第36話議会
イスパニア優勢のまま戦況はじりじりと悪化していく。王太子亡命の一報も、戦況を悪化させていた。
イスパニアに強い魔力を持つ魔術師がいるのだ。王太子参戦に希望を託していた者達の落胆が大きかった。
父が王太子になったものの魔力を持たない。そして国王は病に倒れた。国民の不安感は増していった。
私はあの日パーシヴァル様やお父様達と相談していた作戦をとることにした。
議会に見習いとして出向く。病気の国王の代理として国王の席についた父の隣の席についた。
突然国の未来を背負う事になった私に、同情するものは多く敵意を感じる事はなかった。
議会の様子は全国民へ生配信される。
どういう仕組みなのかはわからないが、400年前アメリア女王が構築したシステムだそうだ。
私、アメリア女王と気が合いそうだわ。
だって、生配信なんて、毎日推しの活動を見続けられる素敵なシステム欲しいに決まってるじゃない。
生きていたら絶対パーシヴァル様を24時間生配信できるシステムを作るわ。
あれ?アメリア女王って旦那様である王配の一日の出来事を事細かく把握していたって伝説があるけど…。
遺伝って怖いわね。
私も子孫として魔力を有効に活用しなきゃ。
お父様が立ち上がり開会の辞を述べた。
お父様が私に目配せする。
今だ。
私は立ち上がり、先程父上が話していたマイクみたいなものの前に立つ。
「我が国は今、史上最大の国難に見舞われています。
私たち全員が揺るぎない信念と勇気を持って前進すれば、我が国を守りぬき平和で豊かなランスを取り戻すことができるでしょう。」
ここで議場を見回した。宰相が根回ししてくれていたのかしら?皆、真剣に見てくれている。大丈夫。私やれば出来る子ですから。
かつてアメリア女王が使ったとされる氷の槍を作る。資料館にあるレプリカを寸分違わず作成する。今の私は3Dプリンターだ。この技、推し活に使えそうね。
私の手の中に顕れた氷の槍にどよめきが走った。
私は演説を再開した。
「私はここに私の全生涯をランスの為に捧げることを宣言します。本日、私は将来の王室を担うものとして戦地へ赴きます。」
氷の槍を天井に掲げる。
ウォー
議会から地響きのような、雄叫びが響いた。
老宰相が立ち上がり拳を突き上げている。
この狸。
お前もこのサプライズ計画の黒幕の一人のくせに何涙を流しながら、感動したように振る舞ってるんだ。
まあ、このパフォーマンスで少しでも志気が揚がってくれたら、助かるな。
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