第96話 どっちの歌姫でShow②

「そ、それじゃあ、次の曲行くニャン……」


 恥ずかしそうに、企画を進行するカノン。

 今日はカノンのチャンネルで配信していることもあり、そんな猫と化したカノンの可愛さにスパチャが飛び交う。


「ふふ、可愛いですね先輩。それじゃ、次の曲行かせて貰いますね」


 しっかりと勝ち誇りながら、ツクシちゃんは次の曲に行く。


 テテテテレテテ~♪


 二曲目にかかった曲は、一曲目とはがらっと異なり軽快な電子音のイントロ。

 それは有名なアイドルソングで、一曲目との落差にコメント欄もざわついていた。


『わたしだけ見て~♪ もっと~♪』


 それでも、さすがはツクシちゃんだった。

 さっきの演歌を感情豊かに歌ったかと思えば、今度は聴いている人の萌え心を刺激するような可愛らしい歌声。


 そんなツクシちゃんの歌声に、コメント欄はまた盛り上がりを見せる。

 全く曲調の違う曲でも、こうして完璧に歌いこなすところはさすがのプロといった感じだった。


『ズキューン! ドキューン! 愛してくれていいんだよ~♪』


 そして最後まで、アイドルソングも完璧に歌い上げたツクシちゃん。

 そんなツクシちゃんの歌声に、コメント欄もパチパチと拍手喝采を送る。


『ふぅ、どうでしたか?』

『な、中々やるニャン……』


 歌が終わると、またいつものクールなツクシちゃんに戻る。

 そんなツクシちゃんに対して、カノンは分かりやすく焦りの色が出ていた。


 きっとカノン的には、恐らくアイドルソングは得意とするジャンルではない。

 ただそれは、クールなツクシちゃんも同じだと踏んでいたのだろう。

 しかしツクシちゃんは、アイドルソングだって完璧に歌い上げてきたのだ。

 そんな予想外が、カノンの焦りを生んでいるのであった。


『さ、次は先輩の番ですよ?』

『わ、分かってるニャン……』


 ツクシちゃんの煽りを受けて、カノンも曲をスタートさせる。

 先程と同じイントロが流れる中、カノンは一度大きく息を吸い込む。


『もう、成るように成れニャンー!!』


 歌が始まる前、自棄になって叫ぶカノン。

 そして、カノンの覚悟の歌が始まる――。


『わたしだけ見て~♪ もっと~♪』


 もう負けたくないという思いが、カノンの新たなスイッチをオンにする。

 その歌声は、これまで聴いたことのない歌声だった。


「か、可愛い……」


 俺は思わず、そんな感想を呟いてしまう。

 カノンの覚悟の歌声は、少しぎこちないながらもとにかく可愛かった。

 それはもしかしたら、普段可愛いキャラではない人がやるから余計に良く感じてしまっているだけかもしれない。


 でも、それで良いのだ。

 そういうギャップを見せられると、人はそれだけで興味を引かれてしまうものだから――。


 それはどうやら、コメント欄のみんなも同じだった。

 始めて聴くカノンの可愛らしい歌声に、一気に大盛り上がりとなる。


『ニャン♪』


 そしてカノンはアドリブで、曲の合間に丁度今受けている罰ゲームのニャンを付け加えることで、更にリスナーからのウケを誘う。


『ズキューン! ドキューン! 愛してくれていいんだよ~♪ ニャン♪』


 そんなカノンの機転も功を奏し、最後まで大ウケで終わったのであった。


『や、やりますね……』

『じゃあ、アンケートにいくニャン……』


 カノンの歌を受けて、余裕のなくなったツクシちゃん。

 そして完全に出し切ったカノンは、二曲目のアンケートを開始する。


『じゃじゃん! カノン72%、ツクシ28%……つまり、二曲目はわたしの勝ちニャン!』

『ぐっ……』


 喜ぶカノンに、敗北して悔しそうな声を漏らすツクシちゃん。

 こうして二曲目は、見事カノンの勝利に終わったのであった。


『それじゃあ、罰ゲームいくニャン~♪』

『やばい……』


 嬉々として例のルーレットを出したカノンは、また公開して罰ゲームを決定する。

 回り出すルーレットを、ツクシちゃんは不安そうに見守る――。


『ゆっくり熱中症って言って!』


 そして決定した罰ゲーム。

 熱中症をゆっくり言うと、『ねっチューしよ』。

 このVtuber界隈では割と使い古されているけれど、それでも常に愛されているネタだった。

 しかも罰ゲームを受けるのは、他でもない普段クールなツクシちゃん。

 キャラじゃないだけに、コメント欄も期待が高まっていた。


『……分かりました、やります』

『よろしくニャーン!』

『……じゃあ、行きます……ねっチューしよ……ぐっ』


 恥ずかしさで、無事羞恥心にやられるツクシちゃん。

 その反応がまた可愛くて、コメント欄では昇天するリスナーが多数現れていた。


『じゃ、わたしはもうニャンはいいわよね? とっても可愛かったわよツクシちゃん』

『……次は絶対に負けない』


 そして勝ち誇るようにカノンが揶揄からかうことで、この”どっちの歌姫でShow”は一勝一敗と五分の展開となるのであった。



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 <あとがき>

 盛り上がってまいりましたぁー!w

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