第34話見送り

パーシヴァル様は、休暇を終えて戦地に戻られた。


王女となるからには、軽率な行いは慎まねばならない。


 見送りすら行く事は叶わなかった。



 元ガリア王族のパーシヴァル様は外国籍だ。


平常時であっても、外国籍の彼と次期女王が結ばれる事はないだろう。ましてや今は戦時下だ。



 彼の活躍を間近で見ることができるのだから、それで満足だ。


 彼は可能な限り手紙をくれた。


ある時、私の贈ったハンカチの返礼として届いた写真が髭がモジャモジャで、数週間漂流したような誰だかわからない顔でわらってしまった。



戦況は厳しいのだろうか?



 私の部屋の片隅にある、推しグッズ広場の一番目立つところにもじゃもじゃパーシヴァル様を置く。


 もしや、もじゃもじゃになったら、私が諦めると思って、もじゃもじゃ写真を送ってきたなんてそんなことは無いよな。



 いやいや、もじゃもじゃしていても、パーシヴァル様はパーシヴァル様。私が嫌いになるはずはないではないか。


 うーん。それならば、私も先日慰問で披露した男装のポートレートを入れて送ろうではないか!


 せっせと刺繍したハンカチと共に封をする。



 分厚く膨らんだそれを家庭教師のマリー先生に渡した。もう慣れたのかすんなり受け取ったマリー先生は素早く持っていた袋に証拠隠滅するようにいれた。


 無言の能面マリー先生は、重い溜め息と共にずっしりと重いその袋を引きずるように部屋から出た。


 もしや、ミランダからも重い封筒貰いました?





 ミランダは、綺麗なルックスのジャンのポートレートを貰ってご機嫌である。


 ん?お髭剃る余裕あったんじゃない?


なんでー。私も、綺麗なパーシヴァル様のポートレート欲しいよ。



 ジャンめ、流石は当て馬キャラ。読者にこっちの方が素敵と思わせることにかけては天才的だな。



 漫画でも、主人公ダリアをよろめかせていたな。


だが、生粋のパーシヴァル様推しの私にとって、もじゃもじゃかもじゃもじゃでないかなど、大したことではないのだよ。ふふん。



 このポートレートすらレアアイテムとして愛せる。


私の推しへの愛は揺るぎないものなのだよ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る