第111話 ハヤトからのお誘い
それは、本当に突然のことだった――。
『今年からアーサーも大学生になったことだし』
いきなりハヤトから送られてきた、そのチャットの一文。
俺が大学生になったから何なんだという思いで開いてみると、それは個人でもFIVE ELEMENTSのグループ内でもなく、まさかの事務所共通のところに新しくトピックが建てられたものだった。
つまりは、事務所のみんなに通知されたその一文。
名前を出された上で、その謎のチャットに俺は軽いパニック状態となってしまう。
『あとは、DEVIL's LIPのデビュー祝いも兼ねまして』
そしてまた、ハヤトからそんな一文が追加で送られてくる。
――マ、マジでなんなんだ!?
俺が大学生になったことと、DEVIL's LIPのデビューを兼ねて何なんだと、俺はまた入力中になっているハヤトからのチャットの続きを待った。
『良ければうちの別荘で、お祝いでもしませんか?』
そして送られてきたのは、ハヤトからのお誘いだった――。
ハヤトの別荘で、お祝い……?
いやいや待ってくれ、ちょっと情報量が多過ぎやしないか……?
『つまり、どういうことだ?』
理解が追い付かない俺は、とりあえずそう返事をする。
何から聞いていいかも分からなかったため、もう一度説明して貰うためにも――。
するとハヤトから、すぐに返信が返ってくる。
『言葉通りさ! アーサーも大学生になって大人の仲間入りしたわけだし、みんなの親睦を深める意味でもうちの別荘へお誘いしてるのさ!』
なる、ほど……?
さっきと何も変わっていないが、変わっていないことが答えでもあった。
ということは、どうやら本当にハヤトは別荘を持っているということなのか……。
『いや、別荘って言ってもそんな大人数は……』
『大丈夫、同時に十五人は行けるぞ!』
十五人——!?
いや、どんな大豪邸なんだよ……。
でもまぁ、音楽活動もしているハヤトの家は、相当なお金持ちだって話を前にちらっと聞いたことがある。
だから、別荘ぐらい持ってても別に不思議ではない、のか……?
分からない……。
もうそんな、富裕層の話は俺に分かるはずもなかった。
でも、とりあえずこのチャットの人全てを誘うにしても、男は俺とハヤトの二人のみ。
ほとんど女性ばかりだし、仮にも同じ事務所でそういうのはちょっと……と思っていると、他の人達からも返信が付き出す。
『行けます』
『行けるよ』
『分かった!』
……うん、みんな二つ返事で乗るんですね。
どうやら気にしているのは俺だけのようだ。
思えば、このチャット内の面子はほとんどが女性。
だから、仮に全員が参加するとして、居辛いのは男である俺とハヤト……いや、多分俺ぐらいなものだろう……。
こうして、FIVE ELEMENTSのみならず、DEVIL's LIPのみんなからも参加の意思が集まったことで、この突然すぎる誘いはそのまま決行されることとなったのであった。
『じゃあ、現場を監督する意味でも、わたしも行きましょうかね』
『ずるいです! わたしだってたまには夏らしいことしたいです!』
『だったらわたしも!』
そしてなんと、マネージャーの早瀬さんも参加する意志を示すと、他のマネージャーさん達までも行きたいと言い出すのであった。
――いやいや、これ本当に大丈夫か!?
突然の誘いが、いきなり大所帯での旅行計画になってしまっていた。
『皆さんいらしてください! 僕とアーサーの二人が狭い部屋を使えば、ちゃんと不自由なく泊まれますから!』
あ、俺はもう参加確定で、オマケにハヤトと同室確定なんですね……。
いや、まぁ参加するならそれが一番自然だとは思うけれど……。
そんなわけで、ハヤトからのチャットが来て一時間もしないうちに、トピック参加者は全員参加することとなったのであった。
まぁでも、みんな忙しい身だ。
ここから日付を決めないといけないわけだが、この人数の予定を合わせるなんてほぼ不可能だろう。
それはハヤトも分かっているから、候補日を三日だけ挙げてきた。
『この三日のうち、一泊二日でどうかな?』
まぁ元々配信以外予定のない俺は、別にそこでコラボの約束をしているわけでもないため正直問題はなかった。
しかし――、
『そこコラボ入ってるけど、別日に移すわ!』
『マネージャー! アレずらせるかな!?』
『もちろん! ずらしましょう!!』
こんな調子で、予定が埋まっていた面々はこの日のために予定調整を始めるのであった。
――それでいいのか、この事務所……。
よく時間は作るものとは言うが、この件に対するみんなの意欲は凄まじかった。
こうしてこの夏、あれよあれよという間にハヤトの別荘へ遊びに行くという予定が埋まっていった。
そしてその参加メンバーには、梨々花もちゃんと含まれているのであった。
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<あとがき>
実は? お金持ちなハヤトくん。
また絶対に何か起きそうなイベントが決定していくのであった……。
おかげさまで、本作の星評価が2000を超えました!!
沢山の評価、本当にありがとうございます!!
これからも頑張りますね!!
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