①crazy game【プロコン参加作品】

三夏ふみ

プロット

『男は三度みたび、異界への扉を開く』


ハードボイルド ✕ ダークファンタジー



○参考作品


『雑踏』サカナクション


『YMM』Suchmos


『さよならの無い世界』大橋トリオ



○世界観


【バックストリー】


1度目の異界の扉『エターナルヴァンパイア』


17歳の春、小雨降る夜、白銀の猫を助け、一夜を共に過ごす。


「ありがとう」


その一言を残して、翌朝姿を消した猫。


その翌日、白銀の長髪、薄っすらと桜色がかった黒い瞳の少女、ローズ・クロスが転校生として現れる。ひと目で心奪われる響夜。その思いは秘め、他愛のない日常が過ぎていく、響夜の優しさ、ローズの儚くも強い眼差。いつしか惹かれ合う二人、しかし彼女の正体は、ヴァンパイアのプリンセス、人とは相容れない。

ローズに近づく響夜を良く思わない、側近の忠告を無視してヴァンパイアガードに襲われ、瀕死になる響夜。

響夜を救うため、ローズは禁忌を犯す。

それは、愛する人に自分の血を飲ますこと。


「それで貴方が助かるなら。私は喜んで」


拒む響夜に傷つけた唇でキスするローズ、桜色の瞳が薄っすらと光る。そして、彼女は永遠の呪いにかかる。

徐々に朽ちていく身体。


「必ず、必ず迎えに行くから」


朽ちていく身体の進行を止めるため、永遠の闇、深淵に沈むローズ。

深淵よりローズを救うため、奔走する響夜。

ローズのお付きのものに、復活させるためには聖杯が必要と教えられる。

しかし、そのことで、ピュアヴァンパイアからなる騎士団『インバーテッド』に狙われることに。


「雑種風情が!身の程を弁えよ」


響夜もヴァンパイア化して応戦するが、圧倒的な力の差に、再び瀕死におちいる。

命付きかけたその時、聖杯から響夜の口へ一滴の血が注がれる。


「次に狩られるのは、お前達だ!」


“クロス”の力をその身に宿し、アンチバンパイアとなった響夜の反撃が今始まる。

彼女が最後に残した言葉を胸に秘め。


「永遠なんか無いって、教えてくれたのは貴方じゃない。ここで待ってるから。だからもう、泣かないで」




2度目の異界の扉『ミレニアムウィッチ』


プライモーディアルヴァンパイア、エデンを倒すもローズは帰らなかった。

失意の底で、この世と離別しようとしたその時、黒猫に助けられる響夜。

彼女はミレニアムウィチ、千年後の未来からきた魔女だと名乗り、響夜につきまとう。


「助けたからには、助けなさいよ」


彼女の名はローズ・バレッタ、くしくも初恋のヴァンパイアと同じ名前のその人は、魔女狩りから逃れるため、過去へとダイブしてきたタイムトラベラーだった。

管理局と名乗る黒服の男達に追われる一人と一匹、彼らは彼女が隠し持っている“ソロモンの腕輪”を奪おうとしていた。


「そんなもの、持ってないわよ」


うそぶく彼女を必要に追いかける黒服達、追い払うためにヴァンパイアの力を使う響夜、だが、周辺にあった自動車や機械類を取り込み機獣に変容する黒服。その圧倒的な破壊力に、次第に押され始める。

それもしかたなかった、プライモーディアルヴァンパイア、エデンが喪失した今、ヴァンパイアの能力は十分の一にも満たない状態に陥っていた、それは響夜にも影響を及ぼしている。


「腕を出しなさい。早く!」


響夜の腕を掴むローズが光り輝く。次の瞬間、響夜の右腕が奇っ怪な剣の姿に変わる。

“ラプラスの三賢者”

3台の量子コンピュータからなるそのシステムは、この世界のあらゆる事象を0と1に変換して、作り変える事が出来る。

“ソロモンの腕輪”とは、そのシステムへのアクセスキーにして、制御プログラム。

そして彼女こそ、“ソロモンの腕輪”そのものだったのだ。

生まれつき体が弱かったローズを生きながらせるため、量子コンピュータの父と讃えられる、シモン・バレッタ博士は中央機関を欺き、量子解析プログラム“ラプラスの三賢者”の開発に成功。“ラプラスの三賢者”の力を使い、娘を粒子生命体へと生まれ変わらせた。

しかし、そのシステムは神そのもの。

自分の冒した罪と娘を生かしたいと思う気持ちの間で、苛まれる。

一方、“ラプラスの三賢者”を欲する、中央機関は異端審問官の面々を招集。シモン・バレッタの拘束に成功するも、“ソロモンの腕輪”すなわち、ローズ・バレッタは過去へとダイブした後だった。


管理局に加え、異端審問官にも追われる、響夜とローズ。

逃走劇は加速度的に激化していく。


最終決戦、聖ペドロの銃剣士に追い詰められた、ローズは自らゲートを開放、“ラプラスの三賢者”のリミッターを解除する。

それは、世界から彼女の存在を解放する事を意味した。最早、その身を留めておくことが出来なくなるローズ。


「十分助けて貰ったわよ。だから、そんな顔しないで」


響夜の腕の中で光の粒子に変わるローズ。その粒子を吸収して、響夜はリミッターの無いラプラスにダイレクトにアクセス。神の御業で追撃者達を一掃するのだった。



以上がバックストーリーです、あくまでバックストーリーなので、本編で詳しい説明はありません。ありませんが、物語が進むに連れて、本編に絡めて、じょじょに明らかになっていく予定です。





【本編】


「落とした天使を、探すのを手伝って下さい」


事故から助けた猫に頼まれる、響夜。

内心またかと呆れ果てる。

いい加減ほっておいてくれないか。

これまでの傷が癒えない響夜にとって、その頼みごとは余りにも残酷だった。

しぶしぶ、神と名乗るその猫に言われるままに、天使を探し始めるが……。



どこにでも有るような、少し乾いた日常が淡々と過ぎていく。


落ちた天使=堕天使=悪魔


倒すのではなく、救うのが目的なのです。

響夜は異能を使いたがりません。

ただし、ローズ・クロス関係のこととなると、見境がありません。

加えて、イデアは天使が悪魔になっていることをいまいち理解していなかったりと、駄目な子です。



普段の響夜は表向きは私立探偵として生活している。活動としては財界などのVIPからのシークレットな厄介事を処理している、理由は、情報と金。

高額な依頼料もさることながら、あるものを探している。

それは、『インバーテッド』との戦いで行方不明になった、聖杯。

響夜はローズ・クロスを深淵から助け出すことを諦めてはいない。



生活の拠点は雑居ビルの一室、どの作品という訳では無いですが、雑多な探偵事務所の様なオフィスが根城です。



孤独な主人公ですが、異質な存在から好かれたり、興味を持たれたりすることが多々あります。



イデア(善導)とフェル(誘惑)と事務所兼住居の部屋で三人で暮らしていきます。




○主要キャラクター

三剣響夜(みつるぎ きょうや)

26歳、男性。長身で細め。黒髪の短髪。

ヨレたダークスーツをいつも着ている。

過去に二度、喋る猫に遭遇し、異界の扉を開け非現実的な体験をしている。

そして二度とも大切な人を失い、その心の傷から他人に深く関わらない様に過ごしている。

口数は少なめで、的確に正論を吐いたり、舌打ちが癖だったりで、初対面の人からは好印象は得られない。

しかし、ある意味真っ直ぐなその姿勢と見え隠れする優しさに、長く付き合うと心惹かれる。

そして、なぜか猫にはとても好かれる。


「俺には関係ない話だ」



異能の力①『クロス』

聖杯から血を飲んだことにより、悪しき心を浄化できる様になる。

方法は噛みつき血を啜ること。

悪しき心に取り憑かれているものは、悪しき心から解放され元に戻るが、存在自体が悪しき者は、跡形もなく滅びる。


異能の力②『バレッタ』

ソロモンの腕輪を取り込み、ラプラスとリンクしたことにより、世界の事象の全てを0と1に変換する事が、出来る様になる。

しかし、未来とのゲートが閉じたことにより、リンクが遮断、自身の近辺にある物質を取り込み自己再生する。


異能の力③『イデア』

神よりのギフト。身体能力が大幅に上昇、聖痕が現れた手に触れた天使は、天界へと送り戻される。堕天使は戻せない。




イデア

神を名乗る猫。

少女に変身して過ごしたりもする。

白猫、少女の時の容姿は、綺麗に整えられた肩口までの白銀の髪、小柄で華奢、一見では性別不明に見える。

基本能天気で、楽天化。

“落とした天使”を拾い上げる為、外界に降りてきたが、力の大半を失っております、基本的には役立たず。

真面目で正義感はやたら強く、世間知らずで、トラブルメーカー。


「そうでしたっけ?」




フェル(ルシファー)

堕天使。響夜に興味を持ち、イデアと共に住み着みつく。

容姿に定着性がなく、瞬きの一瞬でも全く違う容姿になることも可能。強いて言えば、どの姿の時も笑顔。

響夜に呆れられるほど、イタズラ好き。

しかし思考は危険で、非道徳的。


堕天使長で双子の兄、サタンの行方を追っているが、その詳細は誰も知らない。


「楽しい方がいいじゃない。ね」



ルビア

ローズ・クロスの従者で側近、下級ヴァンパイアのルビアに、まるで友の様に接してくれたローズに、己の全てを捧げ尽くすと誓いを立てている。

どこにでもいるような女の子で、生真面目。

深淵に落ちた事で一時期、響夜を憎んでいたが。ローズの愛と響夜のひたむきな姿に、次第に誤解が溶け、現在はローズの救出に力を貸している。

勘違いは天下一でしばし響夜を呆れさせる。


「なるほど。分かりました」



エフケイ

響夜と財界の依頼者とを繋ぐパイプ役。

元、管理局の一員。

黒服、黒靴、黒眼鏡。

ローズ・バレットに好意を持っており、二人を影から助けていた。

未来とのゲートを閉じる際、ローズが居ないのならと、輪廻を絶ちこちらに残る。

元々、情報員だったことと、話術で現在の立ち位置にいる。

響夜には、彼に隠し事出来ないと言わしめるほど、情報収集には長けている。

内心は、ローズの事は諦めていない。


「では、お気をつけて」




◯物語構成

全4章構成 文字数、約10万


第1章『トーキングキャット』 文字数25%


猫を名乗る神に、“天使を拾う”ことを頼まれる、響夜。

乗り気ではなかったが、イデアの諦めの悪さと「家族ですから」の一言で、渋々手を貸すことに。

初めて遭遇した天使(堕天使)を、人間離れした能力で難なくいなし、イデアを唖然とさせる。


天使をお繰り返した報酬として、ファミレスでの食事中にルシファーに襲撃され応戦。先程の下級天使と違い、上級、しかも隊長クラスの天使に苦戦するも、謎の能力の片鱗を見せなんとか撃退。


ローズ・クロスの夢を見る、響夜。


目覚めるとベットにはイデアが、事務所には朝食を作る、フェルことルシファーが。

容姿を七変化させ誘惑するフェルに対して面倒くさそうに対応する響夜、そこにルビアが登場。

あられもない姿で響夜に迫るフェルを見て、全開で誤解するルビア。

二人が言い争っている最中に、シャツ1枚のイデアが現れ、ルビア爆発。

三人のやり取りが面倒になり、事務所を出ていく響夜。



純喫茶に入店する響夜。

ソファーに腰掛けると、背中合わせの隣の席の黒服が話しかけてくる。

テーブルの下に貼り付けてあったA4サイズの封筒を取り出す響夜。

中身は家出の捜索依頼と女子高校生らしき写真。

またかと悪態をつく響夜に、楽な仕事ですと、なだめる。

しかし、書類には“S”の文字が。

Sランクは人外の関与が濃厚な依頼。

これが楽な依頼かと悪態をつくも、


「だから貴方に頼んだですよ」


そう言い、ヴァンパイアの関与を仄めかす。

それを聞き、舌打ちする響夜。

ウエイトレスが注文を聞きに来るのと同時に、黒服の男は立ち去る。



事務所に戻ると、フェルとルビアは居らず、イデアと見知らぬ女の子が向かい合わせでソファーに座っている。

訝しがる響夜に一言。


「依頼人です。猫を探して欲しいそうですよ」


と、告げる。

舌打ちする響夜。




第2章『ソフトクリームベイビー』 文字数30%


少女を真ん中に公園のベンチに座る三人。

ソフトクリームを食べている。

響夜の手には、ぶち模様の太った猫の写真。一日中歩き回ったが猫は見つからなかった。

遅くなるからと帰りを促す。

心配顔の女の子をイデアに押し付け、響夜は夜の街へ。



繁華街、チンピラに追われる女子校生、路地裏に追い詰められる。

手を掴まれたその時、チンピラの背後から声がする。

チンピラを無視して女子校生に近づく男は響夜。

威嚇されるが無視、女子校生を連れて行こうとして、袋叩きに合う。

警官に見つかり逃げるチンピラ、女子校生も響夜の手を引き逃げる。



場末の中華料理屋で飯を食べる顔面が腫れた響夜と女子校生、美樹、


「おじさん、弱いね」


と指摘され


「ガキは卒業したんだ」


と、チャーハンを大口で一口。

蛍光灯が瞬く。一瞬にして響夜の隣に黒髪の女が現れる。悪態をつく響夜、楽しげに応答する女はフェル。

何が起きているか分からない美樹を無視して、二人の会話が続く、


「手伝おうと思って連れてきたのよ」


薄暗くなる店内、数名いたはずの客の代わりに、見たことのある少女達、堕天使だ。

ドアから店外に吹き飛ぶ響夜。

否応無しに応戦するが、黒い翼を持つ堕天使達は明らかに前回とは違い、苦戦する。やっとのことで撃退するも、イデアに言われていた紋様は現れず、堕天使達は散り散りに逃げてしまう。

飽きたのか、いつの間にか居なくなったフェル。

響夜の戦闘を見ていた美樹、驚くどころか友達を助けてほしいと嘆願される。



事務所に響夜と美樹。事情を聞いている。

(回想として書く)

現在、女子高生の間で“フロウ”という美容系サプリが密かに流行っている。

飲むと見違えるほど若く可愛くなるらしい。

友達の佳奈も好きな人に振り向いて欲しくて飲んだ。

しかしそれから様子がおかしくなり、姿を消す。

いろいろ調べるうちに、宗教法人“オーヴィス”が関係する事が分かる。

乗り込むも追い返される。

それでも諦めきれず、忍び込んだ先で奇妙なものを見る。

人には見えない男達。

それと赤い液体の入った巨大なガラスの容器に入った全裸の男。


その話を聞き、険しい顔のなる響夜。


「お願い。佳奈を助けたいの」


なんでもするといい、服に手をかける美樹。

胸ぐら掴む響夜。


「お前の友達はそんなに安いのか」


泣き崩れる美樹に舌打ちすると、手助けはしてやると約束する。




第3章『レッドアイラフ』 文字数30%


暗い裏路地で悪態を付きながら、猫を捕まえている男達。車のバックドアが開くと、ゲージ一杯に猫が、その中に猫に姿を変えたイデアの姿。

運転席の男がもう行くと伝えると、車に乗り込み走り去る。

その後に暗がりから、ぶち模様の太った猫がのっそりと現れる、少女が探していた写真の猫だ。



繁華街の雑居ビルの前に立つ、響夜と美樹。

看板には“オーヴィス”の文字が。

ためらう美樹をよそに、響夜はずかずかとビルに入っていく。

しかし人影はない。

すると何処かから太っちょの猫が入ってきて、響夜の足元にすりより、奥へと進んで行く。

袋小路の床に爪を立てる猫。

響夜が爪を立てている床をぶち抜くと、地下への階段を発見。

長い廊下に赤い絨毯。左右の扉を次々と開けていく。奇妙な器具が置かれた部屋、見たことのない文字が書かれた本が置かれた部屋、奇っ怪な部屋が並ぶ。

その一室に若い女性が大勢いる部屋を発見。その中に佳奈を見つける美樹。呼びかけるも応答はない、強引に連れ出そうとした時、壁の一部が崩壊して男が現れる。白い肌、赤い瞳、銀髪のオールバックで半裸の男は、かつて響夜が壊滅させた『インバーテッド』のメンバー、狂気の牙レーヴァテイン。

高らかに笑い、響夜に襲いかかる。



暗い部屋、力無く猫の鳴き声が響く。

足音、扉の開く音、猫たちが顔を一斉に上げる。

ゲージの上から男の手が猫を一匹つまみ出す。

猫たちの視線が連れ出された猫を追う。

甲高い機械音、続いて猫の断末魔。

何かが拉げる音が部屋に響く。

ゲージの上から毛むくじゃらの腕が現れる。

逃げ惑う猫達とイデア。

再びつまみ上げられ、猫の断末魔。

ゲージの中で騒ぎ出す猫達。

そんな事はお構いなしに、次から次へと猫がつまみ出される。

数が減る中必死に逃げる猫達。

近づく腕、捕まるイデア。

声がして解放される。

液体が容器の中で跳ねる音、続いてドアの開閉音。

再び暗闇に支配される部屋。

減った数からいって、次ドアが開く時は、ゲージは空になるだろう。



壁を破って響夜が隣の部屋へ吹き飛ぶ。

高らかに笑い、追い打ちで膝を溝落に食らわすレーヴァテイン。血を吐く響夜。


「愉快だ。実に愉快だ」


頭を持ち上げまたも高らかに笑う。

振り払おうと腕を掴むがびくともしない。無造作に壁になげつけられる。間髪入れず殴りかかるが、壁からカウンターをくらうレーヴァテイン。煙の中から赤い目をした響夜が現れる。



元の部屋では、美樹が佳奈を連れ出そうと腕を引っ張る、しかしやはり動かない。すると突然、部屋にいた全員が咆哮を上げる。驚き周りを見渡す美樹、佳奈に視線を戻すと瞳が赤く妖しく光りだす。



形成逆転、響夜が力を解放する。

“クロス”に加え、“バレット”も発動。

レーヴァテインは防戦一方に、もう高らかに笑う余裕はない。

これで止め、とその時、美樹の悲鳴。

気を取れらたその一瞬にレーヴァテインに逃げられる。

舌打ちをし、元に部屋に戻ると、そこにはヴァンパイア化した女性達に襲われる美樹の姿が、間一髪で女性達をはねのけ美樹を救い出す、しかし、手荒な対応に、美樹から罵倒される。


「俺には関係ない話だ」


女性達が響夜に遅いかかる。響夜の腕に掴みかかり必死で止める美樹。しかしあっさり跳ね除けられ、響夜は佳奈の首筋に牙を立てる。

ありとあらゆる罵詈雑言を響夜に浴びせかける中、佳奈の顔はみるみる生気を帯び、瞳も赤から黒に戻る。唖然に取られる美樹。少し黙ってろ、そう言うと、次々と女性の首筋に牙を立てるていく響夜。



「これは少し不味いですね」


イデアが脱出の方法を考えあぐねていると、蛍光灯が点滅してフェルが目の前に現る。よかったと安堵し助ける求めるも、はぐらかすフェル。

お願いするも一向に助けようとしない。

微かに足音が聞こえてくる。

焦るイデアを笑い、部屋から消えるフェル。

足音が近づいてくる。


「取引しよう」


頭の上で囁かれる声。

部屋のドアが開かれ、光が差し込む。

ゲージの中は空っぽになっている。



女性達を逃がす響夜と美樹の前に、再びレーヴァテインが姿を表す。

鼻で笑う響夜。

美樹がレーヴァテインの右手に藻掻く堕天使を見つける。


「よくもよくも」


藻掻く堕天使に牙を立てる、絶叫と共にみるみる肌が黒く染まるレーヴァテイン。

本能的に防御する響夜を軽々と吹き飛ばす。

片手で首を締められ、宙吊りの響夜。

引剥そうと抵抗するがびくともしない。

美樹が駆け寄り止めようとするが、気にもとめないレーヴァテイン。

叫ぶ美樹。払い除けられ、壁に打ち付けられぐったりする。

レーヴァテインの笑い声が響き渡る。




第4章『エターナルプロミス』文字数25%


混濁する意識の中で、響夜は幻を見る。

ローズとの記憶、走馬灯か?


「ここで待っています」


約束の言葉。

胸の奥に熱を感じる。

ローズから預かったネックレス。

桜色から赤にそして青へと変わる。

轟音。

床をぶち破り飛び出すレーヴァテイン。

煙の中から、美樹を抱きかえた響夜。

青い瞳、黒い羽、右手には今までなかった紋様が。

美樹をゆっくり壁際に下ろす。

レーヴァテインが背後から不意打ち、片手で受け止め投げ飛ばす。

狂ったように雄叫びを上げて響夜に襲いかかる。

響夜応戦。激しい戦闘ののち。

レーヴァテインの首を掴み、持ち上げる。

足が浮き巨体が持ち上がる。

苦しむレーヴァテイン。

床の穴から飛び出す、イデア。

響夜を見て驚きの顔。


「失せろ」


響夜がそう言うと、右腕が黒炎に包まれ、レーヴァテインが焼かれ、あっという間に塵になって消えていく。



ビルより一匹のコウモリが飛び立ち、ビル群の一角、屋上にたどり着く。

ビルの屋上には、黒いコートを着てフードを深く被った人影が数名。

その一人、ビルの縁に座る男に話かける、こうもりになって逃れて来たレーヴァテイン。

取り付く暇も無く、握りつぶされる。

フードの奥で赤い目が光る。

その人影達の後ろに、笑みをたたえるフェルの姿が……。



昼間の公園で太っちょな猫を少女に手渡すイデル。

満面の笑みで太っちょの猫を抱きかかえ、何度も立ち止まってはお礼言って去っていく。

イデルの隣には響夜、その隣に美樹の姿も。


「さてと。私も帰りますか」


大きく伸びをして少女とは反対方向へと歩き出す。

響夜を見つめているイデア、見つめ返し悪態をつく。

足音が戻ってくる。


「忘れもの」


そう言うと背後から響夜の頬にキスをし、走り去っていく。


「ありがとね、響夜」


振り向く響夜とイデアに、満面の笑みで手をふる。

イデアに肘で小突かれて、舌打ちする響夜。

ふと、視線を感じて振り向くと、公園の入り口に唖然とした顔でこちらを見つめているルビアの姿が


「響夜さま!」


避難と釈明を求めるルビアの声が響き渡る。



喫茶店に入店してくる男、ソファーに座る。

背中合わせの隣の席に黒服のエフケイ。

二言三言交わすと、ケイエフは店を出ていく。

テーブルの下から封筒を取り出す男。

中には響夜の写真と、“S”と“DELETE”の文字が書かれた書類。

薄ら笑う男の瞳が、青く妖しく光る。




◯展開


『インバーテッド』の残党

異端審問官の前身の組織『カニスオウィス』

謎の青い目の男も加わり、異種異能バトル勃発。



怪しい動きを見せるフェル、

ローズの件で孤軍奮闘するルビア、

エフケイの真の狙いは、

ローズは救い出せるのか、

そして、イデアはお役に立つことが出来るのか?



どうしよもない大人たちへ贈る、

ハードボイルドファンタジーです。

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