16-11【盛り皿の心】

半魚人兵たちに取り囲まれた俺は腰に手を伸ばしたが空ぶった。いつもならあるはずの剣が腰には無い。


竜宮城上陸の際の儀式に付き合って全裸になったため、鞘ごと武器も異次元宝物庫にしまったんだった。


防具も装着していないし、困ったもんだ。ここまで非武装を晒して油断しすぎたぜ。


まあ、武器なら異次元宝物庫内に選り取り見取りだ。いざとなったら直ぐに取り出せる。だから問題無い。


黄金剣の二刀流にしようか、それとも斬馬刀で戦おうか、たまには別の武器で戦うのも悪くないだろう。迷っちまうぜ。


そんな考えを巡らせながら俺が異次元宝物庫を開こうと念じたが、何故か異次元宝物庫の扉が開かない。


「あれれ……、壊れた?」


そんなバカな!?


俺が慌て出すと珊瑚の玉座に腰掛けながら余裕に美脚を組む乙姫が言いやがった。


「抵抗は無駄じゃぞ。どうやら異次元に多くの武器を隠し持っているようだが、異次元とのアクセスを阻害させてもろうたわい」


「ええっ?」


俺が廻りを見回すと、宙に浮かび上がった魔道士風の半魚人が数人で何やら呪文を念じながら力んでいた。


凄い魔力が魔道士たちから俺の周辺に流れ込んでいる。


「この野郎、俺の異次元宝物庫を妨害してやがるな!!」


「くっくっくっ、観念せい」


余裕の表情を浮かべながら乙姫が述べる。


「わらわは思考を有した動物の心が読めるのだ。だから貴様の考えも読めるぞよ」


「考えが分かるのか!?」


「だから使わせんぞ。黄金剣も斬馬刀も」


うわ、読まれている。マジで完璧に心を読んでやがるぞ!!


それじゃあ俺が如何わしいヌルヌルとした妄想を巡らせたらバレちまうのか!?


「そう言う下品な妄想はよさぬか……」


やっぱり心を読まれているぞ。


じゃあ俺が初めて乙姫を見てちょっと年食ったねえちゃんだからストライクゾーンからそれてるわ~ってのも読まれて、それで兵士に俺を取り押さえようと命令したのか!?


「いや、それは違うぞよ。わらわが欲しいのは人間の器だわい」


なに、体が目的か!?


「そうじゃ」


ぐぐぐぅ……。


屈辱的だが、ここは殺されるより乙姫の生足をペロペロしてても媚びて窮地を脱出せねばなるまい。


「わらわの足を子犬のように舐めたいのか、うぬは?」


忘れてた。心を読まれてるんだった!


「わらわは嫌いじゃあないぞ。人間がわらわの足元に這いつくばって指先から足の裏まで丁寧に舐め回すのわ。それもまた一興よのぉ」


うわ、変態だ!!


この乙姫はかなりの変態だ!!


俺の妄想に乗ってきやがったぞ。


「なんだお主は媚びる気が無いのか?」


「あるわけないだろ!!」


「それは残念ぞよ。ならば兵士たちよ、そやつを捕まえて厨房につれてまいれ。食事の準備だわい!」


ええっ!!


俺を食うのか、こいつら!!


乙姫が口角を吊り上げながら言った。


「貴様らとて魚を食べるだろう。我々半魚人だって肉を食らう生物だわい。観念して厨房で料理されてこい。その姿のまま晩餐のテーブルに並ぶ姿を連想しただけで涎が溢れそうだぞよ」


うわ~……。やっぱりこの乙姫は変態だ……。ド変態だ……。しかもカンニバルだよ……。


俺は兵士たちに捕まり厨房に連れて行かれた。


そしてマーマンとマーメイドのシェフに生きたまま調理されてしまう。


それから一時間ほどすると俺は再び謁見室に運ばれて、調理した姿のままテーブルの上に他の料理と一緒に並べられたのだ。


テーブルの前に立つ乙姫が箸を持ちながら欲望に満ちた表情で言った。


「これは素晴らしい料理だぞよ。年に一度のおめでたい日に丁度良い料理だわい」


更に変態ネモ船長も箸をカチカチ言わせながら調理された俺の前に立つ。


「わざわざ生きた人間を騙してまで連れて来たかいがあったぜ。このような素晴らしい料理は久々だぞ!」


二人以外は料理された俺の姿を見ながら引いていた。


どうやらこれは、乙姫とネモ船長二人の趣味らしい……。


俺は大皿の上に横たわりながら述べた。


「なあ、これは一体なんだ……?」


大皿の上に寝そべる俺の上には生魚の刺身が綺麗に並べられていた。


俺を皿に見立てて刺身が盛り付けられているのだ。


乙姫が答える。


「男体盛りじゃわい」


「ダンタイモリ?」


女体盛りにょたいもりが雌なら雄は男体盛りだんたいもりじゃろうて」


「あー、なるほどね……。俺、女体盛りの男バージョンにされたんだ……」


これはこれで貴重な経験だな……。


「もう逃げも暴れも出来ないぞ。体には動けないようにマヒの魔法が施されている」


「うん、それは分かってる。じゃなければ一番に逃げてるわ……」


「それじゃあ乙姫様。そろそろ食事を堪能しようではありませんか」


「そうだな、ネモ船長。活きの良い男体盛りでも楽しもうぞ」


そして二人がニコニコしながら幸せそうに食事を始めた。


刺身の一枚一枚を俺の体から箸で拾い上げると旨そうに食べていった。


「ハグハグ。なかなか旨いですな、乙姫様」


「モグモグ。そうじゃのお。タイもブリも旨いのぉ~」


「じゃあ次に私は、この海ぶどうを頂きますぞ」


そう言いながら変態ネモ船長が俺のビーチクを箸で摘まむ。


「っ………」


やベェ……。ああ、声が出そうだ……。


「あれれ、なかなか掴めないぞ、この海ぶどう」


「そんなに大きな海ぶどうが掴めないか、ネモ船長。ならばわらわがチャレンジするから見ておれよ」


今度は反対側のビーチクを乙姫が箸で摘まみ上げようとする。


「っっ……」


「うむ、なかなか手強い海ぶどうだな」


「でしょう。なかなか掴みずらい海ぶどうですな」


二人は散々俺の両サイドのビーチクを摘まみ上げようと奮闘する。


十分ぐらいネチネチとビーチクを集中的に弄ばれた。


そろそろビーチクの先っぽが痛くなってきたぞ。


だが、ここで突っ込んだら敵の思うがままだ。


それどころか下手な反応を見せただけで、こいつら変態どもは喜んで調子に乗りやがる。


だから絶対に突っ込まないし、声すら上げるもんか!!


「ぅぅ……」


「つまらんの……」


「ですな……」


おっ、諦めたか?


よしよし、俺の勝ちだぜ!


「ならばわらわは次にナマコでも頂こうぞ」


そう言うと乙姫は俺の股間に箸を伸ばした。


ちょっとまてや!!


「なかなか良いサイズのナマコですな、乙姫様」


「これは一口では食べれんぞい」


あーー!!


やめてーー!!!


それは僕のチンチロリンなの~。箸で乱暴に挟まないで!!


「じゃあ私はその下に在るマリモでも頂きましょうかね~」


それはマリモじゃないわい!!


それは俺のおいなりさんだ!!


「わらわもあとでマリモを食するから、一つはとっといてくだされよ、ネモ船長」


「マリモは左右二つありますから安心なされよ、乙姫様」


うひょーーー!!


竿と玉の同時攻撃はやめてくれ!!


いぐーーーー!!!


「このナマコは大きすぎて箸では掴みずらいのお。この際だから箸で刺すか」


ダメーーー!!


そんな怖いことしないで!!


オシッコが出る穴が増えちゃうよ!!


こんな感じで俺は、一時間ぐらい二人に色々と辱しめられたのだ。


もう俺の体は汚れてしまった。これでは婿に行けないだろう。


だって生魚で生臭くなっちゃったんだもん……。



【つづく】


追伸。


竜宮城レストランでは男体盛りは一食一時間でサービス料金含め100万Gになります。


その他有料オプション有り。



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