十年間片思いしていた幼馴染に告白したら「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」と振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑫
第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑫
第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑫
「あはは!!なかなかのイケメンになってるじゃんかよ、桜井!!」
男女混合リレーのメンバーが集まる場所に行った俺を最初に出迎えてくれたのは、鷲宮の笑い声だった。
「まぁな。無料の整形手術をしてきたよ。どうだ、鷲宮。お前もやって見るか」
俺はそう言って鷲宮の前で指を鳴らす。
「冗談だよ、桜井。名誉の負傷って奴だろ。それで、走るのには問題は無いんだろ?」
「あぁ、全く問題無いな。見た目は腫れてるけど、痛みはもう無いからな」
口の中を切ったとかそう言うのも無いからな。
保健委員の世話にもならなかった。
そんな話をしていると、桐崎さんと凛音がやって来る。
「わかってるとは思うけど、この男女混合リレーのためにたくさん練習してきたんだからね。負けは許されないわよ!!」
「一年四組と学年優勝を競ってる状況だからね。このリレーの占める割合は大きいよ」
石崎くんの所属している一年四組と俺たちの二組が学年優勝を競ってる状況だ。
この勝者が優勝に大きく近づくと言っても過言では無いな。
「よう、桜井。さっきとは随分と見た目が変わったな」
そう言って石崎が笑いながら話しかけてきた。
「まぁな。名誉の負傷って奴だよ」
俺はそう言った後、彼に言葉を続けた。
「俺の嫁から君にリベンジを果たして欲しいと言われててね。かっこいいところを見せたいから、短距離走での借りは返させて貰うよ」
「面白ぇじゃん?俺もリア充にひと泡吹かせてやりたいと思ってるからな。負けるつもりはねぇぜ」
「いい勝負をしよう」
「もちろんだ」
俺と石崎はそう言って握手をしたあと別れた。
そして、桐崎さんから走る順番とポイントの再確認がされた。
「スターターは鷲宮くん。各部の俊足が揃ってるからね。ここで差をつけられなければ勝機はあるよ!!」
「一位で桐崎さんにバトンを渡してやるぜ!!」
「第二走者は私だよ!!中学時代は陸上部だったからね。経験者としての力を見せてあげるよ!!」
「第三者走者は凛音ちゃん!!ここでリードを広げて欲しいところだよね!!」
「ふん!!ぶっちぎりの一位でバトンを繋いでやるわよ!!」
「アンカーは桜井くん!!多分。各クラスで一番の俊足が集まると思う。タイムにほとんど差は無いと思うから、単純にこれまでのリードがものを言うと思うんだ」
「仮に二位とか三位。最悪のビリでバトンを受けても一位でゴールテープを切るつもりだから平気だよ」
俺はニヤリと笑いながらそう言い放った。
「ヒュー!!流石だな!!新婚野郎は言うことがデカイな!!」
「あんた!!そんな大口叩いて負けたらカッコ悪すぎだからね!!」
「あはは、君がそう言ってくれると助かるよ」
そんな会話をした後、俺たちは所定の位置へと着いた。
『さぁ!!皆さん、そろそろ時間となりました!!午後の目玉種目の男女混合リレーです!!』
グラウンドに三郷先輩の声が響き渡った。
『各クラスの俊足自慢が集まり鎬(しのぎ)を削る場所となっています!!短距離走で負けた選手が、この場でリベンジを果たすことも過去にはありました。単純に足の速さだけでは勝負が決まらない。そんな面白さがここには詰まってます!!』
……真面目な放送も出来るんだよなぁ。三郷先輩。
そんなことを思っていると、どうやらそれは思い違いだったようだった。
『短距離走で惜しくも敗れた桜井くんはこう言ってました。『嫁にかっこいい姿を期待されてるのでリベンジをしてきますよ』と。いやー!!かっこいいですね!!私も自分の彼氏にそんなことを言われてみたいものです!!』
グラウンドから笑い声が聞こえてきた。
……本当、勘弁して欲しい。
『では!!各クラスの選手の準備が整いました!!それでは、男女混合リレーのスタートです!!』
位置について……
よーい……
ドン!!
『うおおおおぉぉぉおおお!!!!!!』
『第一走者がスタートしました!!ここでは各クラスは陸上部は温存しているようですね!!ですが各部の俊足が本職にも引けを取らないスピードで走っています!!その中でも頭ひとつ抜け出したのは……一年四組だ!!』
一年でありながら野球部の代走要員として、足を期待されてる鷲宮。
そんな彼は一年四組のサッカー部の俊足FWに若干遅れての二位で桐崎さんにバトンを渡した。
バトンパスは何度も練習してきた。
この部分こそ、俺たちの強みだと言える!!
「ごめん!!あとは頼んだ!!」
「任せろ、鷲宮くん!!」
スムーズなバトンパスで一年四組を追走する桐崎さん。
中学時代は陸上部だったと言う本人の談。
その力を遺憾なく発揮していた。
しかし、相手が悪かった……
『先頭を走る一年四組を追走するのは一年二組!!スムーズなバトンパスは練習の成果が良く出てますね!!しかし生徒会長の妹、桐崎雫さんの前を走る選手は……全中で上位入賞経験のある猛者だ!!』
『
『……す、凄い人なんだ。それで戦績はどうだったのかな?』
俺の言葉に桐崎さんは苦笑いを浮かべる。
『あはは……一度も勝ったことがない……』
『ま、マジか……』
表情を曇らせる俺に、桐崎さんは笑って言う。
『でも、大丈夫!!部活は辞めてるけど、トレーニングはしてるからね!!初勝利をここで上げてくるよ!!』
そう言っていた桐崎さん。
だけど、ジリジリと差が広がり始めた時だった。
『頑張れ!!!!雫さん!!!!!!』
流の大きな声がグラウンドに木霊した。
『おおっと!!学園の王子様の弟くん。星流くんからの熱い声援が桐崎さんに向けられてるぞ!!これが勝負にどう影響が出るかな!!』
流の声援を受けた桐崎のスピードが上がる。
表情は笑みを浮かべていた。
でも少しだけ、頬が赤く染っているのが見えた。
ははは……彼女でも恥ずかしがることもあるんだな。
そして、白雪さんに追い付いたところで桐崎さんは凛音にバトンをパスした。
「ごめん凛音ちゃん!!後はよろしく!!」
「ふん!!上出来よ、桐崎さん!!」
一年四組に僅かに遅れての二位。
桐崎さんの様子を見ると、激戦を演じた白雪さんと笑顔で握手をしていた。
白雪さんから何かを提案されてるようだった。
彼女はそれに対して手を振って断っていた。
ははは。多分、陸上部に入れって言われてるのかもな。
『さぁ!!勝負も後半戦!!第三走者の出番です!!ここまでの順位は依然として一年四組がトップを走っています!!ですが後ろを走る二組もほとんど差がありません!!勝負はどちらに転んでもおかしくないぞ!!』
「勝負はアンカーに託されそうだな、桜井」
隣に居る石崎が俺にそう言って笑いかける。
「燃える展開になってきたな。負けないからな、石崎」
俺も彼からの視線から目を逸らさずに笑みを浮かべる。
『さぁ!!男女混合リレーもクライマックス!!アンカーにバトンが渡される!!』
バトンパスをする場所に、凛音が駆け込んでくる。
一年四組との差は全く無い。
僅かに負けていた部分を、こいつの俊足が埋めた形だ。
「負けたら承知しないわよ!!霧都!!」
「任せろ、凛音!!」
十年来の幼馴染からのバトンパス。
息が乱れるなんてことはありえない。
他のクラスの誰よりもスムーズなバトンパスで俺は走り出す。
だが、隣を走る石崎くんも、陸上部としての経験値でそれを埋めてきた。
バトンパスの精度は互角。あとは単純に俺と彼との走力の勝負だ!!
「うおおおおぉぉぉおおお!!!!!」
「負けるかぁああああああああぁぁぁ!!!!!」
『さぁ!!男女混合リレーも大詰めだ!!ラストは一年四組と二組の一騎打ち!!奇しくも男子短距離走と同じ戦いの形になったぞ!!』
ほぼ互角の争いをする俺と石崎。
ぶつかり合う肩と肩。まもなくカーブが見える。
ここでの位置取りが勝負の分かれ目だ!!
『頑張ってください!!霧都!!!!!』
勝利の女神からの声援が俺の耳に届く。
嫁が見てる!!期待に応えない訳には行かない!!
誰よりもかっこいい姿を、彼女に見せるんだ!!
限界を超えて、俺は足を回す。
そして、石崎の前に身体半分ほどを出す。
『おおっと!!ここで遂に順位が入れ替わったぞ!!一年二組が四組を抜いたああああああああぁぁぁ!!!!!』
『うおおおおぉぉぉおおおぉぉおおお!!!!』
俺のクラスから歓声が聞こえる。
だが、俺は油断しない!!
絶対に石崎は諦めない!!
最後の最後まで足を緩めるな、限界を越えろ!!
そして、俺は自身の力を最後まで振り絞り…………
『ゴーーール!!!!!!最初にゴールテープを切ったのは!!!!!!』
『一年二組の桜井霧都くんです!!!!!』
ゴールテープを一番に切った俺の耳に、三郷先輩の声が届いた。
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