動揺☆
ジャンヌは騎馬隊を歩兵部隊の後方に下がらせ、状況をみて突撃させるよう指示を出した。
「私も馬を降りて前線で指示を出す!騎馬隊は頼んだぞ!」
「はっ!お任せ下さい!」
指揮官に騎馬隊を任せるとすぐに駆け出した。
「ぐわっ!?」
「バルド様を守れ!」
「絶対に奴らを許すな!」
レグルスは内心焦っていた。
ゴロツキの集まりと聞いていた蛮族達の忠誠心があり得ないほど高かったからだ。
「どうして!」
敵の1人が片腕を飛ばされてもレグルスにしがみつき、自分ごと殺せっ!と言ってきた。
側にいた神炎騎士団の兵のお陰で、助かったが危ない所であった。
そして、それがレグルスの心に迷いを生んでいた。
「なぜだ?なぜ、ここまで死にものぐるいで向かってくる?」
盗賊など利権関係で集まっている者達であれば、さっさと逃げ出すはずであった。
それなのに傭兵団も含めて、誰一人逃げ出さず、最後まで戦おうとする姿に違和感を覚えた。
ジャンヌがレグルスの側にくると一度間合いを取って睨み合いになった。
「何を迷っている!死にたいのか!?」
「ジャンヌ隊長…………向こうの様子が変なんです。どうして彼らは死にものぐるいで向かってくるんですか?」
ジャンヌもその違和感を感じていたが、レグルスを始め、後ろの騎士団に向かって言い放った。
「迷いを捨てろ!全ては戦に勝ってから考えろ!でなければ死ぬだけだ!!!」
ジャンヌの言葉に神炎騎士団の兵士も握った剣に力がこもった。
そこに反論する声が響いた。
「そして、何も知らない者を利用して死なせるのか?」
前に出てきた人物に視線が集中した。
「我が名はバルド!ヴァイキング国の『王』にして、バルド族の長である!」
バルド族?
レグルスは初めて聞く言葉が引っかかった。
「お前が蛮族の首領か。ならば貴様を殺せばこの戦は終わる!覚悟せよ!」
ジャンヌは剣を構えて突撃しようとしたが、レグルスが手を横に出して止めた。
「レグルス?」
「少し話をさせて下さい」
レグルスの言葉にジャンヌは顔をしかめたが、意外にもバルドから話掛けてきた。
「俺もお前と話がしたかった。お前が、神に選ばれた勇者で合っているか?名前は?」
「すでに僕の事を知っているなんて驚きました。僕はレグルスと言います」
バルドはフッと笑うと続けた。
「貴様は何の為に戦う!」
「女神様の願いに従い、大陸に散らばる『神器』を集め、邪神が引き起こしている戦乱を終わらせるためだ!」
神器という言葉にバルドが反応した。
「なるほど。神器を探しているという事は、ある程度の場所がわかると言うことか。レグルス、お前はこの【叡智の宝珠】の場所を察知して、後ろからの奇襲に気付いたのだな?」
バルドは腰の袋から白くて丸い水晶を取り出して見せた。
「そうだ。この神剣ダインスレイヴは神器に近付けば反応する。昨日の夜から段々と反応が強くなったので、神器を持つ者が近付いて来ていると気付いたんだ」
バルドはそうかと呟いた。
「レグルス、先に言っておこう。この戦乱は確かに邪神が引き起こしているものだ」
!?
「何故そう言い切れる?」
「俺も神託を受けた者だからだ」
!?
レグルスは、いやジャンヌも驚愕した。
まさか神に選ばれた者が2人も…………もしくはその他にも居るかも知れないからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます