18-12【大便の争い】

俺がミーちゃんに刺されて四日が過ぎた。


まだ俺はスカル姉さんの診療所で寝たきりだったが、上半身だけはベッドから起こせるようになっていた。


なので俺は身体を起こすと今朝からずっと、窓の外を眺めている。


でも、二階の窓から見えるのは人の流れだけだ。ありふれててつまらない。


この異世界にはテレビもスマホも無ければゲームも無い。ラジオすら無いんだぜ。


だから、入院ってのは退屈だ。漫画本すら無いから暇をもて余している。


窓から外を眺めても、つまらない。美人なお姉さんたちが多く立っているが、それも俺はマジマジと眺めてられないからな。


マジで糞女神の呪いが妬ましいぜ。


まあ、一日一回は誰かが見舞いに来てくれることが幸いである。


まだまだしゃべるのも若干キツイが、一人でボケっとしているよりはましだ。


まあ、誰も来なくてもスバルちゃんが朝から晩まで付き添ってくれているから、話し相手にも困らない。


スバルちゃんは本当に献身的に俺の面倒を見てくれる。


尿瓶を持ってくれたり、オマルで大便をするときは身体を横で支えてくれるのだ。


もうすっかり彼女の前で大便をするのにも慣れてしまった。


特に俺が大便を力んでいるときにスバルちゃんが恥ずかし気に視線を反らす素振りが可愛らしくてたまらない。


スバルちゃんはなかなか俺の大便に慣れてくれないが、まあ一ヶ月もあるから徐々に慣れてくれるだろうさ。


マジで感謝だわ。


スカル姉さんなんて俺の診察はしてくれるが、俺のウンコすら見てくれないもんな。


本当の姉弟のように暮らして来たのにマジでつれないわ~。


今度動けるようになったら診療室の机の引き出しに、こっそり出来立てのウンコでも忍ばせて置いてやろうかな。絶対に驚くだろうさ。


うんうん、動けるようになるのが待ち遠しいぜ。


それにしても、昨日の晩から悩みが増えたのだ。


それは──。


「こんにちわ~。昼食を運んできましたよ~んだ」


隣の部屋から声が聴こえて来た。オアイドスだ。


オアイドスの野郎が俺の昼飯を運んできてくれたのだ。


俺の食べる飯は三食魔王城前キャンプで作られて誰かが毎回運んできてくれる。だから飯には問題ないのだが……。


「ありがとうございます、オアイドスさん。さあ、私に食事を手渡して」


『ありがとうございます、オアイドス様。さあさあ、わたくしに手渡してくださいませ』


スバルちゃんとヒルダだ……。


昨日の晩から復活したヒルダが押し掛けて来て、スバルちゃんと争っているのだ。どちらが俺の面倒を見るかで、ずっと喧嘩している。


俺としてはスバルちゃんに面倒を見てもらいたいのだが、ヒルダにも普段からお世話になっているから無下にも出来ない。


何よりヒルダのほうが手際が良い。俺の好みも熟知しているしさ。


「さあ、オアイドスさん、その食事を私に手渡して」


『オアイドス様、その食事はわたくしがアスラン様に食べさせますから、わたくしに手渡してくださいませ』


「いや、あの、その……」


うんうん、オアイドスの野郎も困ってるな。そりゃあ困るだろ。


さて、どちらに手渡すんだろう、オアイドスの野郎は?


「オアイドスさん、私がアスラン君の面倒をずっと見ているのですから、私に食事を渡してください。それが道理ですよ」


『いえ、わたくしが普段はアスラン様の面倒を見ているのです。なので、わたくしに手渡してくださいませ。それが常識ですわ』


「アスラン君にご飯を食べさせるのも、下の世話をするのも私です。さあ、オアイドスさん」


『アスラン様に食事を食べさせるのも、下の世話も今後はわたくしが致しますから、オアイドス様、わたくしに』


「何よ、まだアスラン君の下の世話すらしたこと無いくせに……」


『それならば徐々に面倒を見て行きますわ』


「あなたにアスラン君のチ◯コの先を尿瓶に刺して支えられますか?」


『余裕ですわ』


「じゃあ、あなたにアスラン君が大便に力んでいる間、身体を支えながら肛門が狙いを外さないように監視できますか?」


『出来ます。それどころかわたくしが便器です』


何を淡々と言ってやがるんだ、ヒルダ……。


「に、肉便器になれると!?」


『メイドは肉便器属性ですから』


なに、その属性!?


そんな属性はRPGに存在しませんよ!!


「じゃあ、アスラン君のウンコを手で受け止められるのですか!?」


『手どころか口で受け止めます』


「「マジ!!」」


マジですかヒルダ!!!


オアイドスまでドン引きしながら驚いているよ!!


『スバル様、あなたにそこまでの覚悟がございまして?』


「あ、あるわよ!!」


スバルちゃん、無理しすぎ……。声が裏返ってますがな……。そもそも口で受け止めるなよ!!


『では、見せてもらえますか、その覚悟』


「み、見せるの……」


見せるって何さ!!


俺がスバルちゃんの顔面に又がりながら大便をするってことですか!!


それを横でヒルダがマジマジと鑑賞するってことですか!!


なんてワンダフル&デンジャラスな光景だよ!!


オアイドスが言う。


「もし良かったら、私も一緒に拝見してても良いでしょうか?」


「『駄目です!」』


「えっ、そんな!!」


駄目なんだ~……。これは三人だけのマル秘イベントなんだね~。


「じゃあ、ここにご飯を置いて行くからさ……。僕は退室するからゆっくり楽しんでくれたまえ……。ちぇ……」


どうやらオアイドスはトボトボと退場したようだな。


お前が「ちぇ……」って言うのも分からんではないぞ。だからあとは俺に任せろ。


『では、早速ですが、アスラン様にはモクモクとご飯を食べてもらって、モリモリとウンコを肛門に蓄えてもらいましょう』


「そ、そうですね……」


食事が乗ったお盆を持ったヒルダとスバルちゃんが病室に入って来た。


ヒルダはいつも通りクールで堅苦しいが、スバルちゃんは赤面しながらソワソワしていた。マジでこいつら俺に飯をたらふく食べさせて、モリモリっとウンコを垂れさせるつもりなのか……。


しかも女の子の顔面で……。


『アスラン様、昼食の準備が出来ました。今日の昼食は、下剤山盛りのお粥ですわ』


「な、なんで下剤山盛りなのさ……。それ、不味くない?」


体が弱ってるのに下剤山盛りって不味くないかい?


俺、更に弱って死んじゃわない?


『ちょっと訳あって、アスラン様にはモリモリと大便をもようしてもらいたくて』


モリモリどころかユルユルとしたウンコになっちゃうじゃん……。


「訊いてたぞ、ヒルダ。さっきの会話は、ここまで聴こえて来てたぞ……」


『アスラン様。ならば話が早いです。そういうことなので、ウンコのご準備を──』


「いやいやいや、ウンコの準備って、この作品を強制非公開に落とすつもりですか、ヒルダさん!!!」


『いいから早くお食べくださいませ』


言いながらヒルダが蓮華で掬われたお粥を俺の口許に無理矢理にも運んで来る。


「落ち着け、ヒルダ。慌てるな!!」


『これが慌てずにいられますか、えへへへへ~』


うわ、ヒルダがキモイ笑いを始めたぞ。これはヤバイ。完全に頭のネジが緩んで外れてやがるぞ。


「スバルちゃん、何をしてるん。早く助けてくれ!!」


「いや、だって、ほら……」


「だってほらじゃあねえよ。何をオマルを抱えながら照れてやがるんだ!!」


うわーーー!!


もう病室の中は混沌が渦巻いてますよ!!


これじゃあ落ちまで辿り着けないんじゃね!!


どう落とすのさ!!


その時である。


「あらあら、賑やかね。アスラン君」


「えっ?」


その言葉は、開いた窓の外から飛んで来た。


ミーちゃんだ──。


ここは二階だぞ。ミーちゃんは宙に浮いている。その手には丸くて黒い球体を盛っていた。


その球体の頭には導火線がついており、バチバチと火花が散っている。


爆弾だ。


点火済みの爆弾だ。


「テメー、ミーちゃん……。マジですか……」


「アスラン君、今度は吹き飛ばして上げるわよん♡」


そう述べるとミーちゃんは手に持った爆弾を、窓から俺の病室に投げ込んだ。俺の頭上を越えた爆弾がヒルダとスバルちゃんの背後に転がる。


マジでこの野郎は不意打ちや奇襲ばかりだな!!


「スバルちゃん、ヒルダ、逃げろ!!」


いたたた……。


大きな声を出したら背中が痛む。これは不味いぞ……。


チュドーーーーーン!!!!


俺は病室と共に爆破された。スカル姉さんの診療所から黒煙が上がる。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る