恋を演じる僕達は

赤嶺高真@超BIGなプリン

第1話 僕達、恋を演じる事になりました


 声優。

それは、キャラクターに命を吹き込む仕事。

 僕達は今、恋を演じている。


「今回の動画はここまで!」

「次回の動画も僕達二人で頑張るので是非チェックしてみてください。」

「それじゃあ皆またね~!」


 と二人で合わせて言い終えると配信終了ボタンを押し、配信を終える。


「あぁ~やっと終わったわ。まったくうちのあの呑気な社長にも困ったものだわ。なんで声優としてこれからっていう大事な時にカップル声優活動なんてしないといけないのよー!!」


 と不満を垂れている彼女は、花宮琴美。黒髪ロングでアカヤシオの髪飾りが特徴的な年相応な顔立ちの美少女で十六歳の高校二年生である。

 元々は人気急上昇中のアイドルだったが現在所属している事務所の社長にスカウトされ、現在は声優をメインに活動している。


「うるさいなぁ…。もう決まったことだしまだ、新人の僕達はこれをやるしかないんだよ。もういい加減諦めなよ。琴美さん」


 と琴美に対して冷静に諭すように言う彼は、平木ひらぎ成行。クセ毛な髪の毛に落ち着いた雰囲気の十六歳の高校二年生である。

 元々アニメを見て育ち今後自分がどうなりたいかと思っているときに雑誌で見つけた事務所に応募したところ受かって所属した。

 どうして今この二人がこんな状況になっているのか

 話は、三週間前に遡る。


「今日は、なんで呼ばれたんだろう。何か僕やらかしたか、あるいはこの間のオーデションが受かったとか?でもこんな事滅多にないしなぁ~でもなんでだろう…なんか嫌な予感がするな・・・」


 と考え込んでいると女性にぶつかった。


「いたたっ」

「すいません!よそ見してて」

「こちらこそすいません」

「大丈夫ですか?」

「はい、特にケガとかはしていないので気にしないでください。私急ぎますのでこれで失礼します。」

「あ、はい。ふぅ~ケガとかしてなくて良かった…あ、トイレ行きたくなってきた。トイレ行ってから行こうっと」


 そんなやりとりをしお手洗いを済ませてから僕は社長室へ行き、中へ入るとそこには、さっきぶつかった女の子と社長とマネージャーさん二人が居た。


「待ってましたよ。」

「あの~すいません社長。この状況について説明してもらっていいですか?」


 と僕が社長に問うと、社長は、説明し始めた。


「勿論ですよ!最近、恋愛ドキュメンタリーやアオハルやカップル配信が巷では流行っています。という事で我が社も今の流行を取り入れ、新しい売り出し方をしていかなくては!という事で今回は声優カップルチャンネルを結成し、これから活動する事が決定したのでそのメンバーと関係者をここに呼びました。」


 と社長が言い放った。

 うちの社長いくら外国人で面白そうなことが好きだからって…普通の人と感覚ズレてるのは知ってはいたけどここまでとは思わなかった…。

 と心の中で心底呆れた。


「という事で、現役高校生で期待の新人の花宮さん、平木君、君達二人にはこれから頑張ってもらうから宜しくね」


 そう社長が言い終えると、琴美が勢いよく立ち上がり


「ちょっと待ってください。いきなり困ります。それにそれでこれからの活動に影響したらどうするんですか?」


 と今までは黙って聞いていた琴美だったが勢い良く反論した。

 すると社長は淡々と琴美に対してこう返したのだった。


「大丈夫ですよ。業界の関係者の人には、私から実際はそいう二人ではないっと伝えいますし、何より知り合いの企業がスポンサーになってくれると言ってますし知名度や何より手当として今よりギャラをアップをしようと考えているので大丈夫ですよ!心配ご無用です~。」


 考え込んで不満そうな顔しながらも彼女は、社長にこう返した。


「分かりました。なら私、これから頑張ります」


 そう聞くと琴美はあっさり、食い下がった。


 (何か断れない理由でもあるんだろうか。まぁ今の僕には知る由もない。

 一つ、僕は、確認しておきたい事があった。)


「これって僕達の声優としてのチャンスなんですか?」


 何故、僕がそんな事を聞いたか。それは、うちの社長はプロデュース力に定評のある人で有名だからである。

 いつも何かしらのプロジェクトを立てて参加した者は皆、大なり小なり売れているのである。

 うちの事務所は、業界でも名が知れているうえこんなに用意周到に事前準備がされているという事はそいう事なんじゃないかと思って僕は問いかけた。

 そういうと含み気に社長はこう言った。


「さぁ~それは、どうだろうね。だけどこの機会をどう捉えるかは、君達次第だよ。それじゃあ今日はここまで詳しい事は明日ね。じゃあこれから二人共頑張ってね。嬉しい報告が聞けることを楽しみにしているよ。それじゃあね。」


と意味深な言葉だけ残し、社長は去って行った。


 その後、セッティングや色々な打ち合わせや配信を経て現在に至る。

 これから恐らく僕達の声優人生にとって大事なプロジェクトがこうして始まった。

 こうして僕達は恋を演じていくことになったのだ。

 それが例え、本心(ホンモノ)か、演技(ニセモノ)か分からなくても。


           続


(読んでくれてありがとうございます。良いなと思ったら星やハートを付けて頂けたり前向きな感想を頂けたらと励みになります。この小説を気に入っていただけたら連載中の回も是非読んでください。連載は不定期なのでちゃんと読み続けたいと思って貰えたなら小説のフォローをお勧めします。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る