第19話 過去(玲音目線)
まさか運よく事務所の入り口が開いているなんて思わなかった。
扉を開いた先はどこまでも薄暗く静まり返り、実に異様な雰囲気だった。
僕たちがいる場所から廊下の奥まで徐々に電気がついて行ったが、場所が場所だからか異様な雰囲気だけは拭えなかった。
ゆっくりと廊下を進んでいって各々部屋に散らばった。
この雰囲気が苦手な子たちは組んで、探し物をするということになった。
僕はこの雰囲気は正直得意ではなかったが、怖いとなるほどではなかったので一人で探すことにした。
皆で入り口付近の部屋から段々奥に調べていくことになり、僕たちは調べていた。
何十分も探したが、日誌以外は特に有力な情報は見つからなかった。
そして、一番奥のどこよりも暗い部屋で僕は探すことになった。
棚を漁り、懐中電灯をつけて色々なところを探し回っていた。
ここに無ければ一体どこにあるというのだろう。
棚を漁りに漁りまくって最後の一個の棚を探していた時、とある新聞記事を見つけた。
かなり前の八月の新聞だった。
そこで目に止まったのは「少女二人虐待死」と書かれていた記事だった。
なぜこの新聞がここにあるのかが気になった僕はその記事を読んだ。
読み始め早々、僕は驚きが隠せなかった。
そこには「松村 加奈子」「松村 由紀子」という名前と共に低画質ではあるが写真も載っていた。
その写真は明らかに加奈子ちゃんだった。
驚きのあまり何も考えられない時間が刻々と過ぎていく。少しして我に返り、その記事を読んだ。
タイトルの通り少女二人が昔この町で虐待死をしたらしい。つまり加奈子ちゃんはもう……?そんなことを考えている僕のことをじっと見つめる彼女がいたことに気づいたのは彼女が話しかけてきてからだった。
「ねえ、何か見つけたの?」
僕は驚きのあまり方が跳ね上がった。心臓の鼓動が不規則になって体が熱くなる。
呼吸がしずらくなった。
息を漏らしながらなんとか体制を整えた。
「いや!なんでもないよ……!何もなかった。」
「その新聞記事見た?」
「え?見たけどただの新聞記事だったよ」
「知っちゃったんだね。私がもう殺されてること」
言葉が出なかった。
体が震えて先ほど整えたはずの体制も崩れてしまった。
「集まってー!」
その時、部屋の外から声が響き聞こえてきた。僕は足を引きずりながら歩きだし、皆のもとへと加奈子ちゃんと共に向かった。
加奈子ちゃんは僕が真実を知ってしまったのにお構いなしの表情で僕の横にいた。
「何かあった?こっちは何もなかったんだけど……。」
「……あっ僕も……何もなかったよ。」
「あたしも無かった。」
「そっかぁ残念だね。でも、日誌に書いてある情報は大きかったし少しでも真実に近づけたのなら良かった。」
「そうだな。じゃあそろそろ帰るか。」
健一さんの一言で僕たちは部屋に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます