第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑪

 第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑪







「それじゃあ根岸先生に事情を話しに行こうか」

「そうね。そろそろ男女混合リレーも始まってしまうわ」


 体育館の裏へを後にした俺たち三人は、先生が居るテントへと向かっていた。


「お二人ともありがとうございました。とても助かりました」

「別に気にする事はないわよ、永久。悪いのは全部あのクズ野郎二人よ」

「そうだな。ただ、凛音のボイスレコーダーには助けられたよ。あれが無かったら証拠が足りなかったかもしれないからな」


 俺がそう言うと、凛音は少しだけ笑いながら言ってきた。


「あらそう?だったら霧都から『お礼』をしてもらおうかしらね」

「お、お礼かよ……何をしろって言うんだよ」


 俺がそう言うと、凛音は少しだけ意外なことを言ってきた。


「体育祭が終わったらいつものメンバーで打ち上げをしましょう?その時の私と永久の代金はあんたもちよ」

「打ち上げをするのは良いですね!!今から楽しみです。ですが、私の代金も持ってもらうのはちょっと申し訳ない気が……」

「前も言ったけど、お金を男に払わせるのは女の特権よ。素直にありがとうって言っておきなさい」


 凛音のその言葉に、永久は少しだけ苦笑いを浮かべる。

 まぁ、凛音はともかくとして、永久の代金くらいは払うつもりだったしね。


「親父から留守にしてて悪かったなって臨時でお金を貰ったからな。まぁ懐には余裕があるから、俺としては構わないよ」


 てかいつものメンバーってなると、この三人に桐崎さんと流が加わる形かな。

 き、桐崎さんの苦労が目に見える気がする……


 そんな話をしていると、先生たちが集まっているテントに辿り着く。


 そこには根岸先生と、桐崎さんと流が居た。


 根岸先生は俺の顔を見て、少しだけ笑っていた。


「笑ってはいけないんだろうが、すまない桜井。去年の桐崎と全く同じことが起きているからな」

「自分もそう思いました。まぁ自分で撒いた種なので甘んじて受けいれますよ」


「それで、桐崎から忠告はされてたと思うが、お前から手を出してはいないな?」

「当然です。俺から手を出すことも無ければ、向こうに言葉以外のものをぶつけてもいません」


「それなら構わない。それで、お前を殴った人間は誰だ?」


 そういう根岸先生に、俺はスマホで撮った二人の生徒の写真を見せる。


「体操服の色から同学年と言うことがわかりました。彼らの言葉から、永久の中学時代の同級生のようです。彼らは中学時代から彼女に迷惑をかけていたようです」


『永久さんファンクラブ』なんて名前の組織を勝手に作って、本人の意向を無視して存続していた。なんて迷惑行為も甚だしい。


「そして、彼らとの会話は凛音が常日頃から持ってるボイスレコーダーで録音しています。終始暴言を吐いていたのは彼らかと思いますが、第三者の判断を仰ぎたいですね」


 俺がそう言い終えると、根岸先生は真剣な表情で首を縦に振った。


「この生徒二人に関しては厳正に処分を下すとしよう。その点に関しては私の責任でしっかりと行う。退学にはならないが、停学の処分にはなるだろう」

「でしょうね」


 桐崎先輩を殴った生徒と同じ処分だな。


「ただ、次同じことをしたら退学にする。という話を二人にはする予定だ。でなければ不当な逆恨みをされる可能性が高いからな。暴力行為で停学なら構わない。などと思われても困る」

「なるほど。配慮してもらいありがとうございます」


 俺はそう言って根岸先生に頭を下げる。


「そして桜井と北島。桐崎と星。この四人には『罰』を与えなければならないな」

「「「「……え?」」」」


 な、なんで俺たちにも罰が与えられなきゃならないんだ!?


 少しだけ驚いた表情の俺たち四人に、根岸先生は笑いながら話をした。


「体育祭を私物化して結婚式なんてものを挙げたんだ。反省文の一枚くらいは書いてもらおうか。そしてそれは一週間、教室の外に張り出すことにする」


「そ、それはかなりの辱めですね……」


「当然じゃないかしら?反省文で済んで良かったと思うべきよ」


 俺の言葉に、凛音は呆れたようにそう言っていた。


「それでは引き続き体育祭に励みなさい。男女混合リレーでは皆の活躍を期待しているぞ」

「はい!!」


 根岸先生はそう言うと、校長先生と教頭先生の居る所へ向かって行った。




「あはは……確かにあの場で結婚式はやりすぎだったかもしれないね」


 先生たちが集まっているテントから離れ、自分のクラスの場所へと戻る途中。桐崎さんが少しだけ笑いながらそう言っていた。


「俺はかなり恥ずかしかったよ……明兄さんには『流もやるようになったな!!』って喜んで貰えてたけど……」

「私のわがままに付き合ってもらった二人には感謝しかありません」

「俺にとってはかなりのサプライズだったけどね……」


 そして、俺は四人から別れて放送席の方へと向かう。


「じゃあ俺は放送席に戻るね。男女混合リレーではアンカーとしての役割を果たせるように頑張るよ」

「はい!!期待してますね」

「ふん!!私と桐崎さんでリードを広げておくわよ。鷲宮とあんたでそのリードを守ってくれば勝てるわよ」


 薄い胸をそらせてそういう凛音に、俺は笑いながら言葉を返す。


「ははは!!コート上の小悪魔の力を見せてくれよな!!」

「あ、あんたねぇ!!それを言うのは許さないわよ!!」


 ブチギレる凛音から逃げるように、俺は走って放送席へと向かった。



「お疲れ様。桜井くん。イケメンになって帰ってきたね!!」


 放送席の三郷先輩は腫れ上がった俺の顔を見て笑いながらそう言った。


「名誉の負傷と言うやつですね。実況を任せてしまってすみません」


 俺がそう言って三郷先輩に頭を下げると、先輩は気にすることはないよ。と言ってくれた。


「さて、次は男女混合リレーだね!!君の出番だからまたしても私は独りで実況だ!!」

「あはは、すみません」


「お昼の時間に石崎くんが桐崎くんにかなり弟自慢をしてたからね。桜井くんがリベンジをしないと、桐崎くんから言われちゃいそうだね」

「そうですね。もう発破はかけられてますよ。俺としても嫁から期待されてるので頑張りたいところです」


「なるほどね!!じゃあ頑張ってきてね、桜井くん。君の活躍を私が華麗に実況してあげるからね!!」

「あはは……期待してます」


 一体何を言われるのか不安だけど、気にしないで行こう。


 俺はそう思いながら、男女混合リレーのメンバーの集まる場所へと向かった。

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