5-28【全裸で城内引廻しの刑】

俺は現在のところ全裸で荒縄に縛られながら城内を引き摺り回されていた。


槍を持った沢山の警備兵に囲まれてだ。


俺は近くを歩く警備兵長に問う。


「どこに連れて行くんだ?」


俺が訊くと警備兵長がギロリと睨みながら述べた。


「黙って付いてこい」


「なんで俺は捕まったん?」


「黙ってろ!」


「へいへい」


どうやら俺との会話は禁止されているようだな。


なんの罪で捕まったかぐらいは、聞かせてもらいたいものである。


冤罪だったら堪らないものね。


「ああ、ちょっぴり恥ずかしいな」


俺は赤い絨毯がしかれた廊下を行列をなして進んだ。


すれ違うメイドさんや執事たちの視線が痛いですわ。


まあ、早朝から全裸で縛られながら連行されていれば、仕方ないよね。


それでも全裸に慣れているから俺のハートはブレイクしないけれどさ。


マジで慣れって怖いわ……。


あっ、分かったぞ。


このコースは謁見室のほうに向かってるのかな。


まあ、どこに向かうかは直ぐに分かるだろう。


俺が何の罪状なのかもさ。


そして俺は予想通り謁見室に通された。


玉座にはベルセルクの爺さんが腰掛けて居る。


ベルセルクの爺さんは全裸の俺を見て呆れていた。


まったくこいつはって言ってそうな表情である。


その横に中年貴族の夫婦とポラリスが立って居た。


ポラリスはしょぼくれて俯いていたが、隣の中年男性は目が血走っている。


なんだかオッサンは怒っているようだ。


もう一人、二十歳ぐらいの冴えない貴族風男子も立っていた。


なんだかヤル気無く立っている。


玉座の横に立っているってことは、この人たちもポラリス同様にベルセルク爺さんの身内なのだろう。


ベルセルク爺さんの息子夫婦なのかな?


だとすると、野郎のほうはポラリスの兄貴なのか。


たしかポラリスは三女だってどこかで聞いたような気がするしな。


そんなことを考えながら俺が謁見室の中央まで来ると、警備兵長に言われる。


「そこに跪け!」


「はいはい、分かりましたよ」


俺は尻から座り込むと胡座をかいた。


それを見て警備兵長が怒鳴り付けて来る。


「違う、跪けと言ってるのだ!」


「まあ、良い。お前は黙れ……」


全裸の俺を見て呆れたのかベルセルクの爺さんが警備兵長を止めた。


それから謁見室の者たちに述べる。


「人払いを──」


ベルセルクの爺さんが、そう述べると大臣や兵士たちが謁見室をゾロゾロと出て行った。


謁見室に残ったのは玉座の周りに立っている者たちだけである。


俺はレッドカーペットの上でキョトンとしていた。


まだ状況が飲み込めていない。


「なあ~、ベルセルクの爺さん。なんで俺は早朝から捕まってるんだ?」


「それよりもワシが訊きたい。何故に御主は全裸なんだ?」


「いや、寝起きだったからだ」


「寝起きは全裸なのか、まったく困ったヤツだわい」


「困ってるのは俺のほうだよ。なんで朝っぱらから拘束されて、全裸のまま城内を引き回しにされにゃあならんのだ?」


深い溜め息の後にベルセルクの爺さんが述べる。


「場合に寄っては、そのまま牢獄行きだぞ」


「だから、なんで?」


俺が問うと中年貴族の男性が吠えた。


「貴様が我が娘を誑かしたからだ!!」


「誰だい、あんた?」


俺が冷静に問うと中年貴族の男性は、額に青筋を増やして怒鳴り付けて来る。


「次期君主のベオウルフだ!」


金髪のオールバックに口髭を蓄えた長身の男性だった。


身長の割には身体が細い。


戦士タイプじゃあないな。


政治家タイプのオッサンだ。


「次期君主ってことは、ベルセルク爺さんの息子か?」


ベルセルクの爺さんは黙ったまま頷いた。


「それにしてもだ。なんで息子の次期君主様が怒っているのかが俺には分からんな?」


「なんだと、無礼者が!!」


「じゃあ、話を進めるぞ、息子よ。だから黙ってなさい」


「は、はい……」


父親に窘められるように言われたベオウルフは怒りを噛み締めながら黙り込む。


奥さんと思われる女性がベオウルフの肩を擦っていた。


美人な女性だが、気が強そうな奥さんだな。


ポラリスと感じが似ているから母親なんだろう、きっとさ。


そして、ベルセルクの爺さんが俺に問う。


「なあ、アスラン。お前は何しに城へ入った?」


「へっ?」


「だから、何しに城に来たのだ?」


「あんたに仕事を頼まれてだが?」


「だよな」


「そうだよ」


「仕事は進んでいるのか?」


「ああ、ぼちぼち進んでるぞ。このまま進めば解決も近いが?」


「ほほう、どのぐらい進んでいる。中間報告程度に話なさい」


ベルセルクの爺さんは、俺の言葉を信用している様子ではないな。


視線が疑っているものさ。


だから俺は正直に答えた。


「まずは、ドラゴンの幽霊を見付けたぞ」


「まことか!!」


ベルセルク爺さんの腰が玉座から浮いた。


まさかこんなに短期で、俺がテイアーを見つけ出すとは思ってもいなかったのだろう。


俺は隠さずに報告する。


「ドラゴン幽霊の名前はテイアーだ。ただしここに連れてこれるのは、もう少し先かな」


「な、何故じゃ!?」


「彼女をここに連れて来るために、閉鎖ダンジョン内に居る英雄クラスのアンデッドをあと二体ほど倒さないとならんのだ」


「えっ、英雄クラスのアンデッドだと?」


「一体は黄金剣のセルバンテスって名前だ」


「「「「「えっ!!、」」」」」


「んん?」


謁見室内の五人が同時に驚いた。


どうやらセルバンテスって人物は有名人のようだな。


「まさか、閉鎖ダンジョン内に、あのセルバンテスが亡者として蠢いていたのか……」


ベルセルクの爺さんが驚愕しながら顎髭を撫でていた。


「まあ、そいつらを倒さないと、ベルセルクの爺さんから受けた仕事は終わらないってわけだよ」


「そ、そうか………」


「ちょっと待ってください、父上!」


ベオウルフが割って入る。


「なんだ、息子よ?」


「父上は何故に冒険者なんぞ雇って閉鎖ダンジョンを漁らせているのですか。何故にこやつがセルバンテスを倒さなければならないのですか!?」


ベルセルクの爺さんは息子から視線を逸らしながら述べる。


「訊くな、私情だ……」


「じゃあ訊きませんとも。しかし、今回この変態冒険者を捕縛した話に戻りますぞ!?」


あれ、なに?


俺が閉鎖ダンジョンに挑んでいるのと、今回の逮捕理由は違うのか?


別件のようだな。


ベルセルクの爺さんは、渋々と述べた。


「分かった。あとは息子の……。いいや、父親のお前に任せる……」


「有り難うございます!」


えっ、なに?


何が始まるの?


ベオウルフの親父が俺に詰め寄って来る。


レッドカーペットの上で、全裸のまま胡座をかく俺に、ベオウルフが怒鳴り声を浴びせた。


「何故にお前は!!」


何故に俺は?


「何故に冒険者風情のお前が!!」


冒険者風情の俺が?


「私の娘であるポラリスを!!」


娘さんであるポラリスを?


「手込めにした!?」


「ぶっ!?」


俺は思わす吹いてしまう。


手込めって、手込めですよね!?


卑猥な言い方をしたら、夜這いでエロイことをしちゃった見たいなことですよね!?


あんなことや、こんなことをしちゃった見たいな!?


誤解だ!!


俺が、ポラリス嬢と!?


そんなこと、俺はぁあがぁがががあがががあが!!!!


イーターイー!!


心臓がァぁアがあガガあががぁがあ!!!


思わずポラリスをオカズにエロイ想像を巡らせてしまったわいぃいいい!!!!!


また、大脱線だわぁぁああアあアあがぁああ!!!



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