7-3【カルフォルニア・サン】
さてさて……。
問題の放火犯を捕まえるったって、どうしたらいいんだろう?
俺がやってきたゲームにも、読んできたラノベにも、放火犯を捕まえる話なんて出てきたことがないぞ。
そもそも推理小説なんて、敷居が高くて読んだことすらないもんな。
テレビドラマだと、それっぽい話もあったかも知れないが、興味がないから憶えてもいないぞ。
そもそも俺は名探偵コナン・ザ・グレートすらほとんど観たことがないのだ。
なんか家政婦さんが放火シーンを見ちゃった的にさ、犯人がすんなりひょっこりと現れてくれないかな~。
まあ、そんな簡単な話はないか。
そんな馬鹿馬鹿しい話があるならば警察は要らないもんな。
夜の見回りをしていたら、たまたま捕まってくれるような間抜けでお茶目な放火犯ならば、もう誰かに捕まってるだろうさ。
うーーーむ……。
これは困ったぞ。
なんもプランが思い浮かばん……。
行きなり話が行き止まりだわ。
俺はどうしたら良いのか分からないまま町を放浪した。
確かスカル姉さんは、この二ヶ月で七件の放火があったって言ってたよな。
まずは、その被害者から調べるか。
被害者に共通点があるやも知れないからな。
でぇ、どこで調べる?
分からん……。
それじゃあ、調べられなければ、訊けば良いか。
でぇ、誰に訊く?
警察か?
消防か?
いやいや、ここは異世界だ。
警察も消防もありゃしないな。
ならば番兵かな?
でも、番兵に親しい人は居ないな……。
あっ、そうだ。
確かに火事現場の消火は魔法使いギルドが魔法を使ってやってるって聞いたよな。
ならば手っ取り早くゾディアックさんに訊いてみるか。
それが早そうだわ。
そんなわけで俺は魔法使いギルドに急いだ。
そして、受付けにゾディアックさんは居るかと訪ねたら、少し待ってろと言われた。
そして、15分ぐらいするとゾディアックさんがやって来る。
「やあ、アスランくん。ゴモラタウンから帰ったんだね。もしかして、ドクトル・スカルのことで来たのかい?」
「話が早いな」
うん、流石は真面目くんだな。
頭の回転が早いぜ。
「とりあえず、てっとり早く言うとだな。放火犯を捕まえたいんだ」
「だいぶ飛んだ話だね……。僕はもっとドクトル・スカルの話かと思ったのにさ……」
「いやいや、これはスカル姉さんの話に繋がるんだ」
「どう繋がるんだい?」
「とりあえずスカル姉さんが放火犯をぶん殴れれば、立ち直れて、やる気も湧いてくると思うんだ」
「な、何故にそうなる……。まあ、なんとなく言いたいことは分かるけれど……」
「まあ、放火犯も捕まってないんだろ。俺が捕まえれば町も平和になるだろうさ。それで良くね?」
「キミは凄い楽観的だね……」
「とりあえず犯行現場と被害者の資料を見せてくれないか?」
「そんなこと行きなり言われてもね……」
「何か都合が悪いのかよ?」
「僕は火消しの管轄とは違うからね。キミが知りたいことは教えたくても教えることが出来ないよ。何も知らないから」
「なら、調べてくれ」
「あっさり言うね……」
「困るのか?」
「別に秘密にしているわけじゃあないから困らないけれど……。そうだ!」
そう言いながら手を叩いたゾディアックさんが、カウンターに居る受付に何かを言いに行った。
そして、少しすると戻って来る。
「アスランくん。今、火消しの責任者に連絡を取ったら、これから来てもらえることになったんだ。だから、その人に話を訊くといいよ」
「おお、それはありがたい!」
そこで俺は、ふと別の話を思い出す。
「あ、そうだ。ゴモラタウンで買ったお土産がゾディアックさんにあったんだわ」
「えっ、なんか悪いね~」
俺は懐からア◯ルプラグを出してゾディアックさんに差し出した。
しかし──。
「要らん!!」
ゾディアックさんが俺の差し出したア◯ルプラグを手で払う。
残酷にも飛んだア◯ルプラグが床に跳ねて転がった。
「あー、人の真心を粗末にするなよな~」
「あんな物に真心を詰めるな! そもそもあれが肛門に詰められる側だろうが!!」
「あれ~~、あれれ~~?」
「な、なんだよ……」
俺は不思議そうな顔を演出してゾディアックさんに近付けた。
「なんでゾディアックさんは、これが卑猥なアイテムだって分かったのかな~?」
「い、いや……、それは……」
ゾディアックさんが俺から逃げるように視線を反らした。
明らかに狼狽している。
「ゾディアックさんは、これがア◯ルプラグだって知ってたのかな~?」
「し、知らん……。そんなの知らないよ……」
「マジでぇ~、本当に~?」
「うぅぅ……」
「もしかして、使い方どころか、使ったことがあるのかな~。開発経験者なの?」
「そ、そんな物を入れられたことなんてないよ!!」
「そんな物を、い・れ・ら・れ・た・ことがないって?」
「いやいやいや、そうじゃなくて!!」
「そうか、入れたじゃあなくて、入れられたなのね」
「だから、違うってば!!」
「なるほどなるほど、開発する側じゃなくて、開発される側なのね」
「違う!!」
俺は背の高いゾディアックさんの肩に腕を回して引き寄せる。
そして耳元で囁いた。
「大丈夫ですよ。このことは、スカル姉さんには秘密にしておきますから~」
俺は心中でケケケケケケッて笑いながら言ってやった。
まだまだゾディアックさんの狼狽は続いていたが、そこに火消しの責任者が現れる。
その人物は、肩を組む俺たちの背後から声を掛けて来た。
「お待たせしました~。ゾディアックさん、お呼びでしょうか~」
やたらハスキーな声だった。
俺はゾディアックさんを解放すると振り返る。
やっと来たか、火消しの責任者さんよ。
どれどれ、どんなヤツなんだだぁぁあがあぅぁあがだがただだがあ!!!
なんだぁぁあああ!!!
この火消しはぁぁあああ!!!
金髪美女がタンクトップにホットパンツを履いてやがるぞぉぉおおお!!!
俺は床の上をのたうち回った。
し、しかもヒールの高いロングブーツじゃあねえかぁぁあああ!!!
すげー、踏まれたいィイ!!
あの高い踵でグリグリと踏まれたいゾォォオおお!!
貧乳だったけど、すげー可愛いじゃあねえがががぁぁあああがあが!!
ぐ、ぐはぁーー!!!
落ち着けーー!!
落ち着くんだ、俺!
相手はただの金髪ロン毛のタンクトップ&ホットパンツな美女じゃあねえか……。
そんなのどこにだっているさ……。
たかがストライクゾーンのド真ん中で、空振り三振のスリーアウトだったとしても、狼狽えるこっちゃねえよ……。
倒れている俺は、落ちていたア◯ルプラグを拾うと、ただただ強く強く握り締めた。
く、悔しいぞ……。
なんで俺は呪われてんだ……。
なんであの時、糞女神に反抗的だったんだ。
こんな出会いが来ると知っていれば、絶対に糞女神に逆らわなかったのに!!
過去の俺の馬鹿野郎!!!
「ゾ、ゾディアックさん、この人は床に転がって、どうしたの?」
「大丈夫だよ。ただの病気持ちなだけだから。彼の病気は伝染病じゃあないから、安心してくれ」
「そ、そうですか……」
よ、よし……、落ち着いたぞ、立ち上がろう。
立ち上がった俺は、今までの光景がなかったかのように振る舞う。
「は、初めまして、アスランと申します」
金髪タンクトップ&ホットパンツ美女は、カリフォルニアの太陽のように微笑みながら言った。
「僕の名前はエスキモー。今年になって火消しの責任者を任せられた独身21歳の男性だよ。知り合いの女の子には、そう紹介してくださいね」
なに、この発情期みたいな自己紹介は?
それよりも……。
「えっ、独身男性?」
「うん、恋人募集中だよ」
「男なの?」
「恋人募集中の男だけど?」
くそっ!!
俺は手に有ったア◯ルプラグを床に叩きつけた。
こんちくしょうが!!
勝手に間違えたうえに、危うく死にかけて損したわ!!
この野郎は美少女じゃなくて美男子じゃあねえか!!
俺の脳天に怒りの湯気が沸き上がる。
「なんで男なのに、そんなハイヒールなロングブーツを穿いてやがるんだよ!」
「それは、このブーツの踵で踏まれたいからに決まってるじゃないか!」
俺はキョトンとしながら言葉を返す。
「ああ、なるほどね……」
その回答なら、納得できるな……。
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