第120話 ゲーム対決
「じゃあ、ゲーム対決していこうか」
「お、押忍!!」
押忍……?
そんな謎の気合いを入れるリリスとの、ゲーム対決が始まる。
今回コラボ対決するゲームは、様々な定番ゲームがパッケージング化されたもので、これからお互いに良いところが見せられるゲームがきっと見つかるだろうということで選ばせて貰った。
というわけで、まず初めはリバーシ対決。
みんなご存じの、白と黒の石をひっくり返し合い最終的な数を競う定番ゲームだ。
「じゃあ、リリスからどうぞ」
「押忍!」
謎の気合い十分のリリスは、さっそく石をひっくり返す。
ちなみに先行のリリスが黒で、後攻の俺が白だ。
まぁ石を奪い合うだけなのだが、このゲームの初歩的なコツとして序盤はあまり多くの石を取らない方がいい。
しかしリリスは、一番多くひっくり返せる箇所を見つけては、それはもう嬉しそうに石をひっくり返していく。
「あれあれー? アーサー様、大丈夫ですかー?」
そして、盤面が黒だらけになるとすっかり勝ち誇るリリス。
その様子に、コメント欄もお察しムードになる。
「じゃあ、ここで! ふふふ、もうほとんど白ないですよぉ? 勝負ありかなぁ~!」
そしてリリスは、完全に勝ち誇りながら角の手前に石を置く。
「そうだなぁ、じゃあ俺はここで」
だから俺は、そう言って有難く一つ角を取らせて貰う。
「あっ! 角!?」
「勝負ありなんでしょ?」
「ま、まだ角一つだけだし!」
まだ勝負を諦めないリリスは、焦りつつも負けじと石を取り返す。
しかし、次第における場所はなくなっていき、残すは角の隣のみでこちらに角を明け渡すしか選択肢がなくなる。
「ぐっ……!」
「さぁ、そろそろ置いてもらっていい?」
「分かったよ! ちくしょー!!」
こうして、終わってみれば盤面の石のほとんどが白色となり、俺の圧勝に終わったのであった。
その約束されたリリスの敗北に、コメント欄には『あほピンク』のコメントが流れていく。
それを見たリリスが喚き散らかすことで、結果としてはリスナーみんなに笑いが生まれるのであった。
こんな調子で、他にも五目並べやトランプゲームで対決をするが、その全てで俺に敗北するリリス。
負ける度に悔しがるリリスに、それをいじるコメント欄。
そんな感じで、勝負には全く勝てないものの、配信自体は完全にリリスの空気に包まれているのであった。
次はどんな笑いを巻き起こしてくれるのか、リスナーのみんなの期待が高まっていくが、その全てにリリスはちゃんと応えていくのであった。
「じゃあ最後は、運ゲーにしよっか」
「運ゲー? いいよぉ? かかってこい!」
一度も勝てていないのに、負けん気だけは優勝しているリリス。
そんなわけで、最後に選んだゲームはサイコロを振って、その出目でポイントを競い合うゲーム。
これなら運要素が強く、リリスでも勝てる可能性が高いことで、コメント欄も納得のゲームチョイスだった。
「なるほどね、要するに多くの役を出した方の勝ちってわけね」
「そういうこと、サイコロ五つ全てを同じ出目にすると、一番高ポイント貰えるから頑張って」
俺は簡単に説明すると、試しに先行でサイコロを振ってみせる。
結果は、同じ数字が三個と二個の組み合わせでフルハウスを出すことができたため、役を一つ埋めて見せる。
「なるほどね、完全に理解したわ!」
理解だけは早いリリスは、そう言って早速サイコロを振るう。
サイコロは三回まで好きな個数振り直しができるため、目指した役を揃えるためにどう振り直すかは、運とは言えどある程度のテクニックが必要となる。
しかし、リリスの最初の一投で出た出目は――。
「あ、全部一だ」
そう、まさかの一投で、五つのサイコロの出目が全て一だったのである。
結果、振り直すこともなく一回で一番高い役を揃えてみせたリリス。
これにはコメント欄も驚きを隠せず、やっぱり持ってるリリスに大盛りあがりとなる。
「あほピンクって言った奴らは、全員土下座なっ!」
完全に有頂天になるリリスは、どうやら運だけは神に愛されているようだった。
結果、他の役もことごとく揃えていくリリスは、ほぼ満点に近い数字で俺に圧勝するのであった。
「……降参します」
「ふふん! まぁ、このゲームだけはわたしの方が上だったみたいね!」
誰が聞いても嬉しそうな声で勝ち誇るリリス。
まぁゲームでは負けてしまったが、こんな風に楽しんでくれていることが俺も嬉しかった。
数々のゲームを通して、勝っても負けても配信者としては百点満点だったリリス。
それは俺の狙い通りでもあり、集まってくれた俺のリスナーの多くがリリスにハマっていっているのが分かった。
そんな満足のいく結果に満足しつつ、俺達の初コラボは最後はリリスの勝利で終了するのであった。
「配信切れた?」
「えーっと、うん、大丈夫!」
開いていた配信画面でも、無事配信が終了していることを確認する。
「よし、じゃあ一旦お疲れ様ってことで」
「うん、すっごく楽しかった!!」
嬉しそうに返事をするリリスに、俺も良かったと笑って答える。
最初は緊張していたけれど、ゲームが始まってしまえば全てがリリスの空気だった。
それはやっぱり、リリスの配信者としての天性だろう。
「だから、ね……」
そしてリリスは、恥ずかしそうに言葉を続ける。
「……また一緒に、コラボしようね?」
その改まった言葉に、俺も途端に恥ずかしくなってしまう。
「う、うん。もちろん」
「本当に!? やった! 嬉しい!!」
俺の返事に、大喜びするリリス。
そんなに喜んでくれるならと、俺まで嬉しくなってくる。
こうして俺達のコラボタグ、『#アサリリ』は配信終了後も暫くトレンド入りするとともに、俺達のコラボはリリスの個性が一番発揮されるコラボとして、今後も人気のコンテンツとなっていくのであった。
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