最終章-16【ガルガンチュワvsポセイドンアドベンチャー】
「よ~~し、やる気が湧いてきたぜぇ!!」
レッドヘルムが操るクジラ巨人のポセイドンアドベンチャーが両手の指を組んで両腕を高く上げながら背筋を伸ばした。
勝負に勝ったらガルガンチュワを食べて良いと言う言葉を、勝負に勝ったらガルガンチュワの身も心も好きにして良いと脳内変換させたレッドヘルムのやる気はマックスまで上昇していた。煩悩大暴走である。
クジラ巨人の身体に下半身を埋めているから見えてないが、レッドヘルムの股間はトンガリ三角テントが構築されているぐらいだった。レッドヘルムの脳内ではガルガンチュワに何をしてもらおうかと如何わしい欲望が駆け巡っている。
「よし、決めたぞ!」
「何を決めたのだ?」
「俺が勝ったらお前を嫁に貰う!!」
「はあ?」
キョトンとガルガンチュワが小首を傾げた。理解不能である。
「そして俺は海賊から足を洗って漁師に戻るんだ。今後は真面目に平和に穏やかにムフムフとパフパフしてもらいながら暮らすぞ!!」
「なんで私がお前の嫁に?」
ますます理解不能である。
「俺が船でお前が港だ!!」
「ますますわけが分からんな……」
完璧に理解不能だ。
「祝言を上げるために、まずはお前を倒す!!」
言うなりポセイドンアドベンチャーが両腕を十字に広げて水面に手の平を向けた。すると水面が伸び上がり両掌に向かって登って行く。そして、ポセイドンアドベンチャーが伸び上がった水柱を掴んで水面から引っこ抜いた。
それは武器だ。両手に二本の水槍を作り出して構える。
「行くぞ、我が水二槍棍棒で一発KOだ!!」
「ほほう、武器を手にしたか」
「押して参る!!」
ポセイドンアドベンチャーが振りかぶった水槍を縦に振り下ろす。それをガルガンチュワは横に跳ねて躱すと、すぐさまポセイドンアドベンチャーに向かって飛び迫った。
「キッーーーク!!」
「なんのっ!!」
ポセイドンアドベンチャーは反対側の手に持った水槍を盾にガルガンチュワの蹴りを防いだ。
更に打ち払う。すると飛ばされたガルガンチュワが城壁の上に着地する。
「ほほう。武器を手にして少しはらしくなったな」
「まだ、これからだぜ!!」
ポセイドンアドベンチャーが水槍を逆手に投擲する。ガルガンチュワはチラリと後方を視線だけで確認すると呟いた
「これを躱したら城に槍が命中してしまうか。仕方あるまい、打ち落とすとするか」
刹那、水槍に向かってガルガンチュワが飛んだ。そして蹴り足を振り上げて水槍を上に弾き飛ばした。パシャンっと水が弾ける音が響くと蹴り弾かれた水槍が真上に飛んだ。
「ちょりーーすっ!!」
「ぬぬっ!!」
高く足を上げて水槍を蹴り弾いたガルガンチュワを見てレッドヘルムが目を剥いていた。
「また、チラ見が出来たぞ!!」
レッドヘルムの視線はホットパンツの隙間をガン見していた。何がチラ見できたかは想像に任せよう。
「よし、もう一本も投げるから蹴り飛ばしてくれ!!」
懇願したレッドヘルムが叫ぶとポセイドンアドベンチャーが再び水槍を投擲した。再びチラ見を期待しているのだろう。だが、今のガルガンチュワは水面に着地している。今度の水槍を躱せない理由が無い。だからガルガンチュワは水槍を飛び越えてポセイドンアドベンチャーに迫った。
躱された水槍が水面に突き刺さると同時にガルガンチュワは身体をスピンさせて背を見せる。そこからの飛び後ろ廻し蹴り。
「ローーーリングソバット!!」
「ほげっ!!!」
ガルガンチュワの飛び後ろ廻し蹴りが炸裂したが、今度は当たりが少し浅かった。ポセイドンアドベンチャーは後ろ廻し蹴りの威力に仰け反ったが倒れない。片足を後方に踏ん張り耐える。
「乙女に蹴られるのは堪らない。しかし、何度も何度も蹴られっぱなしでいられるか!!」
男の意地なのだろう。
更にポセイドンアドベンチャーが繰り出す横振りの張り手。空中に居たガルガンチュワは躱せずに全身で張り手をモロに食らう。
「くっ!!」
手足を丸めてガードこそ出来ていたが巨人の張り手だ、体格差で派手に飛ばされる。
「まだだっ!!」
ポセイドンアドベンチャーは湖の水を操りコンドは鞭を作り出していた。その水の鞭を振るうと、飛んで行こうとしていたガルガンチュワに巻き付けて引き止める。そして、力任せにガルガンチュワを引き寄せた。
「ぬあっ!!」
水の鞭で引き寄せられるガルガンチュワ。そのガルガンチュワにポセイドンアドベンチャーが張り手を打ち落とした。上から下への蠅叩き攻撃だ。
「ふにっ!!」
パシンっと音が鳴ると、パシャンとガルガンチュワが水面に叩き付けられた。水上でワンバウンドしたガルガンチュワが3メートルほど跳ね上がると、ツーバウンド目で水面に落ちて水中に沈んで行く。
「我が嫁よ、どうだっ!!」
水中に沈んだガルガンチュワは浮いて来ない。水面にはブクブクと泡だけが浮いて来ていた。その泡を見下ろしながらレッドヘルムが呟く。
「ちょっと力を入れ過ぎたかな……。嫁さんが壊れたらどうしょう……」
すると声が聞こえて来る。
『そろそろ私も少しは本気を出そうかな』
「本気? てか、この声は何だ!?」
先程まで聞いていたガルガンチュワの麗しくも勇ましい声とは違っていた。しかも音声で聞こえていない。念波だ。これはテレパシーだ。しかも男のような太い声にも聞こえる。
「だ、誰だ……」
『私だよ~』
突如ポセイドンアドベンチャーの両足に水中から何かが巻き付いて来た。しかも凄い力で締め上げて来る。
「なんだ、なんだ、なんだ!!」
レッドヘルムは戸惑った。凄い締め上げに水中の足首が折れそうだっだ。
更にポセイドンアドベンチャーの身体が持ち上げられる。そこで両足に絡み付いているものがタコの触手だと分かった。
「タ、タコの触手だとっ!!」
しかもデカイ、長い、太い、力強い。圧倒的パワーでポセイドンアドベンチャーの巨体が持ち上げられていた。
そして、水中から触手の主が姿を表す。
タコのようでタコじゃあない。イカのようでイカじゃあない。触手の足は10本だ。外見も怪物。
「これは、海のキング、クラーケンっ!!」
そう、クラーケンだ。しかも、ただのクラーケンではない。知能が高いレジェンダリークラーケンだ。海王モンスターの中の海王モンスターである。
『お遊びは終わりだ。私は午後からウェイトレスのバイトがあるんでね。このままだとバイトに遅れてしまう』
そう言うと正体を表したガルガンチュワはフルスイングでポセイドンアドベンチャーを水面に叩き付ける。本日最大の水柱が上がった。
そして水柱が収まり水面の波が収まると、ポセイドンアドベンチャーがうつ伏せでプカプカと浮いていた。ポセイドンアドベンチャーは動いていない。呆気ない決着だった。力の差がありありと出る。
『さて、バイトの前に昼食でもしようかな~』
クジラ巨人に覆い被さったクラーケンがバリバリと音を鳴らしながら食事を始めた。クラーケンがポセイドンアドベンチャーの体を食べているのだ。その光景に魔王湖の水面が酷くも赤く染まって行く。
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