミが乗ってきたことに驚くリサ。

「す、すみません。

 同伴者が一名増えまして…。」

「妾も旅に同行するのじゃ。」

「は、はぁ…。」


 リサも困惑した面持ちになっている。

 これからの不安をよそに、さらに南に向かってハイ○ースは走り出す。

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