13-31【グールチームとの決着】
「グルグルグルゥ!」
巨漢オークグールが片足で足元の死体を蹴り払う。
足の踏み場を作ってやがるぞ。
やっぱりグールってゾンビと違って賢いんだな。
だから背中に潜んで居たゴブリングールは、今の今まで姿を隠していたんだ。
確実に殺れると思った時にしか出て来ないって戦法かよ。
さて、どうするかな……。
作戦らしい作戦が今一思いつかない。
マントの中に潜んで居るゴブリングールが、どう動くか予想がつかないせいだ。
先が読めない……。
読めないなら考えない──、かな。
行き当たりばったりで行くしかねえか。
「それっ!」
俺は思い付きで動いた。
戦斧を足元に振り下ろし、死体の首をスパリと跳ねる。
その切断されたオークグールの首を足の甲に乗せるとサッカーボールのように蹴り上げた。
リフティングだ。
俺って上手いな。
もしかしたら前世はプロサッカー選手だったんじゃね。
「それっ!!」
そしてボレーキックで生首を蹴り飛ばす。
蹴り飛んだ生首が巨漢オークグールの上半身に迫る。
それを巨漢オークグールが反応して、兜割りで頭を真っ二つに斬り裂いた。
「そりゃっ!!」
今度は俺が飛んでいた。
横振りの戦斧で巨漢オークグールの首を狙う。
巨漢オークグールはグレートアックスを振るったばかりで反応できない。
俺の振るった戦斧が喉に刺さったインセクトクローナックルのお尻を強打した。
「グッハァッ!!」
更に深く鍵爪が喉に食い込むと口から汚い血が飛び散った。
しかし、致命傷には程遠い。
まあ、この程度で決まらんだろう。
この程度で決まるようならこいつもグールなんてやってないよね。
「ならば──」
俺はそのまま巨漢オークグールの横を走り過ぎる。
そして背後から広い背中に一撃を入れた。
「それっ!!」
「ギィア!!」
マントの中から悲鳴が聞こえてきた。
ゴブリングールの悲鳴だろう。
すると千切れた腕と、片腕を失くしたゴブリングールがズルリとマント内から落ちて来る。
「ハロー」
「キィーーー!!」
片腕を失くしたゴブリングールが狂ったように飛びかかって来た。
「おっと!」
しかし俺は戦斧の一振りで反対の腕も斬り落としてやった。
「ヒグゥーー!!」
それでも怯まないゴブリングールは、一度着地すると更にジャンプして飛び掛かって来る。
どうやら噛み付くつもりらしい。
だが、俺はバトルアックスで盾を作る。
その盾にゴブリングールが顔を激突して止まった時であった。
巨漢オークグールが振り返りざまにグレートアックスを横一文字に振るったのだ。
その一振りがゴブリングールの胴体を、軽々と真っ二つに斬り裂いた。
あら、まあ、同士討ちだ。
上半身と下半身がお別れしたゴブリングールが地面に転がった。
「キャン!」
アンデッドだけあって死んでいないが、両腕と下半身を失くしたゴブリングールは芋虫のように踠いている。
俺はそんなゴブリングールを無視して巨漢オークグールに向かって再び飛んだ。
「それっ!」
俺の飛び蹴り。
足刀で顔面に刺さっているダガーを押すように蹴り付ける。
ダガーが更に深く頭に刺さった。
それでも巨漢オークグールは止まらない。
巨漢オークグールはグレートアックスを袈裟斬りに振るって来る。
俺は上半身を斜めに反らして大型戦斧を躱す。
そしてバトルアックスで巨漢オークグールの膝を外側から打ち殴った。
「りいぁ!!」
ゴギッ!!
手応えがあった。
ガンっと派手な音が鳴ると、太い足の膝関節が、曲がらない方向にぐにゃりと曲がった。
「うしっ!」
ゴギリと鈍い音が聞こえたぞ。
骨が折れたな。
それでも巨漢オークグールは、倒れる瞬間にグレートアックスを振るう。
俺はその一打を飛んで躱すとバトルアックスを空中で振り上げた。
巨漢オークグールは腹這いに倒れる。
その背中に向かって降下する俺は、延髄を狙ってバトルアックスを振り下ろした。
「首を跳ねてやるぞ! ヘルムクラッシャー!!」
だが、マントの中から新たなゴブリングールが飛び出して来た。
えっ!?
二匹目だと!!
「シャーーー!!」
二匹目のゴブリングールがダガーを俺の体に突き刺した。
左肩の付け根にダガーが刺さる。
ちっ、丁度鉄腕の付け根だった。
痛いっ!
それでも浅い!!
「ライトニングボルト!!」
「ギィァアアア!!!」
電撃魔法を至近距離で食らったゴブリングールの体がスパークしながら吹き飛んだ。
丸焦げになった死体が壁まで飛んで激突する。
まさか二匹も隠れて居るなんて思わんかったわ。
「グルッ!!」
「うわっ!?」
組みつかれた!?
片足で立ち上がって来た巨漢オークグールに抱きつかれる。
ベアーハッグだ。
臭っ!!
スゲー臭うぞ!!
腐敗臭が刺激的だぜ!!
それよりも───。
「ウガアーー!!」
「ぐぐっ……」
俺の体が怪力で締め上げられる。
力む巨漢オークグールは片膝立ちだ。
俺の両足は地面についているし、両腕はフリーだった。
まだ戦斧も手にある。
だがここは派手に決めたい。
俺は戦斧を捨てると、体を締め上げる巨漢オークグールの両腕に自分の両腕を回して抱え込む。
「閂スープレックスだ、こん畜生!!」
しかし、重い……。
やべ、投げられないかも……。
ちょっとまずったかな……。
俺が若干の後悔をしていると、巨漢オークグールの背中からダガーを持った細い手がニョキっと見えた。
えっ……、三匹目が居る!!
不味い、マジで早く投げないと!!
俺は全力で踏ん張った。
「おりゃぁああああ!!!!」
巨漢オークグールの体が浮いた。
背を反らした俺の臍に乗っかって、頭から後方に落とされる。
「閂式反り投げの成功じゃあ!!」
ゴンっと鈍い音が響いた。
巨漢オークグールは脳天をモロに石畳の上に打ち付けたのだ。
「ふぅ~~」
安心感から溜め息が出た。
巨漢オークグールの腕力から解放された俺が立ち上がる。
まだ巨漢オークグールは動いていた。
それでも動きが鈍い。
痙攣しているな。
アンデッドでも脳震盪ってするんだな。
俺は片足を高く上げた。
その足を倒れている巨漢オークグールの顔面に刺さったダガーに落とす。
踏みつけられたダガーが更に深く刺さって根元まで見えなくなる。
それで巨漢オークグールの動きが止まった。
ダガーが脳髄まで貫いたのだろう。
その寝そべる背中に、巨漢で潰された三匹目のゴブリングールの腕が見える。
三匹目のゴブリングールも動いていない。
オークグールの体重に頭でも潰されたのかな?
まあ、とにかく勝ったぜ。
「ふう……。これでグールどもは殲滅できたかな……」
できてたらいいな。
ちょっと疲れたわ~。
肩の傷にセルフヒールしとこっと。
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