19-5【ミケランジェロvsメタルキャリア】
メタルキャリア。
頭から土嚢袋を被って、身体も土嚢袋を着込んでやがる。下半身も土嚢袋をスカート見たいに履いて、出ている手足にも土嚢袋を巻いて素肌を隠していやがる。
一見、土嚢袋で作った人型のサンドバック人形だが、その中身は鋼鉄のモンスターだ。
物理防御力、魔法防御力ともに満点の数値。だが、素肌を見られていると動けなくなる。ペナルティーが高いからこその絶対防御力なのだろう。
そして、問題なのは馬鹿力もだ。
ミケランジェロが投擲した大岩を受け止め投げ返すだけじゃあなく、スレッジハンマーの一撃を頭で受け止めて見せやがった。
身体的なステータス値だけなら俺やミケランジェロに匹敵する。
あまつさえ、魔王になるとか戯れ言を宣言しやがった。
マジで馬鹿だ。
お馬鹿だ。
だが、馬鹿故に強いんだろう。
俺はメタルキャリアを睨み付けながらミケランジェロに声を掛けた。
「おい、ミケランジェロ。そいつを完封する必要は無いぞ。その被ってる土嚢袋を剥ぎ取ればこっちの勝ちだ。あとは姿を睨み付けていれば動けなくなるんだからよ!」
「分かってるぜ、アスラン!」
「おうおう、ちっとは頭の切れる奴が居るみたいだな。だが、俺はペナルティーが大きいからこそ、つえ~~んだぜ!!」
唐突にメタルキャリアが前にダッシュした。速いぞ。
全身が鋼鉄だからトロイかと思っていたが、スピードは有りやがる。
ミケランジェロに接近したメタルキャリアが右拳を振りかぶりながらジャンプした。
「俺の鋼鉄パンチで玉砕して見せるぜ!!」
えっ、玉砕しちゃうの……。
「甘いわっ!!」
拳を握りながら飛んだメタルキャリアをミケランジェロが膝蹴りで下から突き上げた。
「ぬぬっ!!」
モロに入った。メタルキャリアの勢いが死ぬ。
更にミケランジェロがスレッジハンマーを横にフルスイングした。メタルキャリアがカッキーーーンとスレッジハンマーで打ち飛ばされる。
飛んだメタルキャリアは石切場の壁に頭から激突して岩の中に真っ直ぐめり込んだ。
ちょっと間抜けな光景だな。
「どうだいっ!」
ミケランジェロがホームランをお見舞いした直後の四番バッターのようなフォームで決めポーズを取っていた。うん、格好良いじゃあねえか。
一方、打ち抜かれたメタルキャリアは上半身を岩の壁に埋めながら下半身を元気良くバタつかせている。
あんなフルスイングを食らっても、元気に動けるのかよ。マジで丈夫で元気なやっちゃな~……。
ジタバタすることで壁から上半身が抜けたメタルキャリアが前線に戻って来る。メタルキャリアは首を左右に振りながら余裕を語る。
「すげ~パワーだな~。でも、効かねえぜ。何故なら俺は鋼鉄の魔王だからな!!」
うん、こいつは馬鹿だ。台詞の一つ一つから馬鹿がプンプンと臭ってくるほどに馬鹿臭いぞ……。
「じゃあ、もうちょっと気合いを入れ直すかな!!」
蟹股で立っていたメタルキャリアが片足を横に大きく振り上げた。
「もしかして、四股?」
「どすこーーーい!!」
メタルキャリアの大胆なストッピングが地面を踏み締める。大地がグラリと揺れた。
大相撲の力士を真似た見事な四股踏みだった。高々と上げた片足で四股を踏みしめ気合いを入れ直したのだろう。
分かったぞ──。
こいつ、根性で何事も乗り切ろうとするスポコンタイプのキャラだな。だから馬鹿臭いんだ。
姿勢を戻したメタルキャリアが言う。
「冷静に考えてみれば、手足のリーチが違う上に、ハンマーなんて道具を持ってやがるんだ。真っ直ぐに攻めてたら駄目だよな。ここはスピードを生かして翻弄せにゃあ、近付けやしねえってことか!」
あら、作戦を考えてやがる。でも、それを口に出したらアカンだろ。こいつ、マジで馬鹿だよ。
「もう一度、行くぜ!!」
再びメタルキャリアがミケランジェロに向かって走り出す。今度はミケランジェロの寸前で左右に何度も飛んで敵を翻弄し始めた。
素早い左右の運動が繰り返される。鋼鉄の身体なのに機敏差も備わってやがるのか。だが、その翻弄を前にミケランジェロは冷静に対処する。
「単純なフェイントだ。その程度で俺が翻弄されると考えることじたいが、未熟極まりない!!」
左右に飛んでフェイントを見せていたメタルキャリアにミケランジェロはスレッジハンマーを横振りで攻める。
「左右に飛んでいるだけなら、横に殴るのが基本だ!!」
右から振られたスレッジハンマーがメタルキャリアの身体に迫る。
だが──。
「そう来るよな!!」
ジャンプ!!
メタルキャリアがミケランジェロの横振りスレッジハンマーをジャンプで躱した。スレッジハンマーが足元を過ぎる。
そのジャンプで攻撃を空振ったミケランジェロの頭部にメタルキャリアが背をしならせながら迫った。
「俺を馬鹿だと思って、舐めすぎなんだよ、サイクロプスのオッサンよ!!」
ジャンピングフック。
「ごほっ!!!」
ガゴンッと硬い音が響いた。メタルキャリアの土嚢袋に包まれた鉄拳がミケランジェロの顎先を横殴る。
ヤバイぞ、いいのが入った。その証拠に殴られたミケランジェロの膝が折れて身体が沈んだ。脳が揺らされ足に来たのだろう。
一つ目が白目を向いてやがる。こりゃあ、不味いぞ。脳震盪を起こしてやがるな。
そのままミケランジェロが尻餅をついてから後ろに倒れ込む。
「KOかよ……」
一発だ……。たった一発のパンチでサイクロプスをノックダウンさせやがったぞ……。
あの野郎、すげーハードパンチャーじゃあねえか……。何トンのパンチを繰り出したんだ……。
俺が唖然としていると、更にミケランジェロの全身が鋼鉄に変化し始めた。
「直接触られたのか!?」
「直接殴ったが、直接肌では触っていねえよ」
「じゃあなんで鋼鉄化するんだよ!!」
メタルキャリアは自信満々のドヤ声で言う。
「俺にKOされた野郎は、直接触らなくッても感染させられるんだぜ。凄いだろ!!」
「なんじゃい、それ……」
菌で感染してるんじゃあなく、魔力で感染させているのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます