『幽霊派遣庁』

やましん(テンパー)

『幽霊派遣庁』 

『これは、フィクションです。歴史的に知られる事例、あるいは、各地域に知られる事例、を除いて、全て、創作であり、事実ではありません。』

      ・

         👻



 ぼくは、幽霊派遣庁の若手エリートであります。


 エリートと言っても、職員全部で100幽霊の、弱小官庁ですけどね。


 各種の公的な、あるいは、私立の、天国と地獄が共同出資している、半官半民みたいな官庁です。


 幽霊派遣庁は、登録してきた幽霊さんを、現世に派遣し、生きている人間さんに、警告を発したり、単に脅かしたり、ときには、復讐のための暗殺、をしたりという、危険な仕事ももちろんありますが、全体的には、お墓参りに来てほしいとか、生前のお礼がしたいとか、忘れないでいてほしいための、アピールをしてほしい、とか、割合に、ポジティブな依頼が七割くらいあります。


 そこで、大きくみっつの部門があります。



 まず、生活改善班。


 主に、生前のお礼がしたいとか、落ち込んでる所縁のある人を励ましたいとか、ピンチを救いたいとか、の依頼に対する仕事ですが、中には、大切な人に緊急な危機が迫ったという、至急の対応もありまして、これは、たとえば、妹に交通事故が数分後に起こるとか、強盗に狙われてるとか、自殺しそうだ、とか、まあそうしたようなものです。


 現れる場所、タイミングなど、非常に難しいテクニックが必要になります。


 もちろん、一般的な生活で、かつての恋人が、仕事を追われて、困っている場合とか、そうした長期的な支援もあります。


 なまけてるから、ちょっとだけ、おしりを叩くなんてのも、ここの担当です。


 次に、通常復讐班。


 文字通り、生前の恨みに対して、一定の範囲を越えないレベルの復讐をします。


 一定の範囲を越えないレベル。というのが大切で、相手に肉体的な危害を加えるのは、原則禁止です。


 3つ目が、一番、危険で、問題が多いものです。つまり、相手に、再起不能か、それに近いダメージを与える復讐などをします。


 強行復讐班であります。


 これは、さすがに、慎重を要すため、特別審査委員会に諮って、許可される必要があります。


 でも、そう、簡単には、許可されません。


 だから、幽霊の、呪いではないか、と言われるような危機的現象の、90%は、たまたまの場合、つまり、自然の確率的な現象や、あくまで、人為的なもの、本人の幻想、であります。 

   

 残り10%に、我々が関与しているものと、さらに、関与していないのに、起こってしまう呪い、つまり、独立型の掟破りの復讐があります。これにも、強力な個人幽霊が行う場合と、なんらかの組織、支援者がある場合とがあります。


 実は、これが、問題になっているのです。


 といいますのが、違法に復讐業をやってる、幽霊組織が現れているからです。


 彼らは、なんでも、やります。


 我々は、料金表に基づき、リーズナブルかつ、安心安全な、公的な費用として、一括または、分割徴収いたします。天国地獄銀行からの分割引き去りもかのうです。


 しかし、彼らは、あるんだかないんだか、分からない、独自の料金体系により、一括、現金即納を求めます。


 現世のテレビや小説の、影響かもしれません。


 その正体は、幽霊警察庁がおいかけておりますが、まだ、漠然としたままです。


 では、このあと、まずは、実例をいくつか、ご紹介しましょう。

         


 


 

 

 

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