14-9【トロール登場】

俺は頭の潰れたアマゾネスたちの死体を部屋の隅に並べて胸の前で手を組ませてやった。


南無南無南無っと拝む。


残念なことにアマゾネスゾンビはマジックアイテムどころか金目の物すら何も持っていなかった。


ゾンビだから武器すら持っていない。


流石にマジックアイテムじゃあないビキニアーマーまで剥ぎ取るのは可哀想だから、それは止めておいた。


さて、気を取り直して探索を再開させるかな。


俺は部屋を出て奥の通路を進む。


再び狭い通路だったが15メートルほど歩いただけで隣の部屋に到着した。


部屋への入り口には扉が在ったが開いたままである。


俺はランタンの明かりを絞ると出入り口に近付いて部屋の中を覗いた。


暗闇の中は静かだったが気配を感じる。


「んん~、何か居るな……」


部屋の奥に大きな塊が二つある。


2メートルほどの塊なのだが暗くて良く見えない。


夜目スキルがあるのだが、これが限界だ。


しゃあないから俺はランタンで部屋の中を照らし出す。


再び殺風景な20メートル四方の部屋だった。


その部屋の奥にあるのは岩である。


岩には何か巻き付いている。


二つの変な岩が部屋の奥にあるのだ。


「うむ、不自然だ……」


俺は警戒しながら部屋に入る。


すると岩がグラグラと動き出した。


これ、生きてるよ!?


「人間の匂いがするぞ~?」


声!?


地の底から響いてくるような深い声だった。


だが、口調はどんくさい。


「また、人間のゾンビじゃねえのか~?」


「んんだ、違うぞ~。これは生きのいい匂いだ~」


「じゃあ、食えるのか~?」


「うん、食えるな~。旨そうな匂いだ~」


どちらも頭の悪そうな口調だった。


岩たちが会話をしている。


いや、岩じゃあないぞ。


俺がネーム判定をしたら【トロールです】っと返された。


二体のトロールが振り返る。


ずんむりっとしたデブい体型のトロール二体は木の棍棒を持っていた。


そして、何故か岩のような肌にはビキニアーマーを纏っている。


俺は愕然としながら声を溢した。


「なんでトロールがビキニアーマーを着てるんじゃあ……」


振り返ったビキニアーマートロールと目が合った。


すると岩の顔を微笑ましてトロールが述べる。


「人間だ~。しかも男だぞ~」


「本当だ~。よ~し、こいつを殺そう~」


おっ、早くも殺す気満々じゃあねえか。


よーーし、やったろうじゃあねえか!!


「これで、オラたちもビキニアーマーから卒業だ~」


「こいつの服を剥ぎ取って、着込んでやるぞ~」


「でも~、こいつは一体だ。だから服も一着だぞ~」


「じゃあお前が上着を着ろよ~。オラはズボンを履くからさ~」


「それだとオラはチンチン丸出しじゃあねえか~」


「気にすんな~、オラは乳首丸出しだからさ~」


「あはははは~。そりゃあいいや~~!!」


気にしろ!!


なんだこのビキニトロールズは!?


バカなの!?


バカですか!?


てか、追い剥ぎなの?


俺があきれていると、ドシンドシンと音を鳴らしてデブトロールが走って来る。


身長は2メートル20センチぐらいだろうか。


醜悪な顔に太った体は岩のよう。


太い腕に丸太のような棍棒を持っている。


そして恥ずかしげもないビキニアーマー。


股間がモッコリしているのが気持ち悪い。


もう、どこから見ても変態だ。


変態にしか見えない。


うん、殺そう!!


殺すしかない!!


俺は腰からゴールドロングソードを引き抜いた。


「服だけ残してミンチになれ~」


トロールが棍棒を袈裟懸けに振るった。


「遅い!」


トロールだけにトロイ。


俺は身を屈めながら横に躱す。


そこから走った。


ビキニトロールの周りを進んで二匹の背後を取る。


「容易い。こいつらパワーは強そうだが移動速度は低いぞ」


所詮はデブだ。


俺は背後からトロールの背中を斬りつけた。


「もろうた!!」


だが───。


ガキーーン!!


「なにっ!!」


俺の剣は硬い皮膚に弾かれる。


俺が斬ったのはブラの紐だけだった。


トロールの胸からビキニブラがホロリと落ちた。


岩ってレベルの硬さじゃあない。


鉄だ、鉄の塊だ。


「いやん、オラのブラが外れたわ~」


俺にブラの紐を斬られたトロールは、可愛らしく胸を押さえて踞る。


しかし、もう一体が俺を追って攻撃を振るう。


「ちょこまかすんな、俺の上着~!!」


トロールの振り向き様の横振り攻撃。


巨大棍棒が風を唸らす。


俺は棍棒を屈んで躱すと後方に退いた。


少し仕切り直す。


「んんー、破壊力が足りないのかな?」


ならば──。


「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、ディフェンスシールド、フォーカスアイ、ファイアーエンチャントウェポン!!」


次々に唱えられるエンチャント魔法を帯びた俺のからだが様々な色に輝いた。


筋肉が引き締まり、集中力すら研ぎ澄まされる。


そして黄金剣が炎に包まれた。


攻撃力アップのついでに防御力も上げといたのだ。


「まてこら、上着!!」


「ライトニングボルト!!」


「ギィァアアア!!」


よし、魔法が効いたぞ!!


「とうっ!!」


俺はジャンプ一番で飛びかかった。


「かーらーのーー!」


俺は上段に大きく構えて黄金剣を振りかぶっていた。


そこから──。


「ヘルムクラッシャー!!」


全力に攻撃スキルを乗せた兜割り。


攻撃力1.5倍の一撃だ。


その一撃がビキニトロールの顔面を切り裂いた。


「うぎゃぁあああ、顔が~!!」


片手で顔を押さえながらよろめくビキニトロール。


浅いか!?


だが切れた。


切れれば殺せる。


「もうブラなんか要らないぞ~!」


ブラを切られたビキニトロールが、そのブラを投げ捨てた。


ノーブラで駆け寄って来る。


「ライトニングボルト!!」


「ギョェエエエ!!」


同じ作戦だ。


まずは魔法で怯ませてからの本命攻撃に続く。


「食らえ、ダッシュクラッシャー!!」


3メートルダッシュで一気に間合いを詰めた俺の残撃がノーブラトロールの膝を攻めた。


刀身が脛にめり込みガンっと音が響く。


「ぬぬっ!!」


剣が膝に食い込んだ。


だが、足を切断までは行かない。


「ちっ!!」


剣が骨に食い込んだところで止まって抜けないぞ。


「痛いー、痛いぞー!!」


そして、ノーブラトロールが膝の痛みに悲鳴を上げながら闇雲に棍棒を振るった。


その一振りが俺の肩に当たってしまう。


「のわっ!?」


強い衝撃に俺の体が吹っ飛んだ。


燃え上がる黄金剣から手を放してしまう。


「いてー、俺の肘がー!!」


いや、肘じゃあない、膝だ……。


「糞ぉぉ、オラの美顔がぁぁああ!!」


いや、デブで酷い顔だぞ……。


いやいや、突っ込んでる場合じゃあ無いぞ。


俺は異次元宝物庫から斬馬刀を取り出した。


その斬馬刀にファイヤーエンチャントを施す。


「一気に攻める!!」


「仕返ししてやるぞ、上着!!」


俺が走ると顔を切られたビキニトロールも走り出した。


俺とトロールが激突する。


「のわぁあああ!!」


「どぉらぁあああ!!」


俺の斬馬刀とビキニトロールの棍棒が鍔迫り合いを繰り広げる。


やはり凄いパワーだぜ。


俺が押されてる。


こりゃあアカン。


俺は身を躱して鍔迫り合いから逃げた。


「おっとっとっ……」


俺が横に逃げると勢い余ったビキニトロールが前のめりに倒れた。


俺は四つん這いに倒れたトロールの延髄を狙って斬馬刀を振るう。


「ワイルドクラッシャー!!」


ガンって音が鳴った。


斬りつけた斬馬刀の刀身がトロールの後ろ首に半分ぐらい刺さっている。


流石は攻撃力2.5倍のスキルだぜ。


「ぐはぁっ!!」


四つん這いのビキニトロールが血を吐いた。


刀身が脊髄を切り裂き食道にまで到達した証拠だ。


「ち、くしょ、う……」


まだ、生きてる!?


まだ、倒れない!?


まだ、しゃべれるのか!?


「すげ~生命力だな!」


俺は斬馬刀から手を離すと異次元宝物庫からウォーハンマー+1攻撃力の向上を取り出した。


それで斬馬刀の刀背を打った。


その一撃で更に斬馬刀の刀身が首に深く食い込んだ。


「もう、一丁だ!!」


二擊目のウォーハンマーでビキニトロールの姿勢が力無く前に崩れた。


尻を突き上げ顔を地面につけて動かなくなる。


ビキニトロールの首は皮一枚で繋がっている状態だった。


まず一体撃破だ。


「良くも仲間を~!!」


ノーブラトロールが俺の黄金剣を振り上げながら走って来る。


「あっ~、俺の愛剣を!?」


それよりも、あいつ走れるの?


あれ、膝が治ってやがる。


トロールには強い自己再生能力があるって聞いたことがあるが、ここまで速く再生するんだな。


「もうお前の服はオラ一人の物だ~。服以外全部細切れにしてやるぞ~!!」


無茶苦茶に振るわれる黄金剣の攻撃は速い。


流石は俺の愛用武器だぜ。


だが、剣技が幼稚だ。


穴だらけである。


どんなに優れた武器でも使い手がこれでは宝の持ち腐れであろう。


「それっ!!」


俺は見つけた剣筋の穴を突いてウォーハンマーを振るった。


槌頭の一撃がノーブラトロールの顔面を撃ち殴る。


「ぐはっ!!」


まるで釣りかねを叩いたかのような感触。


硬いが空っぽ感がある。


たぶん脳味噌が入ってないからだろう。


その一撃でノーブラトロールの前歯が飛んだ。


「歯がぁ~!!」


あれ、ハンマーのほうが効いてるぞ。


あー、なるほど。


俺は刃物で岩を切ってたから悪かったんだ。


岩は【切る】より【砕く】のほうが効果的なんだね。


ならばこのままウォーハンマーで行くぜ!


続いて──。


「そぉ~~ら!!」


俺は顔を押さえているノーブラトロールのビキニパンツを下から掬い上げるようにウォーハンマーで叩いた。


ゴーーーンっと音が鳴る。


「ぐはっ!?!?!?」


頭も股間も釣り鐘のような感触がしたぞ。


どうなってるんだ、こいつの頭と玉は?


「うがぁぁ……、キャンタマがぁ~……」


ノーブラトロールが股間を両手で押さえながら前のめりに倒れた。


一体目と同じように顔を床につけて尻を高く上げている。


違うのは、まだこいつは生きている。


「餅つきのように滅多打ちにしてやるぜ!」


言いながら俺はウォーハンマーを振り上げた。


「オラ、オラ、オラ、オラ、オラ!!」


後頭部を複数打の滅多打ちである。


そして、とどめにスキルを乗せた。


「ヘルムクラッシャー!!」


「ぐはぁ………」


俺はノーブラトロールの後頭部をウォーハンマーでボコボコのタコ殴りにしてやった。


やがてノーブラトロールは動かなくなる。


勝ったぞ!!


ビキニトロール、ノーブラトロールを撃破。


この戦いの教訓は、硬けりゃ斬らすに砕けである。



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