最終話 ~過去との決別・桜井霧都は北島永久を心の底から愛しています~ 後編

 最終話 後編





「桜井霧都は北島永久を心の底から愛しています。俺の恋人になってください」



 俺のその言葉に、永久さん目を伏せた。


「最初。この公園に来た時から私は、あなたから言われる言葉が何かが、ある程度はわかっていました」

「だろうね」


「まさか、昔話をされるとは思ってもいませんでしたが」

「君には俺の全てを知っていてもらいたかった」


 俺のその言葉に、永久さんは小さく息を吐く。

 そして、強い目で俺を見ながら、彼女は問掛ける。


「もう、南野さんのことは好きじゃないと、胸を張って言えますか」

「もう南野凛音を好きな気持ちは微塵も無い。俺の心は100パーセント君で占められてるよ」


 俺のその言葉を聞いた永久さん目が……昏く澱む。


「私は……愛が重い女です。浮気なんかしたら、貴方を刺しますよ?それでも良いですか」

「浮気なんかしないよ。でもそうだね、君に殺されるなら本望だよ」


 永久さんの視線から逃げずに、俺はそう答える。


 そして、彼女は目を伏せた。


「……信じます」

「……ありがとう」


 目を開いた彼女は俺の目をしっかりと見据え、言う。


「桜井霧都くん」

「はい」


「北島永久は桜井霧都くんを心の底から愛しています」

「桜井霧都は北島永久を心の底から愛しています」


 俺と永久さんはそう言うと、お互いを抱きしめた。


 永久さんの柔らかさを全身で感じる。少しだけ彼女の身体が震えていた。


「好きです……好きです……好きです……」

「うん。俺もだよ、永久さん……」


 永久さんが、俺の胸に顔を埋める。


「不安でした……いつ言葉にしてくれるのか……ずっと……ずっと……ずっと……」

「ごめんね、待たせちゃって……」


 その言葉に、永久さんは顔を上げて俺を見る。

 その瞳は、涙で濡れていた。


「キスしてください」

「うん。俺も君としたい」


 彼女を抱き寄せて、俺と永久さんは唇を重ね合う。


 涙で濡れた彼女の唇はとても甘く、そして柔らかかった。


 どちらともなく唇を離すと……俺たちは笑いあった。



「照れますね……」

「うん。でも嬉しいかな」


 そんな甘い時間が流れる中、一瞬だけ、永久さんの目に驚きの色が浮かんだ。


「……え?永久さん、どうしたの」


 俺の後ろかな?

 そう思って振り向こうとすると、


「ダメです……っ!!」

「永久さ……っ!!」


 焦ったような彼女の声。俺が後ろを振り向くの両手で阻止する。


 そして、俺の唇を自分の唇でふさぐ。


 二回目のキス。


 それは一度目と違い、深く彼女を感じるキス……


 舌と舌を絡め合う。


 思い出の公園に、男と女が舌と唾液を絡める音が響く。


 俺は目を閉じ、彼女を感じる。


 もう、後ろのこととか、永久さんの目の色のこととか、どうでも良くなっていた。


 彼女を愛している。もう絶対に手放さない。


 俺は……この人を幸せにするんだ。


 そう決意して、唇を離す。


「永久さん……愛してるよ」


「はい……霧都くん。私もあなたを愛してます」



 愛の言葉に答えてくれた彼女の瞳の奥に、仄暗い色を見たのはきっと俺の気のせいだな。


 ……そう、思うことにした。






 最終話 ~過去との決別・桜井霧都は北島永久を心の底から愛しています~ 後編



 ~完~

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