14-19【自作ダンジョンからの帰還】
おいおい、なんだよこれは?
スコップだよな?
レベル40のお祝いがスコップですか?
なんかさ、わびしくね……?
んんー、でもマジックアイテムだな。
レベル40祝いのマジックアイテムなんだから、相当のマジックアイテムじゃなきゃあ許さんぞ、マジでさ。
まあ、どんなマジックアイテムかは知らんが、鑑定はいつも通りあとのお楽しみだ。
そんな感じで糞女神の部屋を出た俺は階段を下ってダンジョンに戻った。
すると目映い光が消えて世界がいろを取り戻す。
扉と階段が消えると時間が動き出したようだ。
「さて、煩悩を叶えてくれる水晶を探しだして、さっさと帰るかな」
俺は荒れた部屋の中を漁って、ついでに金目の物を物色した。
そして、部屋の中から幾つかのマジックアイテムや魔法のスクロールを見つけ出したが、件のマジックアイテムが発見されなかった。
水晶はこの部屋に無いのかな?
いや、そんなことは無いだろう。
ビキニノームだちは奥にあるって言ってたもんな。
だから何処かにあるはずだ。
ならば、お約束の隠し扉か隠し金庫がどこかにあるのだろう?
俺は荒らしまくった室内を一度見回した。
「あのタンスが怪しいぞ……」
部屋の隅に置かれたタンスが俺の目に止まった。
「怪しい~」
戦闘中のファイアーボールで激しく荒れた室内で、微塵も動いていないのはベッドとこのタンスだけだ。
そこが怪しかった。
「どれどれ~」
俺はタンスの周辺を念入りに調べる。
「あった、これだな」
タンスの中にレバーが隠してあった。
おそらく開閉のレバーだろう。
俺はトラップが無いかと調べたあとにレバーを引いた。
するとタンスがカチャリと音を鳴らして僅かに動く。
「開いたぜ」
タンスが動いて背後に隙間が現れた。
俺はそれを引っ張ってタンスを動かす。
案の定だ。
タンスの後ろから隠し階段が姿を現す。
「よし、とっとと済ますか」
俺は警戒しながら階段を下って行った。
トラップが幾つかあったが、解除したり回避したりで難無く進めた。
すると狭い部屋に出る。
その部屋の奥にはテーブルがあり、その上に座布団に乗った水晶玉がひとつ鎮座するように置かれていた。
「件の水晶発見。これが煩悩を叶える水晶だな」
俺は水晶玉を手に取ると、目をこらして中を覗き見た。
しかし、水晶玉の中に異常は無い。
怪しいけど見ため的にはただの球である。
だが、魔力感知で見てみれば、これがマジックアイテムなのは間違いなかった。
「まあ、これでゴールインってところかな」
よし、帰ろう。
俺はダンジョンをゆうゆうと引き返した。
それにしても結構長くダンジョンに入っていたかな。
何時間ほど入っていたかも分からない。
何せ途中で寝ていたもんな。
まあ、早く地上に帰ろう。
そして、道中でビキニノームたちに再会した。
「なあ、お前らはこれからどうする。レッサーデーモンも倒したから、もうお前らも自由だぞ」
「自由と言われても、行き場が無いよ。何せ、このダンジョンに落ちて来て十五年だもんな~」
結構な古株だな。
確かヒュパティア婆さんの話だと、ダンジョンを放置して十五年って言ってたから、ここが解放されて直ぐに入ってきたことになるぞ。
っうことは、このダンジョンをビキニで汚染したのはこいつらが原因か。
そう考えるとヤバイ変態どもだな。
ビキニノームたちがガヤガヤと話し出す。
「まだ地上の家は残ってるかな~」
「どうせオラは独り身だから、地上に帰っても仕方無いんだよね~」
「オラは皆と一緒に暮らせればなんでもいいだよ」
「オラはビキニがあればなんでもいいだ」
どうやら行き場の無い連中も多いようだ。
ならば魔王城の町に誘うべきか──。
いや、でもウザそうだしな……。
アインシュタインだけでもウザイのに、更にビキニの小人が増えたら更にウザそうだ。
すると、うだうだと話し合っていたビキニノームたちが俺の顔を見上げた。
そして訊いて来る。
「なあ、オラたちが暮らせるいい場所を知らないか?」
あー、もー、しゃあねえな~……。
「いま俺は町を作ってるんだ。良かったら来るか?」
「いいのか?」
「ただ働いてもらうぞ。町は開発中なんだからな」
「分かった、働く!」
「はーたらく、はーたらく!
こうして俺はビキニノームたちを引き連れて地上に戻った。
しかし、グレートプレーン平原は夜だった。
空を見上げれば、満面の星が無数に散らばっており、とても綺麗で鮮やかだった。
あれ、テントが建てられている?
俺がテントの中を覗き込むと中には寝袋にくるまったスバルちゃんが寝ていた。
「すやすや、すやすや……」
あー、ずっと待っててくれたんだ。
ヒュパティア婆さんの姿は無いな。
あのババァは薄情にも家に帰って暖かい部屋で布団にくるまりスヤスヤと寝てやがるんだろうな。
畜生ババァが……、死ね!
んー、あの何処でもドアは無いぞ。
これでは帰れないじゃあないか。
仕方無い、俺も寝て明日を待つか。
「おい、ビキニノームたち」
「「「なんだー?」」」
「町に帰るのは明日だ。今日はここで野宿だぞ。お前らはその辺で寝てろ。いいな」
「「「わかったー」」」
ビキニノームたちは寄り添いながらひとつに固まると、言われたように寝始める。
まるで小動物の群れが寒さに耐えるために固まっているかのようであった。
マジで素直だな……。
こいつらは命令に忠実だぜ。
たぶんルイレアールにダンジョンの清掃を命令されて、素直にダンジョンの中を徹底的に掃除していたんだろうな……。
それだけ真面目な小人なら、アインシュタインよりは使えるかも知れないぞ。
時代はホビットよりもノームか!?
でもビキニ姿だもんな……。
変態ルックだけに目を瞑れば問題ないだろう。
なら、いいか。
それじゃあ俺はテントでスバルちゃんと寝ようかな。
俺はスバルちゃんの寝ているテントに入ると寝袋の隙間から侵入を試みる。
「二人で寝袋に入れるかな?」
しかし俺がモゾモゾとしていると、突然ながら毒ガスのような悪臭が漂いだした。
「くさっ!!」
臭い!!
超臭い!!
寝袋の中から臭って来るぞ!!
臭い消しポーションが切れてるんだ!!
ヤバイ、鼻が曲がるどころか死んでまうぞ!!
俺は逃げるようにテントから飛び出した。
「どうしたんだ、人間?」
「「「「臭い!!」」」」
どうやらビキニノームたちの鼻まで悪臭が届いたようだ。
俺は悪臭を閉じ込めるようにテントの入り口を閉じる。
密閉した。
「すまん、俺も寝る仲間に入れてくれ……」
「「「「う、うん……」」」」
俺はビキニノームたちの塊に混ざって寝ることにした。
ビキニがキモイが悪臭よりましである。
「ムニュムニュ……。あったか~い……」
「おい、誰だよ。俺の股間をグリグリしてるのは……」
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