第44話最終話
色気駄々漏れのパーシヴァル様は、立ち上がって私の前で片膝をついた。
おとぎ話の王子様のような姿にきゅん死寸前だ。
顔をあげたパーシヴァル様はさっきまでとうってかわって急に真面目で真剣な顔になったから、私もきちんと座り直す。
「エスメラルダ、貴方を愛している。
私の愛と忠誠を貴女に捧げ、この命ある限り私の全てをかけて生涯貴方を守り抜くと誓う。
私と結婚して欲しい。」
私は迷うことなく頷いた。
推しのプロポーズなんて断れる訳がない。もし断ったなら、一生魘うなされて眠れなくなるに違いない。
「パーシヴァル様の愛を受け取ります。先程の誓いの言葉を生涯かけて一言一句違える事なく誓い続けてくれますか?」
「エスメラルダ、もちろんだ。君を愛している。」
言質は取ったぞ、パーシヴァル・マッキンリー。
彼は有言実行の人だ。一度口に出した事は絶対に守る。
故に、出来ない事は絶対に口にしない。
しかし、念には念を入れておこうではないか。
私は、書庫を漁って執念で見つけ出したアメリア女王の日記に書かれてあった誓約の呪文を発動した。
誓約の呪文の発動条件は相手からの自分への『愛』の一言。
漫画のパーシヴァル様は女王に愛と忠誠を捧げていた。でも、主人公ダリアと出会った彼の誓いの言葉からは『愛』の一文字が消えた。
たった一言、されどそれは大きな一言だ。
だから悪用して誓約してみようかな、なーんて悪いことは考えてなどおりませんでしたとも。はい…。
「私エスメラルダは、パーシヴァル様の愛と誓いの言葉を礎として、私の一生涯をかけて、お互いを愛し、助け、守り合う事を互いの魔力に賭けて誓います。」
互いの魔力が複雑に絡み付いて混じり合うのがわかる。お互いの身体が青白く発光して誓約が発動したのがわかった。
「エスメラルダ…。」
呆然と佇んでいたパーシヴァル様が我に帰ったように
私をその胸にがっちりと抱きしめた。
パーシヴァル様ごめん。
騙し討ちのように誓約しちゃった。
でも、これで念願のパーシヴァル様生配信が可能になった。いつでも、お互いを見放題だわ。
って、あれ?私も見られちゃいます?
あ、ヤバいかも。
恥ずかしすぎなんですが、パーシヴァル様は紳士なので、見たりなんてしないよね。大丈夫な筈…。
ということで、無事誓約でがっちりしばった事だし、疑問点を解決していくか。
「パーシヴァル様、戦争が終わったから私の事を考えていただけたのですか?」
去年の私の逆プロポーズはどう思っていたんだろう。
「去年は、戦争中で無事帰れるかもわからなかったし、あなたが王女となり、ゆくゆくは女王となられると聞いて動揺していた。」
パーシヴァル様でも、動揺するんだ。
「戦争は終結したし、きちんと功績も残せた。国王と宰相、アルバート王太子にも求婚の了承は取り付けた。」
先程の長いお父様達との会議でそんなこと話していたのね。
「私にはガリアだけでなく、ランス、イスパニア、ロマノフの王位継承権がある。
貴女との結婚の為に障害となるランス以外の全ての王位継承権を放棄する。
ガリア国籍を捨てランス国籍だけを遺す。この条件でならと了承をもらった。」
漫画のパーシヴァル様は旧ガリアの王族であることと、その血に流れる複数の王家の血に誇りを持っていた。
その誇りを棄てる覚悟を決めた上で私に求婚してくれていたんだ。
なのに私は、姑息にも騙し討ちで誓約し束縛した。自分のしでかしたことに大きな罪悪感を覚える。
「エスメラルダは迷うことなく独断で私の求婚を受け入れくれたね。」
「はい。」
当たり前です。いざとなったら、パーシヴァル様と愛の逃避行するつもりでしたわ。
「嬉しかった。あなたも私の為に全てを棄てる覚悟があるとわかって。あまつさえ、あなたの誓約には胸を締め付けられるくらい嬉しかった。」
パーシヴァル様、私はあなたの胸だけでなく全身を魔力で締め上げて縛りましたよ。その感触を喜びと誤認しているのでは?
まあ、パーシヴァル様がいいなら、一生騙されて貰いましょう。
私は美しくしたたかな当て馬なのですから。
了
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