綿海

ごぜん

第1話

 「私」が目覚めたのは一体いつだろうか。気がつくと「私」はこの白い世界の真ん中に立っていた。今まで何をしていたのか、皆目見当がつかない。まるで新しく「私」が生まれたかのようだ。

 生まれてきたからには、やはり名前の一つでも持っておくべきなのだろうか。

 そう思って「私」は自分に名前をつけようとしたが、頭の中には何も浮かんではこなかった。だから「私」は「私」をそのまま私と呼ぶことにした。

 それにしてもここはなんて殺風景なんだろう。地面も空も、全部が真っ白で、遠くを見通そうとしてもどこを見れば遠くと言えるのかが分からない。まったく、困ったものだな。

 私は辺りをぐるぐると見渡していたが、やはり何かが見つかることはなかった。次第に退屈になってきたので、そもそも私自身がどんな格好をしているのか気になった。

 と言っても鏡なんてないので、この眼で見える範囲でしか情報を得られない。

 私はどうやら、真っ白いワンピースを着ているようだ。足には何も履いておらず、黒いボサボサの髪を腰まで垂らしている。

 得られた情報はここまでだ。あとは何もない。

 ……そうだ。適当に歩いていたら何かが見つかるかもしれない。こんなコンパスのような足でそんなに遠くまで行けるものか、心許ない。それでもここにずっといるわけにもいかない。私は歩きだした。

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