13-29【鉤爪の武器】
俺が地下鍛冶屋の部屋を出て螺旋階段を上がり出したころである。
上のほうからスケルトンナイツが列をなして下りて来るのが見えた。
がシャンがシャンと甲冑を弾ませ駆けてくる。
数は五体だ。
手には盾や剣を装備している。
階段は狭い。
だから一体ずつとしか戦闘にならないだろう。
左側が壁で、右側が奈落だ。
よし、じゃあ戦うか。
「ジャジャーーン!」
俺は異次元宝物庫から熊手のようなガントレットを取り出した。
【インセクトクローナックル+1】
インセクトに物理ダメージが向上する。
確か巨大昆虫の森で手に入れたマジックアイテムだったと思う。
よく覚えていないけれど……。
違ったかな?
まあ、巨大昆虫の爪だか角だか三本で作られたガントレット式の熊手だ。
前々から使おうと思ってたから、今回使ってみる。
虫属性とはまったく関係ない特性だがスケルトンナイツなら、これで十分だろうさ。
「よし、行くぜ!」
スケルトンナイツとのタイマン五連戦が始まる。
一体目は盾に剣を持ったスケルトンナイトだった。
向こうのほうが高い位置だから、俺のほうが不利な立地である。
だが俺はスケルトンナイトが振るった剣を熊手の内側で受け止めると、そのまま剣を鍵爪で引っ掛けて力任せに引っ張った。
するとスケルトンナイトが階段を踏み外して奈落に落ちて行く。
「一体目、ばいばーい」
更に次のスケルトンナイトの盾に熊手を引っかけると力任せに引っ張って、同じように奈落の底に落としてやった。
「二体目も、ばいばーい」
更に三体目だ。
スケルトンナイトが俺の頭部を狙って振るった剣を俺は鋼鉄の左腕で防ぐと熊手で足を引っかけた。
そのままバランスを崩したスケルトンナイトを奈落の底に落としてやった。
「更に三体目も、ばいばーい」
さて、四体目は長槍を持っている。
俺はその長槍の突きを壁に飛んで躱すと、三角飛びで奇襲する。
空中を舞う俺は、スケルトンナイトの顔面を鍵爪で引き裂いてやった。
その攻撃で力無く崩れたスケルトンナイトの四体目が奈落に落ちて行く。
「連続して、ばいばーい」
ラスト五体目は盾に手槍だ。
これは少し厄介な組み合わせの武装だが、実力の差が大きいだろう。
俺は鋼鉄の左腕で手槍を弾くと熊手の鍵爪で盾を引っ掛けガードを抉じ開けた。
そこからのジャンピングニーパットだ。
俺の膝がスケルトンナイトの顎にめり込んだ。
スケルトンナイトの顎骨が二つに割れる。
しかしまだスケルトンナイトは立っていた。
俺は着地と同時にアッパーカット気味に熊手を振るった。
「うらっ!!」
巨大昆虫の爪がスケルトンナイトの鎧を股間から上って胸まで切り裂いた。
その一撃でスケルトンナイトが前のめりに倒れて階段を滑り落ちて行く。
「最後のナイト様、ばいばーい」
よし、楽勝で全勝だったぜ。
たぶんあいつらもマジックアイテムを持っていただろう。
あとで螺旋階段を下りるだろうから、その時に回収しよう。
そして俺は螺旋階段の中腹に有る通路まで辿りついた。
この通路を戻れば落とし穴がある最初の部屋だ。
たぶんさっき戦った五体のスケルトンナイツは、螺旋階段の上から下りて来たのだろう。
だとすると、まだまだ上にはスケルトンナイトが居るのかな?
まあ、いいか。
まずは戻って魔王軍のエリアに進もうかな。
あっちに居るのはオークグールだったよな。
まー、よくも500年間もグールを続けていられるよ。
完全に肉体が腐れ落ちないのかな?
グールになった時点で腐敗の時間が止まっているのかな?
まあ、なんにしろだ。
この先にオークグールが居るのは変わりないってことだ。
さてさて、こっちには何があるか楽しみだぜ。
出来れば宝物庫が出て来てもらえると助かるんだがな~。
そんな簡単には行かないか、たぶんさ。
俺は落とし穴の部屋を過ぎて狭い廊下を進んで行く。
すると開きっぱなしの扉に行き当たる。
木製の分厚い扉だった。
それを潜るとアーチ型の天井が続く廊下の中腹に出る。
幅の広い廊下が左右に続いていた。
通路の幅は7メートルほどだ。
アーチ型の天井は5メートルほどの高さがある。
通路の壁には5メートルほどおきに柱があり、消えた松明が刺さっていた。
もう消し炭だ。
火を付けても点火されないだろう。
俺は床を眺める。
「足跡があるな」
俺の視界には足跡感知スキルで複数の足跡が見えていた。
素足の大きな足跡だ。
オークグールの足跡だろう。
それは通路の左側から続いていた。
右に進んだ足跡は無い。
左側から来て、この脇道に曲がっている。
ならば左から捜索かな。
俺は右手にインセクトクローナックルを構えて、左手に虫除けのランタンを翳して進んだ。
トラップにも十分気をつける。
俺が幅の広い通路を進んでいいると、端々に死体がちらほらと見え始めた。
もう白骨化した死体だ。
それでも分かった。
オークやゴブリンの死体だろう。
頭蓋骨が人でも獣でもない形をしている。
おそらく魔王軍の死体だろうさ。
そして、どのぐらい進んだだろうか……。
闇の向こうで何かが揺れた。
人影だ。
いや、大きな体格からしてオークの影だ。
オークグールの登場だろうさ。
一体じゃあない、団体だ。
闇の中からユラユラと進み出て来るアンデッドの群れは、オークグールだけじゃあなかった。
オークグールの足元には小さな影も蠢いていた。
「モンスターネーム判定──」
【ゴブリングールです】
あらまー、本当にグールだらけのエリアだな、
オークグールもゴブリングールも様々な武具で武装していた。
数も多い。
各種十体以上居そうだった。
いや、二十体ずつは居るかも知れない。
「ならば軽く露払いだ!」
掌に気を集中させて火球を作り出す。
「まずはご挨拶代わりにファイアーボールだ!」
俺はファイアーボールをアンデッドの群れに投げ込んだ。
一発、二発、三発とだ。
通路内に爆音が轟き爆風が吹き荒れる。
だが、爆炎の中からアンデッドどもが走り出て来た。
腐っている上に飢えた顔が恐ろしい。
「まあ、少しは間引き出来ただろうさ」
俺も走った。
突進する。
「おうらっ!!」
飛び蹴りでアンデッドの群れに飛び込むと、蹴り足の一撃でオークグールの首を蹴り飛ばす。
そして着地と共に鍵爪でゴブリングールの頭を引き裂いた。
「ひゃっはー!」
大乱闘の始まりだった。
だが、所詮は有象無象の集まりだ。
俺の敵では無い。
数分後には容易く壊滅させていた。
動かなくなったアンデッドの遺体が床いっぱいに転がっている。
「まっ、こんなもんだな。どれどれ、マジックアイテムはっと……。あれ?」
まだ霊気が近くに有るぞ?
闇の向こうだ。
まだ居るな。
やがて闇の向こう側から歩み出て来る巨大な影が一つ。
それは普通のオークグールより大きい。
「巨漢だねぇ……。こりゃまた大きなオークグールだこと。エルフのアンドレアと同じぐらいのサイズじゃね」
そのオークグールは身長2メートル20センチは有り、体重も200キロ以上有りそうだった。
まさに巨漢だ。
そのデブデブ巨漢が黒いフルプレートアーマーを着込んでいる。
前座のオークグールやゴブリングールよりも遅く出て来たのは、体が重たく足が遅かったからだろう。
それに黒い甲冑からは強い魔力を感じ取れた。
あの黒い甲冑は、かなり高価なマジックアイテムだと思われる。
「ここでボーナスの登場ですな~」
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