14-8【ビキニアーマーのアマゾネス】
俺が知ってるアマゾネスの知識は乏しい。
まずジャングルに住んでいる女性だけの戦闘部族だとか──。
そして何よりビキニアーマーだとか──。
子孫の繁栄は、たまにジャングルに迷い込んだ旅人男性を拐って子作りにはげむぅぅううう………。
ぜぇはー、ぜぇはー……。
セーフ、セーフだ……。
まだ、そんなにエロイ妄想はしてないぞ……。
まあ、俺が知っている情報が煩悩に歪められたファンタジーだとしても、そのぐらいしか知らない。
一部説ではヴァルハラのバルキリーをモデルに昔流行っていたターザン伝説との掛け合わせた映画の脚本が元だとかも言われているが、その辺の真相を俺が確かめる術が無いのだ。
せめてネットがあればルーツぐらい確かめられたのにさ。
この世界は情報確保が難し過ぎるぜ。
まあ、どうでもいい。
それより何よりだ。
この被害者が残したダイニングメッセージが意味する犯人がアマゾネスたちだと述べているのが大切だ。
そうなのだ!
今回の敵はムッチムチなナイスボディーが期待できるアマゾネスお姉様たちなのだぁあだっだたただだっ!!
うぐー、呪いがー!!
ぜぇはー、ぜぇはー……。
危ねーなー……。
今回最大の敵はアマゾネスじゃあなくって、この呪いかも知れんぞ……。
マジで気をつけないとなるまい……。
とりあえず俺は仏さんに手を合わせてから部屋を出た。
また長い廊下が続く。
人が一人通れる程度の幅の通路だ。
乾いた煉瓦が埃っぽい。
そして、何回か右や左に曲がる道を進むと鉄扉に行き当たる。
おそらく曲がり角の数々は、方向感覚を惑わす小賢しいトリックだろう。
マップの制作を妨害しているのだ。
曲がり角は直角ではなかったので、これだとマップ制作は難しくなっている。
方位磁石だけではどうにもならない。
なんか簡単にダンジョンのマッピングができるスキルが欲しいもんだぜ。
てか、魔法でも良しなんだが。
それよりもだ。
俺は眼前の鉄扉を丁寧に調べた。
トラップは無いし、鍵も掛かっていない。
ただし鉄扉の下には鉄の楔が挟められていた。
おそらくあの白骨化死体が楔を挟めたのだろう。
そうなると、自分で自分を閉じ込めたことになる。
そうなってでも、この扉の向こう側の連中に、こちら側に来てもらいたくなかったってことになる。
俺は表情を引き締めながら言う。
「居るな。この扉の向こう側にアマゾネスお姉様たちが居るんだ!!」
それだけで心が弾むぜ!!
ひゃっはー!!
俺は心を浮かれさせながら鉄の楔を外した。
そして、にやけ顔で外した楔を後方に放り投げる。
床を跳ねた鉄の楔がカランカランと音を立てたが気にしない。
ドキドキしながら俺はノブを引いて鉄扉を開けた。
もしもこの向こう側がお風呂だったらどうしよう!
そして「アスランさんのエッチ!」とか言われちゃうのか!!
うひゃーーー!!
心臓が痛いーーー!!
でも、楽しいよーーー!!
落ちつけ、俺ーー!!
今は我慢だ!!
テンションを保つんだ!!
そうだ、深呼吸しよう……。
すーはー、すーはー。
よし、落ち着いた。
じゃあ部屋に入るぞ。
俺は浮かれながらも警戒して部屋に踏み込んだ。
すると目の前には暗い部屋が広がっていた。
「広いな……」
20メートル四方ぐらいなりそうだ。
お風呂じゃあない。
しかし、足元は石畳。
俺が部屋に踏み込むと、部屋の奥で何かが揺れた。
「影? 人影か……?」
部屋の奥で人影が揺れていた。
俺がランタンを高く上げて照らしながら歩くと人影に明かりが当たる。
背中だ。
十人ほど居るが、全員俺に背中を向けている。
長い髪、短い髪、金髪、銀髪、茶髪、黒髪、ポニーテールにツインテール。
様々な髪型の女性の背中だ。
そして何より俺を歓喜させたのは、その過激な衣装だった。
後ろから見てもはっきりと分かる素晴らしい衣装は煩悩に名高いビキニアーマーだ。
背中で結ばれたブラに、プリっとしたお尻を包む三角のパンツ。
中にはハイレグや紐パンを履いてる者も居る。
「ああ、神様ありがとう。今俺はこの世の楽園に到達した気分ですよ。あたたた……」
心臓が痛む……。
ああ、涙が出てくる。
これは痛みのせいかな、それとも歓喜のあまりに涙がこぼれるのかな……?
しかし、我慢だ!
今日だけは、今だけは、この楽園を堪能するのだ。
呪いになんて負けてられるか。
そして、神を称える俺の言葉を聞き付けたビキニアーマーのアマゾネスお姉様たちが振り返った。
「あががぁがぁがああがあ~……」
えっ、なんでそんなに声が枯れてるの?
「うがあがぁががあががぉあ~……」
んん~~……。
すげー、フラフラしてない?
「うごぉがあががかぉがあがが~……」
なんでそんなに顔が青いの?
中には紫な乙女も居ますよ?
目なんか死んだ魚のように濁ってるしさ……。
「あががぁがぁがああがあ~……」
うん、ゾンビだ……。
「うがあがぁががあががぉあ~……」
やっぱりゾンビだ。
「あががぁがぁがああがあうがあがぁががあがだがぉあっうごぉがあががかぉがあがが~!!!!」
「ひぃーーー!!!」
一斉に襲って来た!!
アマゾネスゾンビの数は十体ぐらいだ!!
数が多くね!!
って、あれ??
遅くね?
アマゾネスゾンビたちが両手を伸ばして向かって来るが、なんだか移動が遅いぞ?
いや、もしかして?
俺が強くなってるから遅く見えているのかな?
うむ、正解かも知れんぞ。
何せ相手はアンデッド最下級モンスターのゾンビさんだもんな。
もう俺の敵じゃあないよね。
「よし!」
俺はランタンを床に置くと武器を取らずに前に走った。
「俺の期待を絶望に変えた罪を償え!!」
走った俺がアマゾネスゾンビの中央に無手で飛び込んだ。
「おらっ!!」
いきなりのフルスイングパンチ。
野球のピッチングホームを連想させる全力パンチがアマゾネスゾンビの顔面を打ち殴った。
グシャリと拳が彼女の顔面にめり込む。
ああ、腐ってやがる……。
ちょっぴりキモイ……。
「うらっーー!!」
だが俺はめり込んだ拳を振りきった。
するとアマゾネスゾンビが勢い良く頭から床に倒れ込む。
あまりの勢いで下半身が跳ね上がり、ビキニパンツのお尻が俺の頭の高さまで跳ね上がっていた。
「俺の夢を返せ!!」
続いて左のロングフックを振るう。
その鉄拳がアマゾネスゾンビのこめかみを殴ると、彼女は錐揉みしながら飛んで行った。
そして、他のアマゾネスゾンビを巻き込んで、ゴロゴロと床を転がる。
「俺の願望を返せ!!」
今度は右のロケットアッパーでアマゾネスゾンビの顎を打ち上げた。
顎が潰れたアマゾネスゾンビの体が真上に跳ね上がり、3メートルほどある高さの天井に頭を激突させてから落ちて来る。
「俺の即席ハーレムを返しやがれ!!」
また一体を殴り倒す。
「畜生!!」
また一体を蹴り倒す。
「こん畜生が!!」
俺は次々とアマゾネスゾンビを殴り倒したり蹴り倒していった。
容易い──。
もうゾンビじゃあ敵にもならない。
数分もしない内に、俺は素手ですべてのゾンビを倒していた。
すべてのゾンビを無手で撃破したのだ。
立ち尽くす俺の周りに頭が砕けたゾンビなアマゾネスお姉様たちが転がっていた。
「虚しい……」
なんだろう、この虚しさは……。
ハーレムって、やっぱり幻なのかな……。
ビキニアーマーに罪無しだわ……。
すべてはヒュパティア婆さんが悪だぜ!!
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