5-24【スケルトンウォリアーの群れ】

俺はドラコン幽霊のテイアーから貰った下手くそな地図を元にひたすら閉鎖ダンジョン内の迷宮を進んだ。


何千年間も生きているか知らんけど、長生きしてても絵って才能なのね。


すげー、下手糞なマップだわ。


ダンジョンのマップなのに自然の洞窟を描いているようなグニャグニャなラインである。


あのテイアーたるドラゴンの幽霊はメイジとしては超一流のようだが絵描きとしては幼児の画伯並みだ。


それが面白くって笑ってしまう。


まあ、それはさておいてだ。


まずは最短距離でテイアーの身体が眠る奥地を目指す。


テイアーの胴体を見つけ出さなければ話が進まないからな。


そして、その道中に必ず英雄クラスのアンデッドが居るはずだ。


何処かに巣くっているはずの三体の英雄アンデッド──。


出合ったら殺す。


サーチ&デストロイってやつよ!


うん、俺ってばカッコイイぜ!!


とか何とか言っている間にスケルトンの群れと遭遇しちゃったよ。


かなり数が多いな。


俺はそそくさと岩陰に隠れた。


まだ相手は俺に気付いていない。


気配消しからの潜伏スキルの成功である。


「さてさて~」


俺は周囲を再確認して作戦を立てた。


広い通路だ。


幅15メートルほどある。


長さは不明な一本道。


天井も高い。


明かりはなしだ。


俺は警戒のためにランタンで先を進んでいたからバレていない。


ランタンのシャッターを絞って明かりを小さくしていたからだ。


ランタンを足元に置いた俺が崩れた岩陰から向こうを覗けば、スケルトンたちがウヨウヨと動いている。


その数は五十体は居そうだな?


「すげ~数だな。大群だよ」


ネーム判定すると【スケルトンウォリアー】であった。


まあ、全員が武器や防具を装備しているもんね。


武装は完璧だな。


確かにスケルトンウォリアーですわ~。


それに何体かはマジックアイテムを装備しているぞ。


こりゃあ、倒さん理由がないわな。


むしろ倒してマジックアイテムを強奪したい。


でもだ──。


もう、俺のレベルならばスケルトンウォリアーぐらいなら無双出来るころだろうか?


敵の数は50体相当──。


出来そうだよね?


いやいや危ないな。


だって超大群だもん。


この前は、それで死にかけたんだ。


俺の難敵条件は、いつも大群と決まっている。


だから余裕はこいてられない。


ここはせめて初撃の不意打ちで半分ぐらいは減らして置きたい。


「ならば、これだな」


俺は異次元宝物庫から火炎瓶を五本取り出す。


じゃじゃ~~ん!


はい、作りましたよ!


中身は高い度数のアルコールと燃えやすい油のハイブリッドですよ!


火が付きやすく、燃えたら炎が消えにくい一品ですわん。


俺が夏休みの自由研究で作ったんだが学校の先生にマジで怒られた自信作ですよ。


更に燃料のレシピはワイズマンに紹介してもらったゴモラタウンの怪しい冒険者さんに教えてもらって改良を施したんだぜ。


ウォッカをベースにカクテルされた燃料と、ゴモラタウンの魔法使いギルドで売っていた発火原石を蓋に使った俺オリジナルな火炎瓶ですがな。


発火原石は衝撃に弱く、瓶が割れればその衝撃で砕けて火を放つ。


爆破原石ほどの火力はないが、燃料カクテルに引火すれば爆炎を上げる代物ですわん。


まだ、一回しか実験してないから引火率100%の代物じゃあないけれど、まあ上手く行くだろうさ。


本番で実験してなんぼである。


俺は両手に火炎瓶を持つと立ち上がった。


スケルトンたちまでの距離は約15メートルほどだ。


「行くぜ、とぉーーりや!!」


俺は思いっきり火炎瓶を遠投した。


飛んだ火炎瓶がスケルトンの一体にモロ当たり、床に落ちてからパリーンっと割れる。


だが、発火しない……。


「あれーーー??」


そして、スケルトンたちが一斉に振り返り俺を凝視した。


「あー、不味いな……」


すると憤怒の形相でスケルトンたちが走り出した。


俺に向かってだ。


「不味い不味い!!」


俺は慌てて片手にあった火炎瓶をスケルトンたちの足元に投げつけた。


今度はちゃんと割れて引火する。


パリーンと割れた火炎瓶の燃料から業火が上がって数体のスケルトンを炎で巻き込む。


「炎の火力、強っ!!」


燃え盛る炎がスケルトンを爪先から脳天までの全身を丸焼きにしていた。


「よし、行けるじゃんか!!」


俺は慌てて残り三本の火炎瓶を次々とスケルトンに向かって投げた。


床に当たって割れた火炎瓶からは高々と炎が舞い上がる。


炎は業火と変わって行った。


そして、ダンジョンの通路が業火に包まれスケルトンウォリアーたちを焼き払った。


「うんうん、なんとか十体ぐらいのスケルトンは減らせたかな~」


だが、まだまだウジャウジャと居やがる。


予想より成果は少ないけれど、もういいや。


「ここからは白兵戦の無双モードだぜ!!」


俺は異次元宝物庫からロングソード+2とウォーハンマー+2を取り出して両手に構える。


「まずはマジックトーチ、からの~」


ウォーハンマーの先端に魔法の明かりが灯される。


これはウォーハンマーの能力だ。


更に──、ウォーハンマー二つ目の能力を使う。


「ウェポンスマッシュ!!」


俺は先頭で走って来たスケルトンの頭部を、ウォーハンマーの攻撃スキルの一撃で打ち砕いた。


髑髏がパカリと割れてから砕け散る。


それから直ぐに二匹目のスケルトンにウォーハンマーを投げつけて、見事に頭蓋骨を破壊してやった。


ウォーハンマーはバランスが悪いから二刀流には向きませんからね。


まあ、これで良しですよ。


「よーし、あとは対アンデッド用のロングソード+2でぶった斬るのみだ!!」


俺はロングソードを片手に暴れまわる。


少しずつ引きながら戦えば、知能の低いスケルトンなら大群でもさばけそうだった。


回り込まれなければ何とでもなる。


「背後は譲らない。それで行けるぜ!」


俺は敵の攻撃を、左腕に装着したバックラーで弾いては右手のロングソードで撃破して行く。


また一体、また一体とスケルトンは数を減らして行った。


そんな中で、スケルトンウォリアーの隙間から後方で弓矢を引くアーチャーなスケルトンが目に入る。


「やーーべ!! 飛び道具だよ!!」


ここでスケルトンアーチャーの登場ですか!?


俺は対角線上にスケルトンウォリアーを置いて戦う。


敵の体を盾に使い、何とかスケルトンアーチャーの狙撃は免れていたが、時間の問題だ。


盾となるスケルトンウォリアーの数はドンドンと減って行く。


そりゃあそうですよね。


だって俺がスケルトンを倒して減らしてるんだもの。


よし、とりあえずあと七体だ。


ここは一気にスケルトンアーチャーを先に始末するか。


俺はスケルトンウォリアーの隙間を巧みなフットワークで抜いてスケルトンアーチャーに向かって走り出した。


一発目の狙撃が発射される。


だが、矢は俺の眼前で、不自然な方向に曲がって狙いを外れた。


「よしよし、予想通りだぜ!」


ヒッポグリフの巣で拾ったシルバーネックレスの効果が炸裂しましたわ!


ちなみにこれね。


【シルバーネックレス+2】

矢の直撃を二回だけ避ける。


シルバーネックレスの効果で、二発の矢を避けれるのだ。


だが、二発目の狙撃を待つ必要はないな。


俺は矢を引き直そうとしているスケルトンアーチャーの目の前まで接近していた。


「あ~ら、よっと!」


俺はスケルトンアーチャーの顔面をロングソードで突き壊す。


更に廻し蹴りで背骨を横から折り砕いてやった。


「よし、あと六体だ!!」


振り返りざまに、逆水平斬りで一体。


更に袈裟斬りで、もう一体。


二体連続撃破。


残るは四体だ!!


「そーーら!!」


兜割りで、一体撃破!!


「そーーれ!!」


水平斬りで、首を跳ねる!!


あとこれで二体だ!!


っ!!!!????


「な、なんだ……」


俺は突然のことに唖然としていた。


残り二体のスケルトンウォリアーの背後に、巨大な影が立っていたのだ。


ミイラだよね……。


包帯を全身にグルグル巻きだもんな。


しかも身長がかなり高い巨漢だ。


「デカっ! ジャイアントマミーですか……?」


それは2メートル以上の巨人だった。


『フンガァーー!!』


胸を多く開くように左右の裏拳を放ったジャイアントマミーが、残り二体のスケルトンウォリアーをなぎ払う。


二体のスケルトンは左右の壁に激突して木っ端微塵に砕け散った。


真打ち登場!


「な、なんちゅ~パワーでしょうか……。超ヘビー級のアンデッドですわね~……」



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