GENDER
海藍
第1話 型
家を出る前に、鏡を見た。
ミディアムカットの毛先がうねった黒髪、ぱっとしない表情を浮かべた女っぽい顔が映っている。
暗い色を基調としたブレザーに、真っ白のブラウスと真っ赤なリボン。いかにも女子中学生らしい雰囲気を醸し出している。
そんな鏡に映った僕自身を、僕は睨みつけた。
女は女らしく、男は男らしく。
その型にはまらないものは異端者とみなして差別するという考え方が昔から存在していた。
現代社会においてその考え方は否定され、ジェンダーレスと呼ばれる考え方が受け入れられるようになってきていた。
とはいえ、そういった考えは新しく、そして画期的なものであるため、なかなか受け入れがたいことだった。
中学校。
これはそのうちの一つ。
男女によって制服が分けられている。男女によって。
基準は女か男か。それ以外は認められない。
男でもない、女でもない。そういった人間は中性や無性といった分類に属する。
その中性や無性の人間は戸籍上の性別で分類し、統一していた。
僕にとってそういう風に分類されるのは苦痛だった。
自分が自分でなくなるような気がしていた。
女らしくスカートを履き、リボンをつける。ズボンは論外。
その型にはまれないものは生徒指導を受ける。場合によっては親も学校に呼び出される始末。
さらには、これ以上型破りをする生徒を出さないようにするため、実際にあった出来事に恥などの要素をつけ足して生徒に晒す。
普段からも生徒を型にはまらせ、同調圧力による抑制も行っている。
そんな学校での生活は苦しい。
僕の分類は無性。いわゆる、「性別の概念を持たない人」をさす。
そんな僕は「戸籍上は女」という理由で女として生活することを強いられる。
女らしく。
女らしく。
その型から抜け出そうとしない女の姿をした僕。
僕は鏡を睨んだまま、鏡を殴った。
そして僕は、家を出た。
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