Episode.25 Incantation

 冴子が送ってくれた『蛸殴たこなぐり源五郎みなごろう記』の『降霊之段』の一部……『降霊のすべ』の現代語訳によると……


 蛸殴たこなぐりの諏打鼓すだここと『タコ』(←また略し過ぎ!)を呼び出す好機は、『新月』の夜8時とのこと。


 ……『8』……こんなところもタコの足の数をかけてるのか?


 何度も言うけど、あいつはタコを殴ったんじゃ無く、鬼だか何だかをにしただけだかんね! 根本的に『タコ』そのものは関係無いんだからね💢


 ……コホンッ……さて……


 今日は新月。 しかももうすぐ夜の8時! ヤツとの対決の時間が近付いていた。


 さてさて、冴子がこの前送ってくれた『コウレイのスベ』は……


『部屋のほぼ中央で……口を尖らせ、手足をタコのようにくねらせながら……』


 え〜〜!? 何それ! はっず!


 ……で……でも……やらないとダメよね(泣)


 それで、次は……?


『以下の呪文を唱えよ「ちゅう・ちゅう・たこ」』


 イヤだぁ〜〜(号泣)


 い、いや……いたしかたない……長い人生のホンの一瞬だ……


 く……口を尖らせ、手足をタコのようにくねらせながら……


「ちゅう・ちゅう・たこ……」


 あ〜〜(恥)


 ……不幸中の幸いは、冴子が幽霊と干ぴょう巻きが苦手だった事だ。 (干ぴょう巻きはどうでも良いけど)こんな姿を見られたら一生会えなくなるところだった……


 ……ん? でも……このやり方を教えてくれたのは冴子……


 ……今頃、私がこんな変なまい? を舞っているのを想像して笑ってるかなあ……


 いやっ、冴子はそんな人じゃ無いし、私はこの『コウレイのスベ』に集中しなくては!


 口を尖らせ、手足をくねらせながら「ちゅう・ちゅう・たこ」(泣)


 口を尖らせ、手足をくねらせながら「ちゅう・ちゅう・たこ」(泣)


 口を尖らせ、手足をくねらせながら「ちゅう・ちゅう・たこ」(泣)


 ……!?



 ん? これって『ちゅう・ちゅう・たこ』じゃなかったっけ?


 ……そう思ったと同時に


「『かいな』ぢゃ〜〜〜!」……と叫びにも似た大声が部屋中に響いた!


 うわっ〜〜! な! な! な! 何ぃ〜〜?


 ……!


 で! 出たあ〜!


 そこには『タコ』……じゃ無かった、ご先祖さま『蛸殴たこなぐりの諏打鼓すだこ』が、文字通り真っ赤な顔で立っていた!

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