私のためのカップケーキ

夢色ガラス

短編 完結

「ただいまぁ。」

中学生の姉にそう言ってから、真帆は自室へ行った。

小学一年生の真帆は学校から帰って、疲れ果てていた。ランドセルを脱ぎ捨て、お気に入りの本を読む。それがいつもの真帆の日課だった。好きなことは妄想。想像力が豊かなのが真帆の自慢だ。自室へ入ると…。ふわりと漂う甘い匂い。いつもだったら紙のにおいがするが、今日は違った。

「いい香り!」

真帆はいい香りがした方へ歩いて行った。…机の上に、真帆の手のひらサイズのカップケーキが置いてあった。

「おいしそう!食べていいのかな!やったぁ。」

おなかがすいていた真帆は、机に手を伸ばした。

「いっただきまーす!」

食べることは大好き。真帆はそれを口の近くにもっていった。そして、嬉しそうに笑った。

「もしかしたら、神様が、真帆にこれをくれたのかも!」

想像力が豊かな真帆は、心の中でありがとうと言った。

「神様が、魔法で幸せを入れてくれたんだ!魔法の森のくまさんと、うさぎさんとお話しして、雪合戦をしたいなぁ!」

真帆はにこっと笑ってかじろうとした。…が。

「神様が、真帆のことを怒って、嫌いになっちゃたのかも!中には悪魔が入っていて、真帆を地獄に送っちゃったりしたら、どうしよう!」

怖くなってカップケーキを口から離す。

「毒とか、石とかが入っているかも…!!!」

真帆はそれを見つめ、考え込んだ。

「だって、もしこれが神様のものだったら、食べなかったら失礼だよぅ!」

もう泣きそうだ。真帆は頭を抱えて、おなかがすいたのも忘れて考えた。

すると。

「真帆。さっき、カップケーキ作ったんだけど、食べた~?」

真帆の姉がドアを開けて、そう言った。

                   <おしまい>

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