半分だけの月

華ノ月

第1話 「私」と「彼」

私は窓を開けて夜の月を眺めました。

手を伸ばします。

そして、そっと呟いきました。


「なんで、居なくなちゃったの・・・?」


私はもう居ない「彼」に問いかけてみました。

でも、返事はありません。


主治医は時期がきて融合したと言っていました。

でも、私には居なくなってしまったような感覚が抜けなかったのです・・・。


私は生まれつき「高機能広汎性発達障害」という障害を持って生まれてきました。

それが分かったのは私が二十歳くらいの時です。

ある出来事がきっかけで病院に受信して検査をしたら、その障害だと分かりました。


私はその時、正直安堵しました。


「だから、私は皆と違っていたんだ・・・」


障害が判明して、今までの違和感がすべて解消されたのです。

それまでは、どうして私はこんなにも周りと違うのか、ということにすごく苦しんできました。

子供の頃は周りと違うというだけでよく虐めを受けていました。


そんな時、「彼」がよく精神世界の中で慰めてくれたのです。


「ユウナは全然悪くないよ!悪いのは虐める奴らなんだから!」


「彼」はそう言って私の頭を撫でて励ましてくれた。

もし、「彼」がいなかったら私は自分で自分を殺していたかもしれません。

毎日のいじめに耐えきれずに「死」を選んでいたのかもしれません。


「彼」は私の中にいました。

気付いたら私の心の中に自然にいたのでした。


私はそれが分かった時に、不思議と驚きはありませんでした。

むしろ、とても自然で当たり前のことに思えたのです。


私は「彼」に「ユウヤ」と名付けました。

ユウヤはその名前をとても気に入ってくれました。

ユウヤは私にとって、いつも心の支えのなってくれました。


誰にも分かってもらえない・・・。

「変わり者」というだけでからかわれ虐められる日々・・・。

どんなにつらくてもユウヤだけは私を理解してくれて分かってくれました。


とても大切で大好きな存在でした。

恋愛とかそういう簡単なものではない「好き」がそこにはあったのです。


ここで、私の障害の特徴を話していこうと思います。


私は記憶力の面でとても優れています。

周りから「良くそこまで覚えているね」と言われるくらいです。

一見、記憶力が良いのは「良いこと」だと思われがちです。


でも、私はその記憶力が良すぎるあまり、ずいぶん昔の過去の記憶も覚えています。

それも、そのことを思い出すとその時の五感もすべて思い出してしまうのです。


それ故に、辛い記憶を思い出すとその時の痛みまで蘇り、苦しみ、涙を流してしまいます。


私はこの記憶力が良すぎることによく憎しみを抱くことがあります。

もし、ここまで記憶力が良くなければこんなに苦しむことは無かったのではないかと感じます。

障害ゆえの記憶力の良さと、感覚過敏が時には私の心を締め付けるように苦しませるのです。


「もう、生きていたくない・・・」


そう思ったことが何度あったでしょうか・・・。

私の苦しみは私にしか分かりません。

よく両親が言っていた言葉がありました。


「あなたが苦しいのはよく分かるけど・・・・」


その言葉を聞くたびに私は苛立ちを感じました。


「私の辛さが「親」というだけでなんで分かるの?」


「私のこの苦しみは私にしか分からない」


「親と言うだけで分かったような口を利かないで!」


それが私の本音でした。


唯一、私の「本当の気持ち」を理解できるのはユウヤだけでした。


ここでは「私」と「ユウヤ」が一緒になって歩んできた記録を振り返りながら書いていこうと思います。


どうか、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


よろしくお願いいたします。

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