Episode.19 Dinner

 ふと思い出したんだけど、前回の、ご先祖さま……『蛸殴たこなぐりの諏打鼓すだこ』のセリフの中で、非常に気になる部分があった。


『由緒正しき『蛸殴たこなぐり』の家名が絶えてしまう』


 『家名が絶える』……すなわち、一人っ子の私が死んじゃうか、お嫁に行ってしまうと、ユイショタダシキ『蛸殴家』は無くなっちゃうって事よね?


 逆に言えば、私が不老不死になるか、お婿さんを貰えば『蛸殴家』はず〜〜……っと残るけど、私は『蛸殴たこなぐり使手恵してえ……タコ殴りしてぇ』って名前のままって事じゃん!


 いや! いや! いやいやいや! 断じていや〜〜っっ!


 ……夕食時……


 私は両親に、もし好きな人が出来て、結婚する事になったら、家を出ても良いか聞いてみた。


 母は「私はパパと結婚して、由緒正しい『郷愁家』を継がなかったから……ノーコメント!」……と言って、たくあん漬けをポリポリ食べた。


 ……母も一人っ子だから、母方の家名は爺婆じいじばあばの代で絶えちゃうんだな……。


 父は、少し考えて……


「俺は男だから『蛸殴』って名字は強そうでカッコ良い……って思っていたけど、女子にはつらいのかな。 ……そもそも、ママをお義父さんお義母さんから貰った立場で『自分の家名は残す』……なんて、身勝手な事は言えんよ。 ……それに……」


 ……父は食事の手を止めて……


「俺は……お前の幸せを何より望んでいる。 お前が笑顔でいられるなら、家名なんかどうでも良いよ!」


 ……と言ってくれた。


 ……! パパ〜(感涙)


 父は照れくさそうに、ご飯を搔き込んだ。 それを見ていた母も、素敵な笑顔を浮かべていた。


 ……私は胸が熱かった……!


 ママがパパに惹かれたのは、この優しさだったのですね♡


 この日の夕食は、いつもより、さらに美味しく感じた。


 ……翌朝……


 少し遅れて朝食の席に着くなり父が……


「ごめ〜〜ん! 昨日の話は無しね! やっぱりお嫁に行っちゃダメ〜!」……と言って、両手のシワとシワを合わせて、私に謝った。


 ……


 …………


 …………………


 えええええぇぇぇ〜〜〜〜〜!?

 えええええぇぇぇ〜〜〜〜〜!?


 私と母が、同時に声を上げた!


「な!? なんで!? 一体全体どーゆー心境の変化〜〜!?」


「実は昨夜ゆうべ、真っ赤なタコのお面を被った、御先祖様と名のるお方が夢枕に立って『家名を絶やす事、相成らぬ! 断固拒否せい!』……って言われちゃったんだ(汗)」


 ……💢


 ……あの酢だこ野郎💢💢💢


 タ コ 殴 り に す っ ぞ マ ジ で 💢💢💢💢💢

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