第25話 教会のシスター

 拾い上げると辺りを見回す。

 どうやら大通りの横の細道のほうから転がってきたものだった。


「ごめんなさい! その紙を渡してもらっていい?」


 声をかけてきた人物は全身黒一色のシスターだった。

 襟元から胸あたりまでの白色のコンストラクトが眩しく、金色の十字架のネックレスを付けていた。

 君はその十字架を見ていると、どこかで何か……。


「じっと胸元を見てどうしたの?」


 気にはなったが、紙を渡すためにシスターのいる場所まで歩いていると、後ろから足音が聞こえてくる。振り返ると、足音の主はシェルだった。


「どうしてそこで止まっているのですか、アッシュ」


 君は拾った紙をシスターに渡そうとしていたことをシェルに伝える。


「あれ? シェルじゃない。どうしたの?」

「え? どうしてマリアがここに?」


 シスターの名はマリアで、どうやらシェルの知り合いのようだ。

 シェルの反応を見る限りは、親しそうな間柄に見える。


「そうね……どこからお話したらいいものか」

「それなら家に戻ってからお話しましょう」


 君は紙をマリアに渡すと、台車を引いて家まで一旦戻ることになった。



 ◇◇◇◇



 客間に入るとテーブルを挟んでマリアと向かい合う形で君は座わる。

 部屋にはマリアと2人きりの状態だ。

 シェルからは購入した食材を早く整理したいからと、先に話していて欲しいと言われている。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はマリア。教会でシスターをしているの。今日も光の神に祈りをささげ、迷える子羊たちを光の先へ導いていましたの」


 マリアの話が君にはよく分からないので、名だけを伝えた。

 

「そう。あなたはアッシュという名なのね。シェルとはどういうご関係?」


 君は記憶が無いこと、ブラウズに助けられて世話になっている現状をマリアに伝える。


「そういうことなの。ようやくシェルにいい人ができたのかと思ったのに」


 買い物中にも何度かそんなやり取りがあったせいで、君は少々げんなりしていた。

 だが、皆はそういう話が好きであるのは理解していた。

 君はマリアが落とした紙について聞いた。


「あの紙は、神様からのご神託をメモしたものなの。だからとても大切な内容なのよ」


 それだけ言うと白い紙を大事そうに抱きしめている。


「ところで、アッシュは神を信じる?」


 優し気な雰囲気のマリアの表情は、真剣なものに変わっていた。


 その問いかけに君は……。

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