永久side ②

 永久side ②






「おやすみ。永久さん」

「はい。おやすみなさい、霧都くん」



 オレンジ色の光に照らされて、霧都くんが私にそう言いました。


 目を閉じる彼。少しすると、疲れていたのですね。

 すぐに寝息が聞こえてきました。




「…………霧都くん、好きです」

「うん。俺も好きだよ……」


 深い……深いキスの後。私と彼はひとつになれると思っていました。


 ですが、彼から言われた言葉は私の求めていたものとは違いました。


「でも、今はしない」


 はっきりと告げられた『拒絶』の言葉。


「ねぇ、永久さん。何か『焦って』無いかな?」


 そして、見抜かれた私の心の内側。そう、私は焦っていました。南野凛音さんが、彼に対してアプローチをかけるということに対して。


 まだまだ全然諦めていない。ということに対して。


 彼が未だに彼女を『凛音』と呼ぶ度に、私の心はざわつきます。


 霧都くんの心にもう、彼女は居ません。


 ですが、過ごしてきた過去は消せません。


 幼馴染だったこと、初恋だったこと、そんな事は一生忘れられません。


 だからこそ、刺激的な今で過去を塗りつぶすしか手は無いんです。


『常に先手を取りなさい』


 黒瀬先輩に言われた言葉。これは実体験に基づく言葉。


『たった一度だけ』


 黒瀬先輩は藤崎先輩に対して先手を取れたんです。


 正妻に対して上げたその一勝があるからこそ、先輩は戦えているんです。


 そして、私は南野さんにその一勝を渡す訳には行きません。


 私は勝ち続けなければなりません。


 彼女に先手をひとつでも許した瞬間。私は負けてしまうでしょう。


 そういう確信があります。


 だって……


「貴方の心の奥底には……まだ南野さんが眠っています」


 私は眠っている彼の顔を見ながらそう呟きました。


 私は知ってる。まだ貴方が南野凛音さんに対して想いを持ってることを。


 私は知ってる。それでも貴方は私を選んでくれたことを。


 私は知ってる……



「一度眠った貴方は……『多少の出来事』では起きないことを」



『ちなみにですが、悠斗くんの『性処理』を先にしたのはこの私です』



 黒瀬先輩の言葉が思い出されます。


『性処理』


 セックスでは無いけど、彼から『性』を受け取る行為。


『口』や『手』や『胸』とかで彼に御奉仕をする行為。


 南野さんには絶対に出来ないことを……私は出来ます。


「霧都くん……好き……」


 私は眠っている彼に深くキスをします。


 そう。この程度では起きないことはわかっています。


「好き……好き……好き……」


 舌を入れ、霧都くんの味を楽しみます。


 ふふふ……貴方が悪いんですよ……私を拒絶するから……


 貴方が悪いんですよ……こんなにも私を好きにさせてしまったから……


 貴方が悪いんですよ……こんなにも……こんなにも……こんなにも……


「ほら。貴方の身体だって……私を求めてくれている……」


 唇を離した私は、彼の一部分を見て確かな幸せな気持ちになりました。


 口では拒絶をしてましたけど、身体では私を求めてくれている……


 理性では無く、本能の部分。彼は私を求めてくれている。


「…………貴方の初めては全部私のモノです。誰にだって渡しません。だって……私は貴方の全てが欲しいから……」


 あぁ……熱い……彼のソレに触れる度に、その熱に、存在に、私の心が犯されます。


 本当なら、ソレで私の内側をかき混ぜてもらえる予定でした。


 ですがそれが叶わないなら……予定を変えましょう。


「……霧都くんの『性』は私が貰いますね」


 彼の下半身の衣類を、起こさないようにして脱がします。


 私の目の前に、本でしか見た事がないソレが姿を現します。


 あぁ……こんなにも大きくて、立派で……欲しい……欲しい……欲しい……欲しい……


 でも今は我慢……私の『初めて』は貴方が寝ているときに『捧げる』ものではありません。


 私の『初めて』は貴方に『奪って』貰うもの。


 それが叶わないなら、せめて貴方の性は貰います。


 南野さんには一滴たりとも渡しません。




「……ふふふ。朝までに『何回』貴方からいただけるのでしょうかね」



 まずは『口』で貴方を感じさせてくださいね……






 私は朝までの間。彼からたくさんの『愛』を受け取りました。


 あぁ……とても……とても……とても……


 熱くて……甘くて……私は心の底から……満足を得ました。


 でも……ダメです。私の『本能』の部分が叫びます。


 ……こんなんじゃまだ……まだ……まだ……全然……


 足りません……足りません……足りません……


 あぁ……もっと……もっと……貴方が欲しい……


 口ではなく身体の内側で……


 貴方の愛を……感じさせてくださいね?



 ふふふ……愛してます……霧都くん……

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