16-13【心の読み合い】
煌びやかな竜宮城の謁見室。
自らトライデントを手に取った乙姫は、俺の弱点を突くために人間の巨乳美女に変身して見せた。
ずるい……。
全裸なのに乳がデカイ!
もう目のやり場に困ってしまう。
てか、見てられない。
見てしまいたいが、見れば見たで心臓が痛み出すのだ。
相手の姿を見ないで戦う──。
それは可能だ。
足だけ見てれば何と無く動きが分かる。
足の運びで体捌きが予想できる。
踏み込み、踏ん張り、歩幅を見ただけで上半身の動きも予想できる。
それだけ俺も戦闘の経験を積んできたってこどだ。
「だが、わらわは心も読むぞ。下半身から上半身の動きを予想して戦えても、わらわにはお主が攻める刹那、守る刹那の思いが読める。それをどう打開して戦うつもりぞな?」
やばい……。
また心を読まれた……。
そうなんだよな、こいつは俺の心も記憶も読みやがる。
それも問題だ。
ならば、無になって戦うか──。
何も考えずに戦えるかな……?
俺、そんなに悟れてる?
悟れてませんな~。
「お主はそこまで戦いを極めておるのかえ?」
いや、ちょっと自信が無いですわ~。
「ならば、わらわに屈伏しろ。命までは取らんぞ。ただし、一生男体盛りの皿としての運命が待っておるがな」
だからそれが嫌なんだよ……。
もう、このわがまま乙姫様は、それが分かってないんだもんな。
黙って居ればスゲー美人なのに、実に勿体無い。
「誉めても見逃したりはせんぞ」
いやいや、マジだってばよ。
最初は歳からしてストライクゾーンから外れていると思ったけれどさ~。
なんつーか、変身して人間の肌色を見せてくれたらググッと得点がアップしちゃったんだよね。
何より俺は乳が大きい美人が大好きだからな。
「だが、この肌色は偽物だ。幻術の類いだぞ」
でも、乳のサイズは天然だよな?
「ああ、まあな……」
あー、畜生!!
もしも俺に呪いが掛かってなかったらさ、ガン見し放題で戦えたのにさ!!
飛んだり跳ねたりで、ユッサユッサ揺れる乳を見ながらぁらぁぁああただだだ!!
し、心臓がーー!!!
もうマジで悔やまれるわーー!!
そんでもってカッコ良く勝利したあとに、罰としてパフパフして貰ったのによぉおぉぉおおおお!!
いたたたったーーーー!!
「お主、わらわに勝ったら、そのようなふしだらな行為をさせるつもりだったのかえ!?」
乙姫の発言に周りで見ていた半魚人たちがヒソヒソと話し出す。
「あの人間は、乙姫様に何をしようとしているんだ?」
「分からんが、あの変態姫様が赤面するほどだから、相当卑猥な行為なんじゃあないか?」
周りの声が耳に届いたのか、乙姫が凛と表情を強めてトライデントの矛先を前に構えた。
「くだらぬ話はここまでだ。観念してお縄に付け!」
「ちっ、やっぱりやり合うのか……」
どうせなら盛り皿じゃあなくて、座布団のほうが良かったよな。
いや、人間玉座のほうがいいかもしれないぞ。
皿なんかよりも尻に敷かれるってシチュエーションのほうが俺としては好きなんだよな~。
そのほうがラブラブ感が満載で良くないか?
乙姫がボソリと言った。
「そう言うのも、わらわ的には有りぞよ……」
あれ、行けますか?
なんだよ、思ったよりも性癖的には合致するところもあるんじゃあないか。
「だが、空気椅子状態か?」
いや、四つん這い。
「四つん這いなら、ブリッチのほうが良くないかえ?」
ブリッチとはなかなか乙な姿勢だな!
周りの半魚人たちがヒソヒソと囁く。
「空気椅子とか、ブリッチってなんの話だ?」
「敗者が受ける拷問の話じゃあないか?」
頬をピンクに染めた乙姫が更に言う。
「ブリッチなら下からわらわの乳を思う存分に観賞できるぞ」
下乳アングルか!
うお、想像しただけで心臓が痛む!!
いたたた………。
「だ、大丈夫かえ!?」
ああ、心配要らねえよ。
このぐらいなら、まだ耐えられる。
「そうかえ、少し安心したぞ……」
あれれ、もしかして心配してくれてるの?
「な、何を抜かす!!」
周りの半魚人たちが呟く。
「何を抜かしたんだろう?」
「さ~。たぶんエロイことじゃないの?」
乙姫が凛っとした眼差しで述べる。
「やはり貴様はマグロがお似合いだわい!」
あー、俺がおとなしく下ってことね~。
でも俺ってば、まだ童貞なんだよな~。
乙姫の表情が瞬時に花咲いた。
「まことか!!」
うん、マジマジ。
恥ずかしいけれど、呪いのせいで女経験はゼロですわ~。てへぺろ♡
「そ、そうなのか……」
どうした乙姫、俯いたりして?
「実話言うと、わらわもゼロじゃ……」
えっ、マジで?
そんなにS気満点な女王様キャラなのに?
「ああ、ゼロじゃ……」
男も女も経験無しなの?
「無しじゃ……」
周りの半魚人たちが囁く。
「無しとかゼロとかってなんの話をしてるんだろうね?」
「いや~、もう変態同士の話だからノーマルな我々には理解不能だな」
それにしても勿体無い……。
周りの男たちは何をしてるのさ?
マーマンってヤツは甲斐性なしばかりか?
「ほら、わらわはS系だと周知されておるから、皆がおじけ付くんだわい……」
あー、勿体無い!!
俺に呪いが掛かってなかったら、間違いなくナンパしているのにさ!!
俺は半魚人でも全魚人でも、美人さんなら行ける口だからよ!!
鱗肌とかに差別は無いぜ。
「まことか!?」
でも、ほら、呪いが……。
「それなら、うってつけの伝説が有るぞい!」
えっ、伝説?
何それ?
「この死海エリアのボスであるクラーケンが体内に宿しておると言う、伝説の真珠だわい!」
伝説の真珠ってなんだよ?
チンチロリンに埋め込むようなエロイ真珠か?
「その真珠を砕いて飲めば、人魚姫の呪いすら解くとされている秘薬だわい」
呪いを解く秘薬だと!?
「昔の話だと、人魚姫の呪いは陸で暮らせるように足が生える代わりに声を失う秘薬で人間になったとされておるのじゃが」
あー、知ってる知ってる。人魚姫の物語だよね。
「その声を失うのは呪いだ。だが我々半魚人たちは、皆がしゃべれるし足も有る。何故だと思う?」
その真珠の秘薬で呪いだけを解いたからか!?
「その通りだわい。我らが祖先がクラーケンの一匹を倒して真珠を手に入れて呪いを解いた。だから今我々はこうして水陸両用の生物として繁栄しているのじゃぞ!」
呪いが解ける!!
クラーケンを倒せば呪いが解けるのか!!
「そして、晴れてわらわとお主は夫婦になれるぞよ!!」
へっ?
「へっ、じゃあないぞよ。何を真っ白になっているのじゃ?」
なんで俺がお前と結婚しないとならないのだ?
「へっ?」
あー、今度は乙姫が頭ん中が真っ白になっているようだな。
まあ、何か大きな誤解が生じたようだ。
それは早めに解いておこう。
そう考えた俺は最後に声に出して言った。
「俺、まだ誰とも結婚する気なんてないからさ」
「この結婚詐欺師めーーー!!!」
憤怒に任せて乙姫がトライデントを投げてきた。
大暴れである。
何故に突如乙姫がヒステリックを起こしたのかが俺には理解不能だった。
「これだから行き遅れの年増は困るんだよな」
「むっきーーー!!!」
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